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09/25/2004

トイレ地図

〔マーケティング/ディズニー、ピクサー魔法のヒント〕

人は自分のトイレ地図を持っている。

例えば、あなたが、ある街に行ったとしよう。その街のどこにどのようなトイ
レがあるのか、ある程度の「トイレ地図」を頭の中に持っていることでしょう。

あのデパートのトイレは綺麗だ。トイレットペーパーはいつも補充されている。
洗面台まわりはいつもきれいに掃除されていて、泡ポンプ式の手洗い石鹸もあ
る。個室も広い。

こうした情報は、街でトイレに行きたくなったときに、すぐに頭の中から引き
出される。

車を運転しているときは「あの公園にはトイレがあったな」や「3丁目のホー
ムセンターに行けばトイレがあるな」や「あのコンビニならトイレが使えたな」
といった情報がすぐに頭の中から引き出される。

特に都会では、コンビニエンスストアのトイレを利用できない場合が多い。そ
んななかで、都会の真中にもかかわらず、「トイレあります」の看板を掲げて
いるコンビニエンスストアがある。こうした店の情報は、ドライバーの頭の中
の「特別な引き出し」に格納されるこになるだろう。

頭の中の引き出しということについては、なにもトイレに限ったことではない。

あの店は商品の値引きはしないが、店員がだれもが豊富な商品知識を持ってい
て、わかりやすく丁寧に説明してくる。そう感じたならば、頭の中の引き出し
に入れるときに、その店につけるラベルには「商品知識豊かで丁寧」と付くの
だ。

トイレ地図をはじめとして、人は多くの種類の地図を持っている。はたして自
分の店はどんな地図にどんなラベル付で載るのか、と想像してみよう。

【まとめとポイント】-------------------------------------------------

●人は自分だけの地図を持っている。

●頭の中の引き出しに収納される「店」のラベルには、なんと書かれるのか
 を想像する。

☆そもそも、人の地図に載るだけの特徴があるか?

☆その特徴はプラスの印象を与えるか、それともマイナスの印象を与えるか?
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メールマガジン「ディズニー&ピクサーでみつけようゲスト感動のヒント 」

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ヒーロー―「スパイダーマン2」―

〈カテゴリ:映画で読み解くマーケティング〉

ヒーローはみんなに応援される存在です。応援されるのはなぜでしょう。みん
なが支持してくれるからです。なぜ支持されるのでしょう。それはヒーローの
考えや行動にみんなが共感してくれる
からです。

ヒーローは強いからヒーローなのではありません。人より優れた能力を持って
いるからヒーローなのでもありません。

映画作品「スパイダーマンシリーズ」でも、主人公ピーターは人より優れた能
力を持っていますが、それがヒーローである直接の要因ではありません。
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「スパイダーマン2(SPIDER-MAN2)」
サム・ライミ監督/2004年/アメリカ
原作:スタン・リー
作品レビューはこちら
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恋に悩みながら、授けられた特殊能力を正しいことのために使わなければ、と
いう使命感を持ちつつも、普通の人と同じように人生を送りたいという思いも
ある。そんな複雑な思いのなか、最愛の人には自分のことをわかってもらいた
い。しかし、彼女に危険が及ぶことをおそれて、自分がスパイダーマンだとい
うことは話せない。すれ違う二人の想い……。

青年の人生と恋の苦悩の物語に、観客は共感するのです。観客はピーターの特
殊能力のすごさに拍手を送るのではなく、特殊能力を正しいことのために使う
ピーターに拍手を送るのです。
つまり、支持して応援するのです。

ディズニー/ピクサーの新作映画作品「Mr.インクレディブル」ではスーパーヒ
ーローが主人公です。
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「Mr.インクレディブル」(2004年12月4日公開)
ディズニー/ピクサー映画作品
スーパーヒーローとしての活動を禁じられたMr.インクレディブルと彼の家族
の活躍を描いた冒険物語。
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この作品は、超人的な能力をもっているが故に、その能力を使うことを禁じれ
たス―パーヒーローの家族の冒険物語です。

