« わかりやすく~4分以内で説明せよ~「モンスターズ・インク」 | Main | ブラック・ダイヤモンド(Cradle 2 The Grave) »

スクール・オブ・ロック(THE SCHOOL OF ROCK)

スクール・オブ・ロック スペシャル・コレクターズ・エディション
ジャック・ブラック
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
2004-09-17


by G-Tools
リチャード・リンクレイター監督/2004年/アメリカ/110分

●ロックギタリスト、生徒、親、教師、友人、登場人物それぞれの想いがきち
 んと描かれている

〔1〕ログライン(Log line)ストーリーを述べてある一文
―――――――――――――――――――――
売れないロックギタリストが学校の代用教員になる。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
ロック魂に溢れたギタリストのデューイは、自分が作ったバンドを首になり、
居候している友人宅でも、滞納している家賃を払わないなら出ていってくれと
言われる。そんなときデューイは友人宛にかかってきた代用教員のオファーの
電話を偶然受ける。そして友人のフリをして代用教員になりすまして、楽して
給料を頂こうと計画する。そのうち、生徒達に音楽の才能があることを知り、
ロックバンドを結成してオーディションで優勝をめざす。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△デューイ・フィン
 ロックギタリスト

△ネッド
 代用教員。デューイの友人。


〔4〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●ロックギタリスト、生徒、親、教師、友人、登場人物それぞれの想いがきち
 んと描かれている

ストーリーはシンプルでわかりやすい。
「売れないロックギタリストが代用教員として子供達にロックを教える」
というものだ。

・シンプルすぎる
・ありふれている
・お決まりのストーリー展開で先が読める

それでもヒットするのはなぜか? それには大きな理由がある。繰り返し語ら
れるストーリーの基本形(型)の数はそう多くはない。繰り返し語られ続けて
きたストーリーには、古今東西さまざまな人々の基本的な欲求や思い入れが詰
まっているからだ。

子供の教育。親は「子供には最高の教育を!」と思うものだ。特にアメリカ合
衆国では、親は子供の教育に熱心だ。学校によってさまざまな教育方針があり、
また教師によってもさまざまな教育方法がある。そこで、自分の子供にできる
かぎり最高の教育を受けさせたいと考え、理想的な教育を行っている学校の近
くへわざわざ引っ越す人もいる。

アメリカ合衆国の大都市では人種が異なったり貧富の差があったりする様々な
コミュニティが隣接していることが多い。住んでいる地域によって人種や経済
的階層が比較的はっきりと分かれており、質の高い教育を受けさせたいと思う
ならば、金銭的に裕福な層が多く住む地域の進学校に通わせる必要があるとい
う。

例えばアメリカンドラマの「ビバリーヒルズ高校白書」では、学校新聞の編集
長のアンドレア・ザッカーマンが車で20~30分離れたところからビバリーヒル
ズの学校に越境通学している。彼女はアイビーリーグ(※1)に進学する希望
をもっているので、ビバリーヒルズにいるおばあさんかだれかと一緒に住んで
いることにして越境通学をしている、という設定だったはずだ。

アメリカ合衆国に限らずどこの国でも子供の教育は大事だと考えている親がほ
とんどだろう。

教育を通して、子供のタレントを発見して、それを最良の形で伸ばしていきた
い一方で、なんでもそつなくこなす幅広い適応性や柔軟性もほしい。ただひと
つたしかなことは、子供にとって最高の教育を受けさせたいという思いだ。

思いは強くても、さてどういう基準でどのように子供の習熟度等を見極めれば
よいのかということになると、テストの点数や偏差値に頼らざるを得ないとい
う場合が多いようだ。テストは子供の理解度や習熟度を測ることで、その子供
にとってどのような教え方が合っているのかを検討する材料のひとつにはなる
と思うが、実際には、教師が親への説明(これだけ学習させました)のために
テストを受けさせている場合が多いのかもしれない。

教育についての問題が山積みの中で、一見するとはちゃめちゃだが、熱いハー
トを持ち、新しい風を吹かせてくれる人物(スーパーヒーロー)の登場を待ち
望む人もいるだろう。こうした欲求に応えたのが「スクール・オブ・ロック」だ。

ロックギタリストのデューイは自分の都合のため、代用教員になりすまして、
学校のクラスを担任する。そもそも自己のため(給料という金銭目的)の行動
に、すぐにデューイに感情移入することはむずかしい。

やがて生徒の幾人かが楽器が演奏できることを知ったデューイは、ロックバン
ドオーディションで優勝するためにバンドを結成する。これも自己のため(優
勝してデビューするため)だが、子供達にロックの歴史や演奏方法を教えてい
いくうちに、ロックの魂を子供達に逆に教えられたりと、お互いに学び合って
いく。

観客にしてみれば、デューイがいつニセの代用教員だとバレるのかとハラハラ
する(秘密の共有)ので、子供達とロックを通じて心が通じ合いはじめても、
この先どうなるのかと気になる。

