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11/09/2004

ロボコン ROBOT CONTEST

ロボコン
伊藤淳史 須藤理彩 鈴木一真 小栗旬 うじきつよし 吉田日出子
東宝
2004-03-26


by G-Tools

監督・脚本 古厩智之/2003年/日本/118分

●着眼点(高専ロボットコンテスト)の良さと、それを作品に組み立てるし
 っかりしたストーリー設計と演出の組み合わせが、良質の青春映画を誕生
 させた。観客を第一に考え、企画に合った作品をかぎりなくベストの形で
 作り上げている

〔1〕プレミス(Premise)ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア
―――――――――――――――――――――
高専(※1)学生の理数系青春ストーリー


〔2〕ストーリー(Story)
―――――――――――――――――――――
おちこぼれの高専女学生・里美がロボット部に入部する。持ち前の天真爛漫さ
を発揮し、やがて部員たちとうちとけていく。そして高専ロボコン(※2)に
出場し、幾多の困難を乗り越えて勝ち進んでいく。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△葉沢里美(操縦担当)
 高専学生。最近、めんどくさいが口癖。

△相田航一(設計担当)
 高専学生。設計の腕はいいが、自分勝手と言われることも。

△四谷部長(作戦担当)
 高専学生。第2ロボット部部長。勉強、調査、研究熱心だが、
 チームの統率力はイマイチ。

△竹内和義
 高専学生(組み立て担当)
 部品制作の腕はいいが、いつも作業を途中で投げ出してしまう。
 
△図師先生
 第2ロボット部顧問

△葉沢良行
 里美の父親。趣味は自転車(ロードレーサー)。

△豪原
 高専学生。第1ロボット部部長。エリート集団といわれる第1ロボット部
 をロボコン優勝に向けてひっぱっていく。

▲BOXフンド
 第2ロボット部製作のロボット。


〔4〕・1 シーン (リズム、コントラスト、構成)
―――――――――――――――――――――
すべてのシーンが、存在すべき理由を複数もっている。シーンが、情報(伝え
たいこと)、フォーシャドゥイング(前フリ)、反復による変化、といった役
割をもち、それらが無駄なく正確に機能している。

 
〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●着眼点(高専ロボットコンテスト)の良さと、それを作品に組み立てるし
 っかりしたストーリー設計と演出の組み合わせが、良質の青春映画を誕生
 させた。観客を第一に考え、企画に合った作品をかぎりなくベストの形で
 作り上げている

こんなふうに言う人もいるだろう。「ロボコン」は作りがマジメで地味だ、
老若男女だれに観せてもだいじょうぶな無難な映画だ――と。

これらの言葉は「ロボコン」のすばらしさを表している。つまり、基本がし
っかりしているということだ。ストーリー設計と演出がしっかり機能してい
るので、理数系の甲子園といわれるロボットコンテストという題材がしっか
り活かされいる。
一見地味に思えるかもしれないが、地味そうにみえる中にこそ、技術とセン
スがぎっしり詰っているのだ。

基本をしっかりできないときはどうするか。基本以外の「奇抜さ」で注目を
集めようとする。それは「ハイコンセプト(High Concept)」と呼ばれること
がある。ハイコンセプトとは、人々を引き付ける強烈な仕掛けを持つストー
リーのことである。ハイコンセプトは有効に機能することもあるが、それは
ストーリーの基本がしっかりしていることが前提だ。たとえハイコンセプト
で注目をあつめても、ストーリーの設計や演出がしっかりしていなければ観
客の落胆は大きくなる。(インターネットのウェブサイトでいうと、FLASH等
を多用した派手なページは見た目にインパクトがある。だが利用しずらかっ
たり、なにがいいたいのかよくわからなかったりというウェブサイトもある。
ウェブサイトの場合に大事なのは、情報や内容(コンテンツ)の分類と整理
を中心にした構造設計の技術だ)
 
「ロボコン」はNHKが企画協力と制作協力をしているので、それに合った作品
作りをしているのだろう。作品の制作目的や方向性に最も適した形で作品を作
ることができるのも、しっかりした技術を持っているからこそ可能なのだ。

〈シーン (リズム、コントラスト、構成)について〉
同じパターンのシーンを繰り返し用いることで、前と後での状況の変化を表現
できる(観客がストーリーの中での出来事の変化の理解を助けることができる)。

また、ある状況において登場人物それぞれがどのように行動するか、どうして
いるかを順に説明するシーンが、後のストーリーでのアクションポイントやタ
ーニングポイントに繋がっている(フォーシャドゥイング)。
 