どんなにすばらしい能力(商品やサービス)を持っていても、それだけでは真
のヒーローにはなれません。そのすばらしい(商品やサービス)をどう使うか
? これによって人々の共感を得られるかどうかが決まる
のです。

うちの店(わが社)の商品は、競合他社と比べても頭ひとつ抜きん出ている
すばらしい商品があるのに、なぜ人々に支持されないのか? そんなふうに
思ったことがあるなら「ヒーローの資質」はなんなのかを上記2作品を観て
考えてみてください(「Mr.インクレディブル」は2004年12月公開)。

【まとめとポイント】-------------------------------------------------

●強く、優れた能力を持っているからヒーローなのではない。

●ヒーローになれるかどうかは、人々の共感を得ることができるかどうかに
 かかっている。

☆すばらしい能力(商品やサービス)をどう提供するのか。それによって、
 ブランドはなにをするのか。が明確に伝わらなくてはならない。

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09/22/2004

バイオハザード II アポカリプス(Resident Evil: Apocalypse)

バイオハザード II アポカリプス デラックス・コレクターズ・エディション
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2005-01-26


by G-Tools

アレクサンダー・ウィット監督/カナダ・イギリス/2004年/93分

●前作に比べると、緊迫感とまとまり感は薄れたが、アクションシーンが大幅
 に増えた。ゲーム作品の世界観に近い仕上がりとなった。

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
ラクーンシティからの脱出を試みるアリスとジル・バレンタイン。そんななか、
T-ウィルスの開発者であるアシュフォード博士から、娘を救出してくれたら脱
出方法を教える、と約束される。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△アリス
 女性。

△ジル・バレンタイン
 S.T.A.R.S.(特殊戦略救助隊)女性隊員

△カルロス・オリヴィエラ
 S.T.A.R.S隊のリーダー

△アシュフォード博士
 T-ウィルスの開発者

△アンジー・アッシュフォード
 アシュフォード博士の娘

△ネメシス
 アンブレラ社がT-ウィルスによって作り出した兵器


Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●前作に比べると、緊迫感とまとまり感は薄れたが、アクションシーンが大幅
 に増えた。ゲーム作品の世界観に近い仕上がりとなった。

前作は、記憶喪失のアリスの視点でストーリーが進展していった。このため、
テレビゲーム(ビデオゲーム)をプレイしたことがない人でも、アリスと同じ
視点でラクーンシティの地下施設(ハイブ)でなにが起きたのかを徐々に知っ
ていくことができた。
ハイブに侵入しても、すぐにはアンデッドたちは姿を表さなかった。いつ出る
か、いまか、まだか、と観客は待ちつづける間に、T-ウィルスのことや各キャ
ラクターの正体がわかってくるという作りになっていた。
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バイオハザード(BIOHAZARD:RESIDENT EVIL)」レビューはこちら
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今作「バイオハザードⅡアポカリプス」では、視点のばらつきがみられた。こ
れは「まとまり感」に影響してくることだ。
今作では、アリス以外の登場人物たちを紹介するために、作品のはじめにセッ
トアップをいくつも置いている。アシュフォード博士の避難作戦、博士の娘ア
ンジーの避難作戦、ジル・バレンタインとS.T.A.R.S隊の紹介、アンブレラ社
傭兵部隊の市中掃討作戦、そして病院で目覚めたアリスの足取り……等。

ストーリーを進めるために観客に提示しておかなければならない事柄の数が多
いので、あっちもこっちもと駆け足でシーンが切り替わるのだ。こうなると、
主人公であるアリスの視点に合わせようとしてもうまくいかない。そこで、ジ
ル・バレンタインに視点をあわせようとする人も多いだろう。なぜなら、ジル
はゲーム版の中心的登場人物として有名でファンが多いからだ。だが、彼女に
視点を合わせようとするあたりで、アリスがスーパーウーマンのごとく登場し
て超人的なアクションで大活躍するのだ。

すでに作品の冒頭からアンテッドは登場しているので、あとは合流したアリス
とジルたちがどうやってアンテッドたちを倒していくか、ということになる。

途中、ネメシスという強力なキャラクターが登場してアリスたちを追ってくる
のだが、あまり怖くない。ネメシスは身体も大きく運動神経も優れ、銃火器で
武装もしている。いわゆる直接的な恐怖であり、じわじわと迫りくる得体のし
れない恐怖といったものとは正反対だ。