観客の興味を引っ張りつつ、今度は教師の苦悩も描かれる。それは学校の女校
長の苦悩だ。保護者会で教育方針や教育内容などについてきちんと説明しなく
てはならない。どんな些細な問題でも起こらないように細心の注意を払わなく
てはならない。そんなプレッシャーの毎日で、若い頃はひょうきんな人とみん
なに思われて本人もそれを受け入れて明るく楽しく毎日を送っていたにもかか
わらず、校長にはユーモアは求められていないので、みんなには「堅物」と思
われている。同僚の教師からも学校の外での付き合い(食事など)に誘われた
ことは一度もないという。

デューイのちょっと(?)変わった教育方法や、自由奔放な人柄に、あたらし
い教育者像をみた校長は、保護者会にデューイを誘い、保護者の前で教育観を
話してほしいというまでになる。

だがデューイがニセ教員だとバレて、校長も生徒もがっかりする。だが生徒た
ちはデューイから教わったことを思い返して、教員でもなんでもなくなった、
バンドを首になって部屋を追い出されそうになっているただのロックギタリス
トのもとへ集まるのだ。

デューイも生徒たちの熱い思いと行動に心打たれて、ロックバンドオーディシ
ョンに出場する。

こういった作品では、やはり主人公のキャラクターが命だ。デューイはいわゆ
るろくでなしと言われるようなロックギタリストだったが、本人さえ気がつい
ていない生徒の才能をいち早く発見してそれをすばらしいものだと認め、ほん
の少しの勇気をもって一歩踏み出せばその才能を伸ばして花開かせていくこと
ができることを教える、教師という枠にとらわれないすばらしい人になってい
くのだ。

デューイがクラスの生徒全員にそれぞれの適性に合わせて重要な役割を与える
ところが良い。
バンドはボーカル、リードギター、ベース、キーボード、ドラムだけではなく、
それを支える裏方(マネージャー、セキュリティ、スタイリスト、照明・舞台
映像効果制御等)によって構成されている。

そして、たとえ途中からでも、裏方のスタッフの中に、歌の才能がある者がい
たとわかれば、すぐに、最も能力を発揮できるポジションを与えるのだ。

すばらしい歌の才能があることがわかった女生徒は自分が太っているから人前
で歌えないとデューイに話すシーンがある。デューイは、そんなことは関係な
い、君はだれもがうらやむすばらしい才能を持っているんだ、おれをみてみろ、
おれは太っちょだが、たべるのが好きなのでダイエットなんかしない、それで
もおれがステージでロックを歌ってギターを弾けばみんなおれにメロメロさ!
と勇気づけるのだ。

自分の弱い面や一見するとマイナスに見られがちなところをさらけ出して相手
を勇気づけるこういったシーンは、観客がキャラクターに感情移入する最も効
果的な方法だ。

「もくでなしのロックギタリスト」というマイナスから、自分の弱さやマイナ
スにみられがちな面をさらけだして生徒を勇気づける心やさしく熱い魂をもっ
た人(教師)」というプラスへ一気にメーターが振り切れるシーンだ。

他に、デューイが居候している部屋の主で、友人でもあるネッドも重要なキャ
ラクターだ。ネッドもかつてはバンドを組んでいたが、いまは代用教員として
働き、市長秘書の恋人もできた。バンドをやめたのは、自分には才能がないか
らだと語り、デューイの熱いロック魂をうらやましいと思いつつ、恋人にせか
されて、複雑な心境ながらも、家賃が払えないのなら部屋を出ていってほしい
デューイに告げるのだ。

そんなネッドもロックや音楽の魂を完全に捨て去ったわけではなく、陰ながら
デューイを支える熱き友情の持ち主なのだ。

ロックギタリスト、生徒、親、教師、友人、登場人物それぞれの想いがきちん
と描かれている。

だれと観に行ってもたのしめる、ヒットするのが大いに頷ける作品だ。

エンドロールまでたのしめるので、最後まで席を立たないほうがよい。
(私が見た回では、エンドロールが終わるまで席を立つ人はだれもいなかった)

※1アイビーリーグ
  アメリカ合衆国の東海岸にある8つの優れた学校の総称。ブラウン大学、
  コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペン
  シルバニア大学、プリンストン大学、エール大学。

メルマガあります。このブログの映画レビューの情報も受信できるよ。

基本3分!映画レビュー わかりやすい映画案内

メールアドレス


Powered byまぐまぐ

メルマガの詳細はこちらをクリックでどうぞ

人気blogランキングに参加しています。人気の映画ブログがわかります。
ここまで読んでくれてありがとう☆
Click,thank you ⇒ 人気blogランキングへ
 

スクール・オブ・ロック
サントラ スクール・オブ・ロック ザ・フー ノー・ヴァカンシー ドアーズ
ワーナーミュージック・ジャパン
2004-04-07


by G-Tools


« わかりやすく~4分以内で説明せよ~「モンスターズ・インク」 | Main | ブラック・ダイヤモンド(Cradle 2 The Grave) »

Comments

創造力も感じていますね。

Posted by: カナ | 09/28/2008 09:41

I seriously love your site.. Very nice colors & theme. Did you make this amazing site yourself? Please reply back as I'm planning to create my own blog and would like to know where you got this from or exactly what the theme is named. Kudos!

