ネバーランド(FINDING NEVERLAND)
マーク・フォースター監督/2004年/イギリス・アメリカ/100分
●名作「ピーター・パン」誕生の実話に基づいて描いたヒューマンドラマ
Story(ストーリー)
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1903年のロンドン。新作が不評の劇作家ジェームズはある日、作品の構想を練るために公園にでかける。そこで、父を失った4人のデイヴィス兄弟とその母親シルヴィアに出会う。
ジェームズは彼らとの交流で作品のイマジネーションを膨らませて「ピーター・パン」の脚本を書きはじめる。
Main Character(主な登場人物)
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△サー・ジェームズ・マシュー・バリ(Sir James Matthew Barrie)※1
スコットランド人の劇作家
△シルヴィア・ルウェリン・デイヴィズ
未亡人。4人の息子を育てている
△メアリー・アンセル・バリ
ジェームズの妻
△ピーター・ルウェリン・デイヴィズ
シルヴィアの息子。三男
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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名作「ピーター・パン」(※2)誕生の実話に基づいて描いたヒューマンドラマ
新作の公演初日、劇場のカーテンの隙間から客席を覗いている作家ジェームズは観客の反応がとても気になっています。予想どうり、お客さんの反応はおもわしくありません。退屈そうにあくびをする人、にがい顔で隣人に耳打ちする人、寝息をたてている人……。
予想どうりというのは、なぜなら新作を書いたジェームズ自身が今回の作品は駄作だと一番よくわかっているからなのです。
そんなある日、公園で少年たちとその母親に出会います。母親のシルヴィアは未亡人で、病気を患いながらも4人の子供たちを一生懸命育てています。そして三男のピーターは父を亡くしてつらい思いをしています。
そんなデイヴィズ一家との交流を深めていくうちにジェームズは「ピーター・パン」の着想を得るのです。
そもそもジェームズってちょっと変わり者なんです。アップル社の宣伝コピーに「Think Different」ってあったけど、人と違う思いつきやアイデアが浮かぶ人は天才とも言われますから、ジェームズも作家としての才能(ギフト)を持っていることは確かなようですね。
でも昼間っから子供たちとインディアンごっこや海賊ごっこをして遊んでいるので、妻のメアリーはちっとも楽しくありません。それにジェームズはいつもデイヴィス一家と過ごしているので、街ではよからぬ噂まで広まっています。
またジェームズはシルヴィアの母親にも快く思われていません。未亡人となった娘とその子供たち(孫たち)が、既婚者の男性と親しくしていると噂になれば、娘の再婚話もこなくなってしまうからです。
ジェームズと少年たちが仲良くなることで、妻のメアリーは孤独感を募らせ、シルヴィアの母は娘の将来を心配するようになってしまったのです。
またジェームズは「ピーター・パン」の脚本を書いて舞台稽古をはじめますが、子供じみた内容と役柄に俳優たちは戸惑い、劇場主は作品の評判を一層気にするようになります。
さらに、シルヴィアが病気を患っていることもわかります。デイヴィス一家の現実はますます厳しくなっていきます。
しかし、そんな現実だからこそ想像力を豊かに持って生き延びていくんだ、というメッセージが作品に込められているのです。
作品では三男のピーターとの交流がメインとなっていますが、長男が母親や兄弟を気遣いつつ、ジェームズと交流することで立派な男性へと成長する様子も描かれています。
「ネバーランド」の良いところのひとつは、ハッピーエンドではないことです。名作「ピーター・パン」は完成しましたが、シルヴィアは病に倒れて亡くなります。また「ピーター・パン」は作品として成功しましたが、ジェームズは妻のメアリーと別れてしまいます。
それぞれの登場人物が辛く厳しい現実に直面する様子がしっかりと描かれているからこそ「ネバーランド」が光り輝いて見えるようになっているのです。
「ネバーランド」――そこは夢がかなう場所、信じれば必ず行ける。
だれでも心のなかに自分だけのネバーランドをもっています。でもそこへの行き方を忘れてしまった人たちがいます。ジェームズはそこへ「いつか連れて行ってあげる」といいます。
ネバーランドへ行く方法――想像力を豊かに持って信じること――を教えてくれる。ネバーランドへのガイドをしてくれる。それが劇作家サー・ジェームズ・マシュー・バリなのです。
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※1 サー・ジェームズ・マシュー・バリ(Sir James Matthew Barrie)
劇作家。1860年スコットランド生まれ。「スラムズの窓」を出版して脚光を浴びる。「ピーター・パン」「メアリー・ロゥズ」などの有名作多数。1913年、准男爵の称号を授かる。1937年、ロンドンで死去。
※2 ピーター・パン Sir James Matthew Barrie作
子供たちがピーター・パンと妖精のティンカー・ベルに導かれてネバーランドへいく物語。
![]() | ピーター・パン J.M. バリ J.M. Barrie 厨川 圭子 岩波書店 2000-11 by G-Tools |
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![]() | 映画「ネバーランド」オリジナル・サウンドトラック サントラ ユニバーサルクラシック 2004-12-29 by G-Tools |
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∇参考・用語引用図書
「ストーリーアナリスト」
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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Comments
TBありがとうございます。
心温まるストーリーでした。
ジョニー・デップも今までとは違う演技を見せて、新しい境地を切り開いたと思いました。
Posted by: dosanko | 02/01/2005 08:20
TBどうもでした。
>それぞれの登場人物が辛く厳しい現実に直面する
>様子がしっかりと描かれているからこそ「ネバー
>ランド」が光り輝いて見えるようになっているの
>です。
同感です。夢見ることの素晴らしさをメインテーマとしながら、一方でどうにもできない現実の苦さもきちんと描いている点がこの作品のすばらしさだと思います。
Posted by: coolkoro | 02/01/2005 21:14
TBありがとうございました。
豊かに生きて行く方法・・・そうなんですね。
私も少しバリに教えてもらえた気分です。
Posted by: あれこれ。 | 02/02/2005 08:33
>dosankoさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
ジョニーデップはこういう役さえもしっかりできるなんて、
ますますお気に入りの俳優さんになりました☆
Posted by: わかスト@管理人 | 02/02/2005 23:01
>coolkoroさん
コメントありがとうございます☆
現実と想像(夢)の両方をちゃんと描いているから
多くの人を感動させることができるんですネ。
ケイト・ウィンスレットもよかったですね。
Posted by: わかスト@管理人 | 02/02/2005 23:10
>あれこれ。さん
こんにちは。コメントありがとうございます。
想像力を豊かにっていうと、関根勉さんが思い浮か
びます。関根さんの絶妙な「例え」って豊かな想像
力の賜物だと思います。
バリ=ラビィ(関根さんの元芸名。ラビット関根)
って繋がりもどうなんでしょう(^_^)
Posted by: わかスト@管理人 | 02/02/2005 23:29