例)第2ロボット部の合宿。旅館の手伝いでこき使われる部員たち。里美、航
  一、四谷部長、和義たちがそれぞれどのように働いているかを順に紹介す
  るシーン。そこでの四谷部長のシーンが、後のバリア(障壁)を乗り越え
  るヒントにもなっている。

またこれらは、バリアの克服→キャラクターの苦悩と成長→キャラクター同士
の関係の変化、という流れを作り出す。こうしてストーリーを前へ前へと推し
進めていくのだ。

〈キャラクターへの共感〉
里美は最近「めんどくさい」が口癖だ。第2ロボット部に入り、ロボットの試
合で負けると、やっぱり悔しい。だけど他の部員は悔しがる素振りがない。そ
んなもんだ、予想道理だ、という態度に、「くやしくないの?」という思いが
湧き上がる。そんななか、意外にも第2ロボット部がロボコン本大会に出場す
ることになった。里美は徐々に第2ロボット部(部員)とロボコンに夢中にな
っていく。

こういったシーンは、めんどくさがり屋だった里美が部員たちをみて、逆にや
る気を出していくカタリスト(きっかけ)だ。

例えば、平凡なOLの主人公が自分を見つめ直す旅に出るというのでは、どこか
ありきたりのものとなってしまう。自分を知るために自分を見つめ直すという、
その手法が結局のところ「自分、自分……」という一面的なアプローチになる。

この点、里美は自分のことを見つめ直そうという気はさらさらない。課題提出
の点数が悪かったために居残り勉強のかわりにやむなく第2ロボット部に入る
ことにった里美は、試合で負けても「そんなもんだ」という部員たちの姿をみ
て、悔しくないの? もっとがんばろうよ、やってやろうよ、と思う里美は部
員達の姿に自分の姿をみたのかもしれない。

視点を変えてみることで里美の現状と気持ち(考え)がはっきりする。里美は
これをきっかけに新たな決心で行動を起こす。こうしてトーリーが進んでいく
のだ。こうした、徐々に変化していく里美の姿は観客に好印象で受け入れられ
るだろう。

〈舞台〉
監督は西日本の多数の高専の中から山口県徳山市(現:周南市)の徳山工業高
等専門学校を選んでロケ地にした。コンビナートが見える通学路など、独特の
ロケーションだ。ロケ地を地方にして、題材をロボットコンテストにするなど、
作品の舞台を限定して絞り込んでいる。
コンビナートと海に面したロケ地は、技術で世界に羽ばたいていく高専生徒た
ちの青春を描くのにマッチしている。

〈細部〉
エリート集団の第1ロボット部(部員多数)。おちこぼれといわれる第2ロボ
ット部(部員4名)。この対比がわかりやすくていい。第2ロボット部の部室
は校庭の端のプレハブ小屋だ。なぜこんなところに? と思ってよく見ると、
プレハブ小屋には朽ちかけた「陸上部」の看板が掛かったままであった……。

〈名言(作品作りの極意)〉
・「あいつに、ありがとう、っていわせてみようよ」
・「おまえが笑ってどうする」

といったセリフがある(一字一句正確ではないかもしれいが)。これらのセリ
フは登場人物たちの変化を促がすきっかけとなる重要なものだ。それと同時に
作品作りにおける重要な事柄を語っている。

例)旅館を手伝う部員たち。旅館にやってきた団体客らがバスを降りてくるの
  を出迎える航一。お客さまをきもちよくお迎えしろと言われ、無理矢理笑
  顔を作って「いらっしゃいませ」と言ってみるがどうもうまくいかない。
  そこへ和義がやってきて「おまえが笑ってどうする。お客が笑顔になるこ
  とはなにか考えてみろよ」といった意味のことを言う。
  
〈テーマとの関連〉
ここ数年日本国内では「画一的な競争よりも、ひとりひとりの個性を育てよう」
といったことがよく言われる。
  
作品は第2ロボット部を中心に描かれる。個性が強過ぎて第1ロボット部に馴
染めなかった者たちが集まったのが第2ロボット部だ。(第1ロボット部は集
団で効率的な設計・製作・作戦を行って大会優勝候補といわれている)

個性が強くてそれぞれがばらばらだったところに里美が加入して変化が起こる。
やがて個性をもったひとりひとりがお互いに力を出し合い、チームになってい
く。
チームの一員になるには、それぞれが得意分野をもって、それぞれの役割も果
すことができなければならない。「ロボコン」は得意分野(操縦・設計・作戦
・製作)をもったキャラクターたちが「チーム」を結成していく過程の物語で
もある。
キャッチコピーの一文は「ぼくたちに足りない部品はなんだろう」。個性(得
意分野)を持っていることが基本で、それにプラスする足りない部品はなんだ
ろう、ということだ。
画一的で大量生産の時代は遠く彼方に過ぎて、個性(得意分野・知識・技術)
を持っていることが当たり前で、それらをどうチームワークに活かしていくか
が焦点になっている。時代を反映すると同時に将来のビジョンを提示している。
  