Posted by: best dating sites | 01/13/2015 06:20

magnificent points altogether, you simply gained a new reader. What would you suggest about your post that you made some days in the past? Any sure?

Posted by: protector camera ggs | 03/31/2015 03:57

When I initially commented I clicked the "Notify me when new comments are added" checkbox and now each time a comment is added I get several e-mails with the same comment. Is there any way you can remove people from that service? Thank you!

Posted by: kline china runner | 04/03/2015 19:14

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference スクール・オブ・ロック(THE SCHOOL OF ROCK):

» スクール・オブ・ロック [utagenome]
「スクール・オブ・ロック」を観てきたぜ。 もう散々言い尽くされているけども、ヒジョーにベタなストーリーかつご都合主義満載。だけどもコレがまた肩の力を抜いてヒジョ... [Read More]

Tracked on 05/10/2004 00:31

» スクール・オブ・ロック [★映画覚書★  女子大生gajinのやさぐれ映画日記。『π』 UP!]
ジャック・ブラック最高!!としか言いようのない映画。 もし、あなたが、おなかをボリボリ掻くでぶが嫌いだとか もし、あなたが、色白で毛深いケダモノ系の... [Read More]

Tracked on 01/01/2005 01:49

» スクール・オブ・ロック [NO MOVIE, NO LIFE]
これがねえ、感動した! マジで。。。 なんとなく、なんとなくだけどTVとかの予告で観たときって、アヤシかったのよねぇ。 なにがって、子供と動物を使った映画って... [Read More]

Tracked on 01/01/2005 09:34

» 映画鑑賞感想文『スクール・オブ・ロック』 [さるおの日刊ヨタばなし★スターメンバー]
さるおです。 『スクール・オブ・ロック』を観たよ。かなり笑える。ものすごくいい映画。 監督はリチャード・リンクレイター。 主演はジャック・ブラック、最高〜♪他の... [Read More]

Tracked on 01/24/2005 20:14

» スクール・オブ・ロック [kitajan.net]
この映画の主人公を演じるジャック・ブラックは個性的な役者の1人に数えることが出来るだろう。 彼が同じく主演した「愛しのローズマリー」はマイ・フェイバリッドの1つ... [Read More]

Tracked on 03/30/2005 18:04

» スクール・オブ・ロック [kitajan.net]
この映画の主人公を演じるジャック・ブラックは個性的な役者の1人に数えることが出来るだろう。 彼が同じく主演した「愛しのローズマリー」はマイ・フェイバリッドの1つ... [Read More]

Tracked on 03/30/2005 18:05

» スクール・オブ・ロック [kitajan.net]
この映画の主人公を演じるジャック・ブラックは個性的な役者の1人に数えることが出来るだろう。 彼が同じく主演した「愛しのローズマリー」はマイ・フェイバリッドの1つ... [Read More]

Tracked on 03/30/2005 18:21

» 「スクール オブ ロック」 ジャック・ブラックの魅力爆発!! [映画の話をしませんか?]
「スクール オブ ロック」 この映画を観て、面白くないという人っているかなあ? [Read More]

Tracked on 05/14/2005 09:08

» スクール・オブ・ロック [kitajan.net]
この映画の主人公を演じるジャック・ブラックは個性的な役者の1人に数えることが出来るだろう。 彼が同じく主演した「愛しのローズマリー」はマイ・フェイバリッドの1つである。 だがこのDVDの特典映像を見る限り、彼は少々気むずかしい人物でもあるらしい。 「ブルース・オールマイティ」などで知られるジム・キャリーもその1人だ。 やはり演技等を突き詰めていくタイプの役者だと、いろんな所で神経質になるのは致し方ないことなのかも知れない。 話が少々横道に逸れたが、このDVDは特典映像が非常に充実していて楽しかった。... [Read More]

Tracked on 05/16/2005 01:24

» スクール・オブ・ロック [kitajan.net]
この映画の主人公を演じるジャック・ブラックは個性的な役者の1人に数えることが出来るだろう。 彼が同じく主演した「愛しのローズマリー」はマイ・フェイバリッドの1つである。 だがこのDVDの特典映像を見る限り、彼は少々気むずかしい人物でもあるらしい。 「ブルース・オールマイティ」などで知られるジム・キャリーもその1人だ。 やはり演技等を突き詰めていくタイプの役者だと、いろんな所で神経質になるのは致し方ないことなのかも知れない。 話が少々横道に逸れたが、このDVDは特典映像が非常に充実していて楽しかった。... [Read More]

Tracked on 05/30/2005 22:05

« わかりやすく~4分以内で説明せよ~「モンスターズ・インク」 | Main | ブラック・ダイヤモンド(Cradle 2 The Grave) »