ハウルの動く城(HOWL`S MOVINGCASTLE)
宮崎駿監督/日本/2004年/119分
原作:『魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉』徳間書店
●心踊りながら絵本のページをめくるかのような世界に、戦争というテーマを織り交ぜようとした。際立つのは特徴的なキャラクターと、様々な表情をみせる空模様。
Story(ストーリー)
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魔法と科学が混在する世界。愛国主義が色濃く、各地で戦争が続いている。亡き父が残した帽子屋で働くソフィーは街でハウルに出会う。それがもとでハウルをつけ狙う荒地の魔女に呪いをかけられ、ソフィーは90歳のおばあさんにされてしまう。
ソフィーは街を離れて荒地に行き、ハウルの動く城に掃除婦として住み込む。ハルルをはじめ火の悪魔カルシファーやマルクルと暮らすうちに次第にうちとけ、家族のようになっていく。
だが戦争は激しくなる一方で、ハウルにも魔法使いとして戦力になるようにとの国王から使者がやってくる。
自分勝手に生きてきたハウルはソフィーと出会うことで、守るべきかけがえのないものができる。
Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ソフィー
帽子屋の娘。18歳の娘が荒地の魔女に魔法をかけられて90歳におばあちゃん
になる。
△ハウル(ジェンキンス、ペンドラゴン)
魔法使い。青年。
△カルシファー
火の悪魔。動く城の暖炉に住む。動く城の動力源。
△マルクル
ハウルの弟子。子供。
△荒地の魔女
元キングズベリー王室付魔法使い
△サリマン
キングスベリー王室付魔法使い
△ヒン
犬。サリマンの手下。ソフィーになつく。
△カブ
頭がカブのカカシ。
Comments(論評、批評、意見)
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心踊りながら絵本のページをめくるかのような世界に、戦争というテーマを織り交ぜようとした。際立つのは特徴的なキャラクターと、様々な表情をみせる空模様。
「ハウルの動く城」ではメロドラマをやるという噂を聞いていた。たしかに宮崎風メロドラマではあるのだが、そこに戦争というテーマを絡ませようとした。そのため、作品を貫く1本線がみえなくなっている。
「風の谷のナウシカ」は自然環境と地球の未来というしっかりしたテーマを持っていた。テーマを中心にして風の谷、腐海といった世界観を構築して、ナウシカというひとりの少女の姿を通してエンタテイメントとして楽しめる作品になっていた。
「風の谷のナウシカ」の原作漫画はかなり哲学的なテーマを扱っているようにみてとれる(特に最終巻は哲学問答かのようなところがある)。
「ハウルの動く城」の世界では愛国主義が色濃く戦争中である。「政治と戦争」といったテーマを取り込んでなにかしらのメッセージを伝えたいという思いがあるのだろうが、メロドラマとの連携はうまくいっているとはいえない。
スタジオジブリの映画作りの方法は、宮崎監督がおおまかな全体像をすべてひとりで決めて、スタッフにそれぞれ仕事を振り分けるというやり方だという。
宮崎監督は、だれかからヒントを得てそれがいいと思ったら、それまで1年ほど準備していた企画をすぐにやめて、一気にストーリーの全体像を作り上げてしまう、そんな人らしい。
直感と思いつきを一気に物語にできる瞬発力を持った宮崎監督の作品は、みんなでアイデアを出し合ってストーリーを作り上げたものではない。宮崎監督の想像力で構築された世界を表現したものなのだ。
宮崎監督のイマジネーションの世界は独特の雰囲気があり、多くの人々の心を掴むことができる。それは個性あるキャラクターと飛行機や空や街や乗物の造形力に依るところが大きい。
「ハウルの動く城」では特に空模様の描写がすばらしい。空というのは1日のうちでも時間によってじつに様々な表情をみせるものだ。空を何時間もじっくり眺めたことがなければ、あのように表情豊かな空を描くことはできないだろう。
キャラクターはどれも個性豊かだ。火の悪魔カルシファーやカカシのカブなど、特徴があって一度観たら忘れそうにない。
また、ソフィーや荒地の魔女の動きなどの年配者の描写にリアリティがある。これは宮崎監督がソフィーの歳に近づいてきたから描写が緻密になってきたというのもあるかもしれない。
このあたりの描写やセリフにはユーモアがあり、アニメーションといえども子供だけでなく年配者も楽しめるようになっている。
過去の宮崎監督作品群はどれも独特の世界観があり、特徴的なキャラクターが登場する。しかしストーリー構築のうまさにはばらつきがある。どうしてだろうと思っていたが、宮崎監督の作品は類稀なる瞬発力で一気に作られるというのでその謎がとけたような気がする。
日本には宮崎監督のように、思いつきやヒントを一気に物語にできる稀有な才能を持った巨匠がいる。こうした巨匠がジャパニメーションや漫画で才能を発揮してきた。例えるなら一握りの天才が支える国のようなものだ。三国志でいえば蜀の諸葛亮孔明だ。
これに対して欧米では、たいていチームを組んでストーリーを練り上げていく。
日本式と欧米式。どちらにもプラスとマイナスがある。どちらがよいわるいではなく、どちらの方式にせよ確かなことは、「ベテラン」「巨匠」という名の厚い雲が空を隙間なく漂っていたのではあたらしい才能がなかなか活かされないということだ。
ベテランは技術は豊かだが、ひらめきと思いっきりに弱い。
ルーキーは技術は乏しいが、ひらめきと思いっきりに強い。
両者を活かす環境づくりが必要だ。巨匠はもう階段を登るのがキツイのだ(若くたって運動していなければキツイだろうが)。
ベテランで技術もひらめきもあって思いっきりがある、そんな稀有な才能の持ち主――それが宮崎駿監督だ。
∇「吉祥寺自由業日記」さんの『自意識という呪い』というタイトルのわかりや
すくすばらしい記事をみつけました。
∇アニメの巨匠」については「スチームボーイ(STEAM BOY)」のレビューもどうぞ
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Comments
吉祥寺自由業日記を書いてます吉祥寺拓也と言います。はじめまして。このたびはこちらに御紹介をいただきありがとうございます。またぜひ私の方にもお立ち寄りください。
また、事後報告で恐縮ですが、こちらからもトラックバックさせていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by: 吉祥寺拓也 | 12/06/2004 23:30
はじめまして
いろいろ評価が分かれてますが
ウチは面白かったですよ。
謎だらけでしたが
また見にいこうと思ってます
http://www16.ocn.ne.jp/~richland/howl-story.html
Posted by: ハウル君 | 01/09/2005 15:07
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Posted by: hosting providers | 10/19/2015 19:03