そのため、アリスとネメシスとの戦いのシーンはアクションは派手そうに見え
るのだが、それはごく短いカットを繋いでいくというもので、なにがどうなっ
ているのかよくわからないが、なにかすごいアクションをしているということ
なんだろうなぁ、といったものになっている。つまり、アクションの「痛さ」
が伝わってこないのだ。

「奥床さ」とは、深みがあって、その奥にあるものに心がひかれ、もっと知り
たい、見たいと感じることだが、「見せない奥床さ」がうまく機能していたの
が前作だった。今作では、表面的なアクションシーンの連続で「奥床さ」はな
い。

テレビゲーム(ビデオゲーム)版では、画面には映っていないアンデッドのう
めき声や足音だけが聞こえてくる、といった「見せない効果」が巧みだった。
こういった「見せない効果」が前作(第1作)には活かされていたのだが、今作
では活かされていない。

今作「バイオハザード II アポカリプス(Resident Evil: Apocalypse)」の
コマーシャルはよかった。劇場で作品の予告編として上映していた短いコマー
シャルだ。

冒頭、スキンケア美容商品のCMかと思わせるはじまりから、やがて美容商品を
提供している会社のロゴマークがあらわれる。どこかで見たことがあるような
ロゴマークだなぁと思っていると、きれいな女性の顔が崩れて美容商品使用に
よる副作用が~、と雰囲気が変わっていく。。ロゴマークは「アンブレラ社
(バイオハザードにおいてT-ウィルスを研究開発している巨大企業)」のもの
であり、これは「バイオハザード II アポカリプス(ResidentEvil: Apocalyps
e)」のコマーシャルだとわかるようになっている。
こうした裏返しの手法は、作品への興味をかき立てるのに役立っている。

予告編は、それ専門の人が作っているのだろうが、予告編のほうが本編よりも
インパクトがあった。

今作(第2作)はテレビゲーム(ビデオゲーム)版に近い仕上がりだ。
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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09/18/2004

ヴィレッジ(THE VILLAGE)

M・ナイト・シャマラン監督/アメリカ/2004年

B0001A7D0Eヴィレッジ
ホアキン・フェニックス M.ナイト・シャマラン エイドリアン・ブロディ
ポニーキャニオン 2005-04-22

by G-Tools

●愛とジェラシーの物語

テーマ(Theme)
―――――――――――――――――――――


Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
深い森に囲まれた外界から隔絶した村。森に生息する「彼ら」との和解によっ
て村の人々は永遠の平和を手に入れた。しかし、和解はある日突然に破り去ら
れる。


Main Character(主な登場人物
―――――――――――――――――――――
△ルシアス・ハント
 青年。物静かであるが内なる情熱を秘めている。幼馴染のアイヴィーに思い
 を寄せる。
 
△アイヴィー・ウォーカー
 女性。ルシアスの幼馴染。村の指導者エドワード・ウォーカーの次女。
 幼い頃の病気で視力を失う。深い洞察力を持つ。勇敢で、男の子のように活
 発。

△ノア・パーシー
 青年。ルシアスとアイヴィーの幼馴染。子供の純粋無垢な心を持つ。

△エドワード・ウォーカー
 男性。村の指導者。教師。村の評議会のメンバー。アイヴィーの父親。

△アリス・ハント
 女性。ルシアスの母。村の評議会のメンバー。早くに夫を亡くす。

▽口に出してはならない存在(Those We Don't Speak Of)
 村を取り囲む森に住む「彼ら」。


時代背景、場所
―――――――――――――――――――――
1897年、ペンシルヴァニア州の村。この村は深い森に囲まれて外界から完全に
隔絶している。


作品と宗教
―――――――――――――――――――――
作品を読み解くヒント。または、作品を作る上で参考にしたと思われる聖書の
物語。

・「赤いマーク」~過越し~(出エジプト記第12章)
・「ノア・パーシー」~ノアの箱舟~(創世記第6章)
・「誘惑の木の実と楽園からの追放」~アダムとイヴ~(創世記第3章)
・「都市と農村」~ソドムとゴモラ、ロトの救出~(創世記第19章)

