言葉足らず・主観と客観
〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉
〔1〕例文(全文)
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西暦205X年。地球の化石エネルギーは底をつき、人類は地球以外の星で宇宙エ
ネルギーを採掘していた。
ほかの星のように微量な採掘量ではないクレタ星では、コンピュータによる
完全オートメーション方式によって採掘ロボットによって採掘が行われていた。
ある日クレタ星の宇宙エネルギー採掘施設において、メインコンピュータが
突如反乱を起こし、施設と連絡が取れなくなったとの情報を受け銀河連邦軍特
殊部隊隊員ジョン・ロック大尉は小隊を引き連れて調査のためクレタ星へ向か
った。
クレタ星に到着したジョン・ロック小隊を静まり返った採掘施設が暗い影で
包み込んだ。隊員達の足音だけが響きわたる暗い施設内で生存者を捜索してい
た小隊は、コントロールルームでエーンエーンと鳴く幼い小さな少女を発見保
護する。少女が言うには、「捕らえた職員が地下採掘場に監禁されている」と
語った。
小隊を2班に分けたジョン・ロック大尉は、少女の案内で地下採掘場へ向か
った。途中でレプリカント警備兵の襲撃にあい、少女は惜しくも亡くなってし
まう。そのとき、少女の傷口の奥からは、機械の基盤や配線が火花を散らして
いるのが見えた。また、ジョンロック大尉は肩を負傷して横たわるレプリカン
ト警備兵の傷口からは赤い血が流れ出ていた。
――彼等は人間の生き残りだったのだ!
この星に勤務する職員たちは地球から家族を連れてきていない。その少女が
レプリカントなんだよ。反乱を起こしたコンピュータは地球へ侵攻しようとし
ているんだ。SOSを発信した狙いは宇宙船の地球への宇宙航行データだ。
そのとき宇宙船に残った仲間から攻撃されているとの連絡が入った。一目散
にジョン・ロック大尉たちは宇宙船へ引きかえすことにした
○今回とりあげる文↓
「小隊を2班に分けたジョン・ロック大尉は、少女の案内で地下採掘場
へ向かった。途中でレプリカント警備兵の襲撃にあい、少女は惜しくも
亡くなってしまう」
〔2〕問題点
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⇒言葉足らず
⇒主観と客観
⇒レプリカント警備兵の数
〔3〕解説
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小隊を2班に分けたジョン・ロック大尉はそれぞれの班をどうしたのだろ
うか? ジョン・ロック大尉は2班をその場に残して、少女と二人で地下
採掘場へ向かったのか? それとも1班をその場に残し、もう1班を率
いて地下採掘場へ向かったのか?
★解決策
⇒何をどうして(小隊を2班に分けて)、どうしたのか。どうなったのか。
をきちんと書く(読者に疑問をもたれないようにする)。
注:疑問を持つようにと意図して書く場合は除く
「惜しくも」は主観(意見の文)。惜しい気持を表したいときでも、
「惜しくも」と書いてしまうと、おしつけがましくなる可能性がある。
★解決策 ⇒事実のみを伝える。
例文ではレプリカント警備兵は1体と読み取れる。
訓練を受けた兵士達からなる小隊(のうちの1班)がたった1人(体)の敵
と戦って、少女ひとりを守れないとは考えにくい。
★解決策 ⇒数をはっきりさせる(せめて単数か複数かぐらいは)
〔4〕書き直し(リライト)例
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「小隊を2班に分けたジョン・ロック大尉は、1班を乗ってきた宇宙船の警備
に残し、もう1班を率いて少女の案内で地下採掘場へ向かった。途中、レプリ
カント警備兵たちの襲撃にあい、少女は撃たれてしまう」
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