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05/29/2004

あずみ

cover
北村龍平監督/2003年/日本/
原作:小山ゆう『あずみ』(小学館「ビックコミックスペリオール」掲載)

●いままでだれもやったことがない時代劇の撮り方をしている
 主人公あずみの苦悩や戸惑いと、行動のつながりがしっくりしない

1〕プレミス(Premise)
   ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア

―――――――――――――――――――――
女刺客が活躍する


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
日本の戦国時代。孤児のあずみは爺に拾われ、仲間とともに刺客の訓練を受け
る。やがてあずみ達に指令が下る。あずみは戦いながら成長していく。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△あずみ
 少女。孤児から爺に拾われ、刺客となる訓練を受ける。

△うきは。ひゅうが。あまぎ。ながら。/ なち。ゆら。あわ。ひえい。こもろ。
 少年たち。あずみと共に爺のもとで刺客となる訓練を受ける。
 
△爺[小幡月斎]
 あずみたちを最強の刺客に育て上げる。

△やえ
 大道芸人一座の娘。

△飛猿
 甲賀忍者。井上勘兵衛に仕える。

△最上美女丸
 あずみを標的とする。

△浅野長政
 大名。近江の人。旧豊臣家臣。関ヶ原の戦いでは徳川方に加勢する。

△加藤清正
 武将。尾張の人。豊臣家五奉行の一人。関ヶ原の戦いでは徳川方
 につく。豊臣家の安泰を図る。

△井上勘兵衛
 加藤清正の側近


〔4〕バックグラウンド
―――――――――――――――――――――
西暦1600年、日本――。関ヶ原の戦いで東軍(徳川家康)が勝利する。旧豊臣
家臣の石田光成が率いる西軍は敗れるが、豊臣秀頼の成人を待って、再び蜂起
しようとしていた。
徳川家康の側近である高層・南光坊天海は、こうした西軍の有力大名を抹殺し
ようと計画する。そのために最強の刺客(戦士)を育てる役目を小幡月斎に与
える。小幡月斎は山にこもり、最強の刺客を育てる。


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
いままでだれもやったことがない時代劇の撮り方をしている。
主人公あずみの苦悩や戸惑いと、行動のつながりがしっくりしない。

一緒に訓練を積んで育った仲間を斬ってまで、果さなければならない使命があ
る。しかし、あずみは、「目の前に助けを必要としている人を助けることがで
きないなんて……」というふうに、使命について疑問を抱く。

使命を果すための戦いの中で傷つき、動けなくなった仲間にとどめを刺そうと
する爺に反対するあずみが、敵に捕まった爺を助けにいく。

最強の刺客となる訓練を積んだあずみは、当然に敵の数や戦力を冷静に見極め
るはずだ。だが、あずみは200人の敵にたった一人で立ち向かっていく。

映画作品では、あずみと爺の絆がしっかり描かれていない。そのため、使命を
果すために一見冷酷に見える爺の、内面の暖かさや、やさしさが観客に伝わら
ず、爺は南光坊天海の指令を実行する冷酷な男と映ってしまう。

訓練の最後の試練として、「いちばん仲のよい相手と斬り合え」というのは、
あずみたちに後戻りできない覚悟を決めさせるものだ。孤児だった少年少女た
ちは、山奥で外界と接することなくひたすら刺客となる訓練を積んできた。刺
客以外で生きる術もたず(知らず)、小さい頃から使命の重大さを教え込まれ
てきたことに加え、最終試練として、いちばん身近な仲のよい仲間を斬らなけ
ればならないというのは、使命の意義と重大さと必要性を身をもって感じさせ
る最も効果的な方法のひとつだ。

そんな経験をしたあずみだが、使命について疑問を持つ。大道芸人一座の娘・
たえに出会うことで、剣をふるう以外の道もあるのではないかと考える。だが、
共に命をかけて戦っている仲間を助けるために自分にできることは剣をふるう
ことだと改めて思うあずみであった――。

敵陣で200人と戦い、あずみは爺のもとへたどり着く。爺は亡くなる前に「使
命はもうない。あずみの好きなように生きろ」といった意味のことを言う。だ
が、その後もあずみは使命を果すため、加藤清正を討つ。そして次は真田
(※1)だと言う。

映画作品の場合、主人公は最初と最後では変化しているほうがよい。主人公が
様々な困難や試練を乗り越えることで、最初とは違った考え方や行動をとるよ
うになる、というのが基本だ。あずみは、途中でいろいろと悩み考えるが、最
後にはまた使命を果すことにする。