この他、参考になる映画作品↓
「刑事ジョン・ブック/目撃者(WITNESS)」

この作品には、アーミッシュ(Amish)というキリスト教の一派が登場する。
アーミッシュの人々は、農村で穏和な人々がお互いに助け合いながら共同体を
営んでいる。平和主義者で、電気、水道、自動車などを使わない、大地に根ざ
した生活をしている。


小道具―――――――――――――――――――――
色(赤、黄色)。椅子。


Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●愛とジェラシーの物語

おそらく、シャラマン監督の作品のを観た人々の感想や評価は、おおまかに2
つに分かれるだろう。――良いか悪いかだ。

両極端の感想を持つ人々がいるというのは、その作品が力(影響力、魅力等)
を持っていることを表してる。作品についてのリアクションの結果が「おもし
ろかった」または「おもしろくなかった」といった感想になるからだ。

そういった意味で「ヴィレッジ」も両極端な感想を持たれる作品だ。

シャラマン監督はインドで医師の家系に生まれ、幼少期にアメリカ合衆国のフ
ィラデルフィアの高級住宅地に移住している。いわゆる裕福層であり、当然に
キリスト教の教養を持っている。

そういうわけで作品においても、聖書の物語から刺激やヒントを得たと思われ
る要素が数多くみることができる。

これまでのシャラマン監督の作品は、西欧キリスト教の素養や、オカルトネタ
(死者、宇宙人)といったものを巧みに融合させた。そして「ヴィレッジ」で
もそうだが、作品の演出と宣伝にいたるまで計算しつくしている。

つまり、一見すると奇抜な作品に思われがちだが、そうではなく、むしろみん
なが良くって知るいる事柄(欧米人にとってのキリスト教の素養)と、興味を
引く事柄(オカルトネタ)を組み合わせるという、いたってまっとうで地道な
作業を行っているのだ。地味な作業は脚本から演出、宣伝方法に至るまで考え
つくされている。それは「ヴィレッジ」において、自らの過去の作品と似たも
のを期待しているであろう観客の目線を巧みにシフトさせることで、超常現象
の意味と、その力の大きさとすばらしさを表現していることからもわかる。

この「超常現象の意味」についてどう感じるかが、観客の感想を分けるポイン
トだ。

超常現象とは言いかえると「奇跡」だ。聖書には数々の「奇跡」が登場する。
上記「作品と宗教」で紹介した聖書の物語のように、多くの「奇跡」の物語を
読んでみるとよいだろう(聖書は永遠のベストセラーといわれている)。

シャラマン監督の作品は、その結末や内容についてくわしく書くと「ネタバレ」
になってしまうので、ストーリーについてコメントできないが、注目するとよ
いキーワードはこれだ。

・都市と農村
・椅子
・第1世代と第2世代

また、演出上の巧さで光るのは、アイヴィーが視力を失っているという設定に
していることだ。

盲目であるがゆえに、アイヴィーはみんなとは違う方法で世界が見えるという。
作品中でもアイヴィーは中心的キャラクターで、彼女の視線で物語が進行する
ことが多い。例えばある村人は知っている事柄を、アイヴィーがはじめて知る
シーンがある。そのとき、アイヴィーが「あるモノ」を前にしても、すぐにそ
れがなんなのかはわからない。視力を失っているので、なにかの気配は感じて
も、それがなんなのかはわからないからだ。このシーンで観客は完全にアイヴ
ィの立場になりきっているので、彼女と共に「あるモノ」がなんなのかに興味
を持ちつつも、なかなかその正体がわからずにハラハラドキドキするといった
仕掛けになっている。

また、アイヴィーが「彼ら」に遭遇するシーンがある。観客には「彼ら」が見
えていている。しかしアイヴィーはその「気配」を感じていても、見えてはい
ない。そのとき観客は、自分には見えている状況と、アイヴィーの状況の2つ
を感じることができる。こうした2つの視点をもたせることで、そのシーンが
より緊迫したものになっている。

