際立つということ
〈カテゴリ:マーケティング〉
際立つとはどういう意味でしょうか。
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きわだ・つ きは― 3 【際立つ】
(動タ五[四])
他との違いや区別が明瞭である。目立つ。
主によいことの場合にいう。
(三省堂提供「大辞林 第二版」より )
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あるカテゴリーの中で、他との違いや区別が明確になれば、それは人々の記憶に残り、やがては「ブランド」となる可能性が大いにあります。
ハリウッド映画を例にみてみましょう。
ハリウッド映画というカテゴリーの特徴は「家族」が重要な要素になっているということです。
家族とは言い換えれば、精神的拠所である「HOME」(単に建物としての家を意味するのではなく、自分と自分が属する家族や親戚、友人、仲間が集まる、精神的な安らぎを得られるところ)です。
欧米諸国ではこうした、精神的な安定や心の安らぎの拠り所となる役割を担ってきたのは主に教会(キリスト教文化)です。
しかし、ハリウッド映画でありながら「家族とキリスト教文化」をメインにしていない作品があります。
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「ラストサムライ (THE LAST SAMURAI)」
エドワード・ズウィック監督/2003年/アメリカ/154分
●異文化に触れ、人との出会いを通して立ち直っていく男の物語
作品レビューはこちら
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「ラストサムライ」は欧米的なバックグラウンド――家族とキリスト教文化――とはかけ離れたところを描いています。
典型的なハリウッド映画との違いはなんでしょう。4つ挙げてみましょう。
〈1〉主人公ネイサンの家族につてのバックグランドが描かれていない。
〈2〉欧米的な精神的拠り所の主なものである教会(キリスト教文化)が基になっていない。
〈3〉日本の武士道精神がテーマになっている。
〈4〉アメリカ合衆国以外の人々についても、自らの価値観を持って生きよ、というメッセージを持っている。
典型的なハリウッド映画は〈1〉と〈2〉が満たされてつつ、アメリカ合衆国を中心とした価値観を広めて、国や地域の文化を尊重する姿勢を示しながら自国(アメリカ合衆国)を中心とした結束と繁栄を目指すという性格を多かれ少なかれ持っています。
しかしながら「ラストサムライ」は〈1〉と〈2〉が満たされず、さらにアメリカ合衆国以外の国の文化や精神をテーマとしています。また、それぞれの国や地域の価値観を大事に持って生きることの大切さを伝えています。
「ラストサムライ」主演とプロデュースはハリウッドの一流スターのトム・クルーズです。「武士道精神」は彼が信じる新興宗教の教えと共通するものが多いという話もあり、また日本文化に大きな興味を持ち、黒澤明監督のファンでもあるといいます。
そういうわけで、トム・クルーズが主演だけでなくプロデュースをしている作品は、典型的なハリウッド映画とは明確に違う「際立った」ものとなっています。
そのためか、トム・クルーズが関わる映画は彼が一流スターであるにもかかわらずアメリカ合衆国内ではかならずしも大ヒットというわけにはいっていないようです。
国内(アメリカ合衆国)よりも国外、たとえば日本でのほうがヒットする作品もあります(例:「バニラ・スカイ 」)。
それでもトム・クルーズ出演・プロデュース作品はハリウッド映画というカテゴリーに分類されることは確かです。カテゴリーの中にあって他とは違って目立つ作品に関わり続けるトム・クルーズは「際立」っています。
これはいわば「トム・クルーズ」というブランドなのです。
【まとめとポイント】
●際立つとは、他との違いや区別が明瞭であり、目立つこと。主によいことの場合にいう。
●自社(の製品・商品・サービス)がどのカテゴリー内にあるのかを再確認する。
●所属するカテゴリーの「主な要素と特徴」がなにかを把握する。
●主な要素と特徴から、自社(の製品・商品・サービス)を思いきって外してみたらどうか? と考えてみる。
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