ロボットコンテストはアイデアマンシップが基本コンセプトだ。コンテストで
勝つことはもちろんだが、それと同じぐらいにアイデアマンシップが重要視さ
れる(このおかげで第2ロボット部は特別枠で全国大会へ出場することになっ
たのだ)。

全国大会で勝ち進んでいた第2ロボット部は、些細なことで試合中に喧嘩をは
じめる。それでもなんとか試合に勝つことができたが、その一方で対戦相手チ
ームは勝負に勝つことよりも、ロボットの可能性を感じさせる2足歩行ロボッ
トを披露して観客を楽しませ、アイデアマンシップを存分に披露する。第2ロ
ボット部の部員たちは忘れかけていたものがなんなのかと考えるようになる。

〈キャラクター(里美の父親・良行について)〉
里美は父親と二人暮らしだ。母親は亡くなったらしい。父親の良行は趣味の自
転車(ロードレーサー)が大好きで、休日にツーリングに行くことを楽しみに
している。
好きなこと(自転車)に夢中になれる良行のキャラクターは、里美がやりたい
ことや好きなことがみつからない様子を際立たせている。しかし、きっかけさ
え掴めば、里美も父親譲りのがんばりを発揮して元気に活躍することを予感さ
せもする。

作品のはじまりのシーン。保健室のベッドの上で上半身を起してホゲェ~とし
ている里美の表情。窓の外のグラウンドでは部活動の生徒たちが掛け声をかけ
合いながら走っている――。
この最初のシーンはすごい。わずか数秒でメインキャラターの現状を表現して、
その後の変化を観客に期待させるものとなっている。「語るより見せろ」の良
き手本だ。

〈わかりやすさ〉
やりたいことがみつからず、なんとな~くだるぃ~と毎日過ごしている里美。
こうしたキャラクターは普通の高校や大学にはいくらでもいそうだ。そういっ
た意味でも里美のキャラクターは同世代の共感を得やすい。こうした里美は高
専の学生という設定だ。14,5歳である程度明確な目目的意識を持って入学し
てくる者がほとんどの高専にあって、里美のキャラクターは際立つ。周囲との
対比がはっきりしているからだ。
また、第1ロボット部と第2ロボット部の対比もわかりやすくてよい。

〈小道具〉
和義の携帯電話。和義が、ロボット部の活動よりも友達との付き合いを優先さ
せていることを表す小道具が携帯電話だ。
後にこの携帯電話が、第2ロボット部の危機を救うことになる。それは和義が
なにを優先するようになったかを表している。
===========================
また、ロボットコンテストの試合シーンは、試合時間の3分間をカット割りせ
ずに2台のカメラで追い、里美役の長澤まさみ(※3)は実際にロボットを操
縦しているという。

ストーリー設計の基本がしっかりできるとうことは、きちんとした変化球を投
げることができるということだ。
次回作ではどんな変化球を投げるのかと思うとワクワクする。「ロボコン」監
督は日本を代表する映画監督になるのはまちがいない。

脚本のみならず、観客やユーザを意識して仕事をする人(めざす人)はぜひ観
るといい。エンタテインメントとは? 観客第1とは? といったことを考え
るときに助けになるヒントや答えが「ロボコン」にはたくさん詰っているから
だ。
 
「ありがとう」と言って笑顔で映画館を後にしたくなる、そんな作品だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
※1 高専
  高等専門学校。中学卒業生を受け入れて、5年一貫教育を行う技術
  者養成教育機関。

※2 高専ロボコン
  アイデア対決・高等専門学校ロボットコンテスト。62校の高専学生たち
  が、毎年、出題されるテーマにしたがって一定の条件(費用・時間・動
  力源・重量)を満たすロボットを開発して、規定ルールのもと、フィール
  ド内でロボット同士の熱いバトルを繰り広げるロボットコンテスト。理数
  系の甲子園とも言われている。

※3 長澤まさみ
  女優。1987年静岡県生まれ。第5回東宝シンデレラグランプリ受賞。
  「クロスファイア」('00)、「なごり雪」('02)、「黄泉がえり」
  ('03)等に出演。
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青春ロボコン―「理数系の甲子園」を映画にする
古厩 智之

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