愛によって支えられた勇気と行動力によって、アイヴィーは文字どうり、みん
な(第2世代)とは違う世界を垣間見ることになる。

物語の結末は一応ハッピーエンドではあるのだが、いくつもの余韻を残すもの
となっている。アイヴィーが垣間見た真実の一部と村の未来……。

(「余韻」とは、作品が終わっても、その先に思いが走る(イメージしたくな
る、知りたくなる)ということだ。)

「ヴィレッジ」の超常現象を受け入れられるかどうかが、観客の評価や感想の
分かれ目だろう。

話題性、宣伝、演出等、見どころが満載である。
映画制作にかぎらず、イベントやマーケティングや商品開発や顧客サービスな
どに、とても参考になるだろう。

「ヴィレッジ」は愛の物語である。
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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09/02/2004

「ぼくセザール 10歳半 1m39cm(MOI CESAR 10ANS1/2 1m39)」

リシャール・ベリ監督/フランス/2003年/99分

ぼくセザール10歳半 1m39cm スペシャル・エディション
ジュール・シトリュック リシャール・ベリ マリア・デ・メディロス ジャン=フィリップ・エコフェ
角川エンタテインメント 2005-01-14


by G-Tools

●少年の目線で描いた日常がドキドキの冒険物語になっています。

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
セザールはモルガンの父親探しを手伝ってロンドンへいく。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△セザール・プチ
 男の子。10歳半、1メートル39センチ。ちょっと太め。甘いものが好き。
 
△モルガン
 男の子。セザールの親友。成績優秀。スポーツ万能。

△サラ
 女の子。学校一の美女。セザールが恋心を寄せる。


Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●少年の目線で描いた日常がドキドキの冒険物語になっています。

セザール・プチ。10歳半。身長1メートル39センチ。ちょっと太めで甘いものが大好きな男の子です。

物語はセザール君の目線で進行します。そのため、撮影は一貫して1メートル39センチのカメラポジションで行われました。また、自己紹介や現状の説明や思っことや感じたことは、セザール君本人のナレーションによってなされます。

ナレーションという手法は、登場人物の感情を言葉で説明するので、映像とは相性がよくありません。言葉で説明するのならば、小説のほうがいいからです。

でも、一貫して子供(セザール君)の視点で物語を進めていくこの作品では、ナレーションをうまく使っています。セザール君の心情がナレーションされるので、早い段階で感情移入して子供の視点で世界をみることができるのです。

セザール君の日常での一番の感心事は、同級生で学校一の美女、サラです。

サラのような美人は、モルガンみたいな男の子と仲良しになるのだろう。だってモルガンは勉強もスポーツも優秀だから。それに比べて自分は甘いの大好き(学校のみんなには秘密だけど)だからちょっと太っちょだし、勉強はがんばればそこそこできるだろうけど、あまり成績が良過ぎてもみんなに嫌われるのでふつうぐらいがちょうどいいのだ……。とにかくサラと仲良くなりたい!

そんなセザール君の毎日はちいさな(プチ)冒険の連続です。やがてセザールとサラはモルガンの父親探しを手伝って親には内緒でロンドンへいくことに! 

テレビ業界では、視聴率が取れる企画の上位には必ずといってよいほと「ラーメン」が入っていると言われます。

映画やドラマ作りでは、主に次の3つを使うとヒットしやすいといわれます。それは、子供、動物、病気です。

この3つは、かんたんに観客をうなづかせてしまう魔法の杖です。「子供だから」「動物だから」「病気だから」と言われれば「それじゃしょうがないね」と言ってもらえるのです。

そのため、これら3つのどれかひとつでも題材にすればうまくいくだろうと思いがちです。

でも最近の観客はたくさんの感動作品を観てきていますから、ちょっとした思い付き程度で作られた作品では、感情移入してもらうどころか「わざとらしい」という印象を与えてしまって、そっぽを向かれてしまうことでしょう。

