知りたいこと~三人称の視点を持つ~「はじめの一歩」
〈ディズニー&ピクサー魔法のヒント/マーケティング〉
漫画や小説や映画作品では、どの視点でストーリーが進行しているかに注目し
てみましょう。
たいていは三人称の視点が使われています。これは、作品の登場人物たちすべ
ての心の内に入ることができ、なおかつ作品世界のすべてを知っている、とい
う視点です。
物語の世界に入った観客は、ある出来事について登場人物達がどうリアクシ
ョンしてどう感じたのかを知りたいのです。
漫画作品を例にみてみましょう。
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「はじめの一歩」森川ジョージ 講談社
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これは、いじめられっ子の少年(幕ノ内一歩)がボクシングに出会い、ボクシ
ングを通して様々な人々と出会い成長していくというボクシング漫画です。現
在も週刊少年マガジン連載中の大人気コミックです。
ある試合の第1ラウンド。視点は主人公の幕ノ内一歩側です。壮絶な第1ラウン
ドが終わってセコンドの元に戻ってきた幕ノ内陣営(鴨川ジム)では、一歩の
ダメージ具合や、対戦相手の力量をどう見ているかが描かれます。
つぎに、対戦相手の選手側のシーンになり、対戦選手のダメージ具合や、一歩
の力量をどのように感じているのか、そして第2ラウンド以降はどのような作
戦でいくつもりなのかが描かれます。
漫画の読み手は三人称の視点で、一歩と対戦選手の両方の状態を知ることがで
きるようになっています。
例えば一歩側の視点だけに限定した場合、相手選手のダメージはどのくらいな
のかわかりません。そのほうが謎が深まりハラハラドキドキするかもしれませ
ん。
しかし「はじめの一歩」では、両陣営の視点だけでなく、客席の視点も描かれ
ます。それは、一歩の試合を観戦にきたほかのボクサーの意見だったり、ボク
シングトレーナーの試合分析による意見だったりもします。
なぜ三人称の視点を使っているのか?
それは、読者に多くの情報を提示することで、試合の進展具合やボクサーの体
調やボクシング技術・戦術を解説する役割があるからです。
テレビのボクシングやK-1試合の放送では、アナウンサーと解説者が試合の模
様を視聴者に伝えます。
「はじめの一歩」では、解説者の台詞や観客の声援や野次も含めて、ボクシン
グ会場にいるあらゆる立場の人々の想いや意見や考えが語られるのです。
これは、熱心なボクシングファンだけでなく、広く一般の人々向けにボクシン
グの技術・戦略的な情報を提供すると同時に、試合に関わるそれぞれの登場人
物たちの思いや立場を知らせることで、その試合にかける意気込みを理解して
もらうことができる効果的な方法なのです。
三人称の視点で多角的な視点から試合を解説することで、ボクシングのことを
よく知らない読者でも、幕ノ内一歩たちの物語を楽しめるようになっています。
では、自社(の商品)に興味をもってくれた生活者に、どんな情報を提供すれ
ばよいのでしょうか。
商品を提供する側からだけの商品案内は、ボクシングで例えるならば、対戦相
手の様子がわからない一人称の視点のようなものです。
商品を買う側(例:対戦選手)は、一体どんなことを知りたいのか?
商品を買うまでには至らないが、興味はあってちょっと覗いてみたい側(例:
観客)は、一体どんなことを知りたいのか?
それぞれの人々の心の内に入ることができればよいのですが、現実には人の心
の内をすべて読み解くことは不可能です。
しかし、それぞれの視点に立って想像してみることはできるのです。
【まとめとポイント】-------------------------------------------------
●三人称の視点で想像する
●専門的な性格を持つ商品やサービスの場合でも、広く一般受けするよう多角
的な説明や解説ができれば、新たな顧客を獲得するチャンスを得ることがで
きる
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