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11/04/2004

コラテラル(COLLATERAL)

マイケル・マン監督/アメリカ合衆国/2004年/

●他者との出会いの物語

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
ロサンジェルス――。ある晩、銀髪に白髪の不精髭を生やし、ノーネクタイで
ライトグレイのジャケットを着たビジネスマン風の男(ヴィンセント)がタク
シーを拾う。ヴィンセントはプロの殺し屋で、今晩中に5人を殺害する仕事を
請負っていた。
タクシー運転手のマックスは、多額のチップと引き換えに一晩のドライバー役
を引き受ける。しかひ、ヴィンセントを待つタクシーの上に死体が落ちてくる。
ヴィンセントが殺し屋だとわかったマックスだが、タクシーのハンドルを握ら
ざるを得なくなる。ヴィンセントを乗せたタクシーは、次の標的をめざして夜
のロサンジェルスを走りはじめる。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ヴィンセント
 殺し屋

△マックス
 タクシー運転手

△アニー
 女性検事


Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●他者との出会いの物語

マックスは高級リムジンサービスの会社を興したいという夢を持っている。タ
クシー運転手はそのための「つなぎ」の仕事にすぎないという。しかしマック
スが運転するタクシーの内部はきれいに掃除されており、車体もピカピカに磨
かれている。自分が興す会社のサービスは、顧客が心地良く感じて、目的地に
ついても車を降りたくない、そんなふうになることを目指しているからだ。

そんなマックスの誠実さと人柄の良さは、作品の冒頭での女性検事のアニーを
乗せたときの会話や、客の利益を第一に考えて、少しでも早く目的地に着く道
を提案する様子などから知ることができる。

夜勤のタクシー運転手というハードな仕事をするマックスだが、心を和ませる
ひとときを持つ工夫をしている。それは南の島の写真だ。この写真を5分眺め
ているときは心からリラックスできるという。

そんなマックスは一見するとだれの目にも「良い人」に映るのだが、それは一
般的な他人からの見方だ。夢を持って「つなぎのタクシー運転手」をしている
親切丁寧な男。そう聞いたら、だれだって応援したくなるだろう。

だが、次にタクシーの客となったヴィンセントは、目的に向かって一直線に向
かって行動する男だ。多くを語らずとも目的を達成ために必要なことをすぐに
やる姿勢を「COOL」だと評する。まるでサムライの生き方のように(※1)。

そのためマックスに対して、ありきたりな接し方をしない。それどころかこう
言うのだ。12年もタクシードライバーをやっていれば、つなぎの仕事とは言え
ない、事業に必要な高級車を買うための手付金ぐらい払らったらどうだ、夢を
持ちつつある朝起きて鏡を見て気づくのは確実に歳を取った自分の姿だ――と。

これは、ただの他人だったら言わないだろう。がんばれよ応援しているぞ、と
言うだけだ。

そもそもタクシーの客としてはじめて会った人間に、自分の夢を語ることはま
ずない。にもかかわらず、初めて会った女性検事のアニ―と会話をするうちに、
マックスは自分の夢を話して聞かせる。会話のうちで、お互いに惹かれるなに
かがあったからだろう。だが、初めて会った殺し屋のヴィンセントには、マッ
クスは夢の内容については話したくないと言う。

ここにマックスの、アニーとヴィンセントに対する距離感の違いがうまく表れ
ている。

たとえ夢を話したとしても、それについて「ダメ出し」をされることなど、通
常の他人との出会いではありえないだろう。

そういったことをふまえてみると、マックスはただの他人に出会ったのではな
い。ヴィンセントという「他者」と出会ったのだ。

人と人が出会ってお互いに変化が生まれ、やがて劇的な変化を起こすには、あ
りきたりではない「他者」との出会いが必要だ。

マックスは「他者」であるヴィンセントに出会ったことで、自分に足りなかっ
もの(即決力、行動力)を自覚する。それは行動になってあらわれ、やがてヴ
ィンセントの任務遂行を阻止しようとする。

他者との出会いにって変化していくキャラクターというのが、限定された時間
(一晩)と空間(ロサンジェルスの街・タクシー)で緊張感を持って描かれて
いる。

会話は隅々まで洗練されて練り込まれており、セリフのひとつひとつがキャラ
クターについての情報を示していると同時に、Pay Off(はじめに提供されて
後に劇的に使われる情報)にもなっている。

また、クラブでのガンアクションシーンは稀にみる見事なもので必見だ。プロ
の殺し屋ということで、標的には確実に胸に2発、頭に1発の順番で確実かつ
正確に弾を撃ち込むという徹底ぶりだ。ほかにマガジンをリロードする際の全
く無駄のない流れるような素早い動きは、ヴィンセントがプロ中のプロだとい
うことをよく表している。

ストーリーのラストのあたりでもヴィンセントがマガジンをリロードしようと
するシーンがある。このシーンは「語るより見せろ」の基本であり、演出方法
としては見事の一言につきる。クラブでのリロードシーンと比べてみれば、演
出効果が存分に発揮されているのを実感することができる。

タクシーの中での小話、名刺、ヴィンセントが持っている仕事のデータ、マガ
ジンのリロード。これら会話や小物や仕草などがすべて後のストーリーへ繋が
っている。繋がり方としては「前フリ」「アクションポイント」「比較」とい
ったものだ。

会話のひとつから仕草に至るまで、綿密に作り込まれた作品である。

〈他者との出会いによって貴重な体験をするという構成でほかに有名な作品で
は「ローマの休日(Roman Holiday)」(1953年、ウィリアム・ワイラー
監督)がある。こちらは王女と新聞記者との出会いのラブストーリーだ。〉
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※1 まるでサムライの生き方のように
  ヴィンセント役のトム・クルーズは映画作品「ラストサムライ(THE LAST
  SAMURAI)」(エドワード・ズウィック監督/2003年/アメリカ合衆国)に
  主演している。彼は日本の「武士道」に興味を持ち、日本の文化を学んで
  撮影に臨んだという。

ラスト サムライ 特別版 〈2枚組〉
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「コラテラル」オリジナル・サウンドトラック
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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Comments

TBありがとうございます。
夜の街が綺麗な、スタイリッシュな映画でしたね。
人間との距離感がそれぞれ違う、不思議な感覚の映画でした。さすがマイケル・マンです。
マイアミ・バイスの映画化があるようで、楽しみですね。

Posted by: 猫屋 | 12/15/2004 at 17:23

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