そうは言ってもこの3つのどれかを使えば、そこそこ観客が集まるのでつい使われがちです。

みなさんも、いままで感動した作品を思い浮かべてみてください。いくつか思い浮かんだなかで「子供」「動物」「病気」をメインの題材にしていない作品はありますか? もしあったとしたら、それはとても完成度の高いすばらしい
作品でしょう。

「子供」「動物」「病気」の3つは「オタスケマン」みたいなものです。自力でなんとかできそうもないとき、助けてくれるのです。助けてくれたからといってそれに甘えてはいけません。観客はオタスケマンを使っていることはわっていますから、それだけ作品にたいする目が厳しくなっています。

「ぼくセザール~」は「子供」という「オタスケマン」を使っているというよりも、「セザール君の目線で見た日常」という世界観を確立して物語っていまるといえます。オタスケマンを使っているようで(厳密には使っていると言えますが)、使っていることをほとんど意識させません。それは、作品が完全にセザール君の目線で物語られているためです。

登場人物に「子供」がいても、観客がその目線になりきってしまえば、それは「子供」ではなく、もうひとりの自分となるのです(感情移入)。

「ぼくセザール~」では感情移入のためにナレーションを使っていることは先にお話しましたが、こうしたことは、フランスというお国柄がけっこう影響しているのではないかと思います。

というのは、フランスは情緒的なものや心情風景の美しさに価値を見い出す傾向があります。これは日本と似ている点です。

よく、かつての日本の小学校の作文でよい点をとるには、ある事柄についてどう思ったかをきれいな言葉で書けばよい、といわれます。つまり、そのとき私はどう思ったか、を主観的な言葉で情緒的に美しく書くとよいというのです。

心情風景の美しさに価値があるとするのは、どこの国や地域でもあることでしょう。国や地域によって違うのは、心情風景の美しさを表現する方法です。

日本やフランスでは、登場人物の内語をナレーションすることで、心情風景を表わす傾向があるのです。

そういえば「アメリ」でも、ナレーションがたくさん使われていましたね。

そうそう、今後、青春時代を描いた『ぼくセザール 15歳 ~』、そして大人になった『ぼくセザール 20歳 ~』と3部構成で続編を作るらしいですよ。

(第12回フランス映画祭横浜2004観客賞受賞)

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ぼくセザール10歳半 1m39cm
Richard Berry Eric Assous 山田 蘭
角川書店
2004-07


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09/01/2004

より良くしつづけること(改良)

〈カテゴリ:マーケティング〉

「顧客の満足度向上につながるサービスや製品の改良・改善のため、アンケー
トにお答えください。アンケートに答えてくださった方にはサービス券をもれ
なく差し上げます」

こんな文が書かれたアンケート用紙の記入をお願いされたことはないですか?
たいていはいくつかの項目(店員の対応はいかがでしたか? 製品の使いやす
さはいかがですか? 等」について「よい」「ふつう」「まあまあ」「わるい」
のどれかに丸を付けるといったもので、その他の欄に、お気づきの点やご希望
をご記入くださいという場合もあるでしょう。

こういったアンケートは、アンケートの作り手が想定した答えしか得られない
ことがほとんです。なぜなら、あらかじめ項目をつくると、項目以外の事柄に
ついては知ることができないからです。その他の欄があったとしても、オマケ
程度にとって付けたような欄では、顧客の希望を聞き取ることはむずかしいで
しょう。

また、このようなアンケートでは、ある項目についてなにが「よい」のか「わ
るい」のかわかりません。

そうすると、こういったアンケートは、ある種の「ポーズ」だと思われてしま
うかもれません。
どんな「ポーズ」なのか? それは「我が社では、お客様のご希望に添えるよ
うにしていますからね」というポーズだ。

もう一度、冒頭の文章を注意深く読んでみましょう。
「顧客の満足度向上につながるサービスや製品の改良・改善のため、アンケー
トにお答えください。アンケートに答えてくださった方にはサービス券をもれ
なく差し上げます」

よく読むと、アンケートに答えたからといってサービスや製品の改良・改善を
「する」とは書いていないことがわかります。アンケートをしたからといって、
それは改良・改善のための参考データにするのであって、改良・改善を実行す
るとは書いていないのです。

