マッハ!!!!!!(ONG-BAK)
プラッチャヤー・ピンゲーオ監督/2003年/タイ
●痛さが伝わる大迫力のアクション!
タイでしかなしえないエンタテインメントアクション傑作
Main Character(主な登場人物)
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△ティン
青年。古式ムエタイを習得。
△ジョージ
ノンプラドゥ村出身の男。バンコク在住。
△ムエ
少女。ジョージと組んでいる。
△ドン
ノンプラドゥ村出身の男。コム・タンの部下。
△コム・タン
密輸団のボス。
▽オンバク
仏像。ノンプラドゥ村の神聖な守り神。
Comments(論評、批評、意見)
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●痛さが伝わる大迫力のアクション!
タイでしかなしえないエンタテインメントアクション傑作
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一、CGを使いません
ニ、ワイヤーを使いません
三、スタンとマンを使いません
四、早回しを使いません
五、最強の格闘技ムエタイを使います
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ストーリーはシンプル。村の守護神である仏像の首が奪われた。村の青年が
都会(バンコク)へ仏像を取り戻しにいく、というもの。
∇キャラクターについて
メインキャラクターのティンの相棒役として、ジョージが登場する。ジョージ
はノンプラドゥ村の出身だが、都会暮らしで村のことには関わりたくないと思
っている。
そのため、同郷のティンが尋ねてきたときも、人違いだと言って追い帰そうと
する。
だがジョージはティンがお金を持っていることを知る。それは村のみんなが少
ないながらも出し合って旅費の足しにしてくれとティンに託したお金だった。
ジョージはティンをだしぬいて、村のお金を賭け事に使おうとする。そのため
ジョージは最初、ティンの信用を得られない。
ジョージはティンが強いムエタイ使いだと知ってなんとか金もうけに利用した
いと思い、仏像を取り戻すのを助けるフリをする。
はじめはこんな調子であったジョージだが、ストーリーが進むにつれて、ティ
ンと危険をかいくぐるうちに、だれかのために、村のためにできるかぎりのこ
とをしようという気になる。
ジョージの気持の変化のきっかけには、ムエの姉の死がある。
ムエは孤児で、姉と2人で生きてきたが、最近は姉とうまくいっていなかった。
ムエはジョージと組んでイカサマ師のようなことをして稼いでいた。ムエにと
っては唯一の家族の姉を亡くしたことで、腐れ縁のように組んでいたジョージ
のことをより一層頼りにするようになる。
こうしたいきさつは、田舎の家族と離れ、都会で孤独のなかにあったジョージ
が、ムエに頼りにされている実感を得ることで、だれかに頼られる嬉しさと責
任を感じ、だれかのためになにかをしたいと思うきっかけとなった。
そこでジョージは、ティンを助けて(村人を助けて)、仏像を取り返そうと決
心する。
こうしたティンの心境の変化と、それに伴う行動の変化が描かれている。これ
はメインキャラクターのティンと対をなして、キャラクターを人間味あるもの
としている。
というのは、ティンのキャラクターは最初と最後ではほとんど変わらない。
正義のヒーローであるティンは、常に信心深く、村人を救うために戦う。
変化しないキャラクターというのは観客に感情移入されずらい。そこで、相
棒のジョージに人間味溢れるキャラクターの役割を与えることで、観客の心
をしっかりつなぎとめておくことができるのだ。
ティン →アクション担当
ジョージ →人間味担当
アクション作品でありながら、キャラクターの役割配分をしっかりしているの
もよい。
アクションが売りの作品でも、最初から最後までひたすらアクションシーンで
は観客も飽きてしまうからだ。
とはいっても、「マッハ!!!!!」のアクションは迫力満点だ。
∇アクションについて
格闘シーンで痛さが伝わってくる。これはすごいことだ。最近の映画はCGなど
の映像効果を用いてアクションシーンを派手に見せようとする傾向がある。
だが、アクションシーン、特に格闘シーンに関しては、機械的に手を加えれば
加えるほど、無機質で迫力のない映像になってしまうことがよくある。
なぜなら、アクションシーン(格闘シーン)は人間の身体が主役だからだ。コ
ンピュータを使った映像効果は、身体とは対極にある、脳がつくりだしたもの
なのだ。
そもそもアクション(格闘)を映像としてフィルムなりデジタル信号なりにお
さめて、これを劇場で上映することで、身体=アクションを表現することは難
しい。
これは、格闘技の試合を観るには、やはり試合会場に足を運んで、生で観るの
が一番だ、という格闘ファンが多いのを考えてみればわかりやすいだろう。
にもかかわらず「マッハ!!!!」のアクション、格闘シーンからは痛さが伝わっ
てくる。
本来、映像では伝わらないとされるもの――匂い、感触、感情――をいかに伝
えることができるか。どれかひとつでも伝われば、その作品は際立って「味」
のある作品となる。
タイでも、CG技術を用いた映画作品がいろいろと作られている。だがこの作品
ではそれらを一切使っていない。
タイでしかなしえない題材・場所を選んでいる。それはムエタイ、バンコク、
トゥクトゥク(タクシー)のことだ。
トゥクトゥクのカーチェイスシーンをいままで観たことがなかった。アメリカ
映画のカーチェイスシーンを見慣れた人にとっては、新鮮に映るだろう。
(もし、タイ・バンコクなのに、アメリカ映画の真似をして普通の車でカーチェ
イスをしたら……。
真似をすることは悪いことではないが、真似する場所を間違えてはせっかくの
題材と地の利が台無しになってしまう。)
主人公ティンのアクションは必見だ。車を飛び越える跳躍力。トラックの下の
僅かな隙間をすり抜ける身体の柔軟性。人の頭や肩などを踏み場にして空中を
走って行くバランス感覚。剣術、棒術の巧みさ。ヒジ、ヒザを駆使したアクシ
ョンとその破壊力。そしてなんといっても目にもとまらぬ蹴りのスピード。
早回しを使っていないというのに、あのスピードはありえない! と思えるほ
どだ。
酒場の椅子やテーブルや壁で殴られるティン。椅子やテーブルはバラバラに粉
砕される。この迫力には圧倒される。
思いもしない角度や方法で相手を蹴る。突進してくる相手を一瞬、一撃で倒す
ヒザ蹴り。
本物のアクション映画がここにある。
ちなみに主演のティン(トニー・ジャー※)は日本人タレントでいうと、TOKIO
の国分太一に似ている。両者には誠実そうなキャラクターイメージがあるので、
日本のテレビ番組に慣れ親しんだ人は、近親感を持って観れるだろう。
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※ トニー・ジャー
スタントマン出身。10歳より古式ムエタイとスタントを学ぶ。テコンドーや
剣術も習得。「マッハ!!!!」はでは武術指導もつとめている。
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∇参考・用語引用図書
「ストーリーアナリスト」
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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Comments
マッハと対極のタイ映画「地球で最後のふたり」も明日から公開です
Posted by: タイで想う日々 | 07/30/2004 19:04
I constantly spent my half an hour to read this blog's articles or reviews every day along with a cup of coffee.
Posted by: Best Dating Sites | 01/13/2015 11:34