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顧客になるには―「コラテラル」―

〈カテゴリー:ディズニー&ピクサー魔法のヒント/マーケティング〉

まず、顧客とはなんでしょうか。

一般には、顧客とは、得意客やひいきにしてくれる客のことをいいます。

Aさんはあるお店で商品を買いました。すると、顧客カードが発行されました。

店員さんは笑顔で言います。
「ぜひ次回のご来店の際にご提示くださいませ。当店では万全のカスタマーサ
ービスを提供させていただいております」

Aさんは思いました。
自分は今後この店で買い物やサービスを受けるつもりは今のところないけれど、
もう店の顧客になったのだろうか?
「また買い物にきてくださいね」という店側の願いはわかるのだが、なんだか
顧客という名の「得意客にされてしまった」かのようだ。

Aさんがその店で買い物をしたのは、たまたまそこに必要な物を売っている店が
あったから。それ以上でも以下でもありません。他に数あるお店のなかからそ
の店を選んだわけではないのです。

顧客になるかどうか決めるのは、生活者(その商品を利用した経験や今後の利
用意向の有無に関わらない人々。または客)です。

生活者や客が、またあの店から商品を買いたい、サービスを受けたいと思い、
2度3度と足を運んだり、商品を注文したりすることで、顧客になっていくの
です。

店が、生活者や客を顧客にするのではありません。生活者や客が自ら顧客にな
るのです。
店にできることは、生活者や客に顧客になってもらえるようにすることです。

では、どうやったら顧客になってもらえるのでしょうか。
それには主に2段階あります。

映画作品を例にみてみましょう。
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作品名「コラテラル(COLLATERAL)」
マイケル・マン監督/アメリカ合衆国/2004年
作品レビューはこちら
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ロスエンジェルスでタクシー運転手をしているマックスはある晩、女性検事の
アニーを乗せた。

アニーは行き先を告げると、道順も指定した。少しでも渋滞を避けて早く目的
地に着きたかったからだ。

マックスはアニーとは違う道を行くことを提案した。アニーは自分が指定した
道のほうが早いと言ったが、マックスも自分が提案した道のほうが早いと言っ
て、さらにこう付け加えた。もし遅かったら運賃を安くするから――と。アニ
ーはそれに頷いた。

結果はマックスがいうとおりになった。マックスが提案した道を行くことで渋
滞を避けることができたのだ。

アニーはマックスに尋ねた。もしわたしの言うとおり車を走らせていれば、タ
クシーは渋滞にはまってあと数ドル多く手に入れることができたのに、なぜ、
もっと良い道を提案したのか。しかも、運賃を割り引くというリスクを負って
までして――と。

マックスは、たまたま青信号が多くて運良く渋滞を避けることができただけだ、
と照れたように言うのだった。

これがきっかけでマックスは自分の夢(高級リムジンサービスの会社を興すこ
と)を話して聞かせた。顧客が心地良く感じて、目的地についても車を降りた
くない、そんなサービスをする会社を目指している――と。

なるほどタクシーの内部はきれいに掃除されており、車体もピカピカに磨かれ
ている。アニーはその後も会話を続け、マックスが心を和ませるひとときを持
つために使っている「南の島の写真のカード」を譲り受けた。

タクシーを降りたアニーはマックスに名刺を渡し、あなたが将来会社を興し
て入用になったら、と笑顔を残して去って行った。


アニーは1台のタクシーに乗りました。マックスのタクシーを選んで乗ったの
ではありません。たまたま乗ったのがマックが運転するタクシーだったのです。

そこでアニーは客の利益を第一に考えて運転するマックスに出会いました。聞
けばマックスの夢は高級リムジンサービスの会社を興すことだいいます。アニ
ーは、マックスが経営する会社のサービスならまた受けてみたいと思ったこと
でしょう。


〇アニーがマックスに名刺を渡すまでには大きく分けて2段階あります。

第1段階 →客の利益を第一に考える姿勢と行動に驚き、感心する。

第2段階 →マックスという人物に興味を抱く


〇アニーがマックスの顧客になりたいと思うまでのプロセスを示すと以下のよう
になります。

マックスのサービスに感心する
    ↓
マックスに興味を抱く
    ↓
マックスの人柄や考え方や信条や方向性や夢を知る
    ↓
マックスの考えや方向性に共感する
    ↓
マックスに名刺を渡す(顧客になりたいと思う)


【まとめとポイント】-------------------------------------------------

●生活者や客が自らなりたいと思うのが「顧客」

●他との違いを提示して、店や会社に興味を持ってもらう

●店や会社の、考えや方向性(理念)をわかりやすく伝える

●それは、広く共感できるものにすること
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