実行すると言っているのは、アンケートに答えたくれた人にサービス券を差し
上げる、ということだけです。これは「アンケートを実施した」という「形」
=「ポーズ」をとるために思いついたものだと思われてしまうかもしれません。

ここで、前号でご紹介した「DAHON」を例にみてみましょう。

「DAHON」――アメリカ合衆国の折り畳み自転車専門ブランド。
 
DAHONのカタログにはこう書いてあります。

「お求めいただいた後、さらに希望することがございましたら、ご遠慮なく
ご連絡ください。お客さまの満足度を高める為の改良をしたいと思います。」
(引用:「DAHON」 2003年カタログより)

アンケート用紙に記入をお願いするのではなく、客の希望を自由にお知らせ
ください、としています。

そして、実際にDAHONは毎年、自社製品(折り畳み自転車)を改良しつづけて
います。ほとんどの車種に共通する基本的なフレームの形状(中折り式)は変
わりませんが、ハンドル、ホイール、フォーク、サドル、ディレーラー等や、
フレームの細かな形状の改良を繰り返しています。

特に2003年には「バイオロジック・フレーム・ジオメトリー(BIOLOGIC FRAME
GEOMETRY)」と題して、ホイールベース、フレーム・アングル、フォーク、フ
レーム重量配分と、あらゆる点を1から見直し、それを基に設計をやり直し、
車輪のふらつきを無くし、直進性能が向上したフレームを完成させているとし
ています。

こうして2003年に大きな設計からのやり直しをしたにもかかわらず、翌年の
2004年モデルでもまた、さまざまに改良しています。

たいていは、こう思ってしまいがちですよね。つまり、一度大きな改良をした
ら、しばらくはそのままのモデルで売っていけば随分ラクできるだろう――と。

これについて、「DAHON」とは反対の例があります。
第二次大戦後のアメリカ合衆国のクルマメーカーは、売れつづけるために、色
とスタイルという見た目を変えるだけのモデルチェンジを毎年繰り返していま
した。中身はそのままでエンジンもプラットフォームも同ものを10年も使い続
けたのです。売れているときはこうしたやり方でよいと思い込み、新しい時代
の変化に対応できなくなっていました。

そのため、やがてオイルショックによって起こった、クルマを選ぶ基準の変化
に対応することができませんでした。オイルショック後は燃費という基準でク
ルマを選ぶようになり、環境運動が始まったからです。

「DAHON」は折り畳み自転車を毎年改良しています。
毎年改良されると、前年の製品を買った人のなかには、自分が買った製品が
「良くないモノ」だと感じてしまうかもしれません。でも、その年度では最良
のものにしようと考え抜いて発売された「良い製品」であることに変わりはあ
りません。

どんなものにも「完璧」はありません。できることは、いま「最良」だと言える
ものを提供しつづけること
です。そうすれば人々の信頼を得ることができるでし
ょう。なぜなら、あのブランドはより良くしていくために研究して、改良すべき
点を発見・認識して実行する、と実感すれば、応援したくなるからです。応援す
るのは、その対象(ブランド)が行動を通して示した理念や製品を、信頼してい
るから
なのです。
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∇参考になる映画作品
「マイノリティ・リポート(Minority Report)」
 スティーヴン・スピルバーグ監督/2002年/アメリカ
 作品レビューはこちら
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主人公ジョン・アンダートン(犯罪予防局チーフ)は、完璧なシステムは存在
しないが、よりよくしていくための努力と行動を惜しまず、少数意見にも耳を
傾ける、そんなキャラクターです。そういった意味での「理想」を追い求める
ことになるジョン・アンダートンに観客はヒーローの姿をみるのです。

ヒーローはなにも映画の中だけにいるのではありません。映画のヒーロを応援
するように、企業やブランドを応援することだってあるのです。

【まとめとポイント】-------------------------------------------------

●「形だけ」や「ポーズだけ」はすぐに見破られる。

●完璧はない。すべきことは、最良のものを提供しつづけていくこと。
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メールマガジン「ディズニー&ピクサーでみつけようゲスト感動のヒント 」

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