これは、それまでは疑問に思っても、言われるままに使命を果してきたが、こ
れからは自分の意思で使命を果していくことを決意した、ということだろう。

こうしたあずみの内面と行動は、原作『あずみ』ではとてもわかりやすくじっ
くりと描かれている。
映画作品では、ある程度の時間内に収めなければならないので、船宿街の戦い
のシーンにいたる経緯など、原作とは違った個所が多々ある。

こうしたことが、あずみが200人の敵に立ち向かって行ったことの動機が弱く
感じる原因のひとつだ。

また、加藤清正を暗殺するために敵陣に乗り込む爺と二人の刺客の少年は、敵
に囲まれて大苦戦する。加藤清正陣では爺たちのことを調べて、周到に備えて
いただろうことは容易に想像できるはずだが、いくら隠密任務といっても、爺
を含めて3人で敵陣に乗り込むのだ。

作品の見せ場(200人斬り)を用意するために、少し無理をして状況を作り上げ
たといった印象だ。

北村龍平監督の作品はカメラワークが特徴的だ。カメラが被写体に寄って行っ
たり、俳優の動きに連動して激しくカメラが動いたりする。カメラが360度円
を描くように回って撮影したシーンもある。従来の時代劇では観た事がない映
像である。おそらく日本の映画撮影で、カメラをぐるぐる回して撮影すると言
ったら、撮影の仕方もわからない奴、と言われてそれまでだったろう。だが北
村龍平監督はオーストラリアでの映画学校へ行き、自主制作映画「VERSU
S/ヴァーサス」
で海外で注目を浴びた。現在は、米ミラマックス社と契約して、
ハリウッド進出作を準備中だという(2003年5月現在)。そんな監督だからこそ、
日本映画でいままでだれもやろうとしなかった撮り方で時代劇を制作すること
ができたのだろう。

原作の『あずみ」がそうであるように、映画作品「あずみ」も、従来の時代劇
とは違う。例えば「水戸黄門」は、世の中の悪をお上が成敗してくれる、とい
う、世界中どの時代や地域にもみられる、その時の支配者に都合のいい娯楽作
品だ。「あずみ」はあずみというひとりの少女の生き方を描いている。原作で
は、あずみの剣さばきのかっこいいところをたくさん描きたいという思いが大
きいという。

こうしたことから、従来の時代劇ファンを取り込むことは最初から狙っていな
い。狙いは比較的若い、従来の時代劇をあまり観ない人達だ。従来の時代劇を
あまり観ない人達というのは、日本以外の国々の人達と言いかえることができ
る。
 
海外で注目を集めるソードアクションを、いかにかっこよく撮るか。そのため
のカメラワークだ。あずみの剣のシーンではカメラワークや編集やCGを使っ
てあずみがいかに並外れて「素早い」かを観ることができる。アクションシー
ンのカメラワーク等は独特のものがある。北村監督の強みである。しかし、360
度カメラが動くというのはあまり必然性がないだろう。また、チャンバラの音が
わざとらしく聞こえる。

あずみ役の上戸彩(※2)については、あずみの天真爛漫な雰囲気をよく表現し
ている。上戸彩以外であずみ役をできそうな女優はあまり思いつかない。北村
監督は早い段階から「あずみ役には上戸彩を」と言っていたという。

海外では上戸彩は受け入れられるだろうか。欧米ではアクションを売りとする
女性主人公は、肉体的にタフでたくましいタイプが人気だ。(例「トゥームレ
イダー」のララ・クロフト)。上戸彩はアジアで人気のある線の細い印象の少
女だ。細い腕で刀を振り回して侍を次々斬り伏せるというのを、どのように感
じるだろうか。アクションヒロインについての東洋的な魅力と西洋的(欧米的)
な魅力の感じ方の違いが最も表れそうなところである。

あずみの、剣さばき以外の、性格や内面の部分については、原作にみられた
「駒」のように、小道具を使ってみてもよかっただろう。

作品のテンポについて。「あずみ」はアクションシーンがメインだ。アクショ
ン以外のシーンが、アクションシーンの舞台設定のために駆け足で展開してい
く。観客のスピードとストーリーの展開とのスピードがうまくかみ合っていな
い。ストーリー展開のテンポは、原作のある作品では特にむずかしいところだ
ろう。
パワーに溢れている作品だが、緩急のテンポをじっくりコントロールすること
が必要だ。
 
「たそがれ清兵衛」のファン層を取り込むことをはじめからまったく狙っていない。
そのため、日本国内でのヒットは難しいだろう。

マーケティング面では、「たそがれ清兵衛」とは真逆の方向性をもっている。
「たそがれ清兵衛」……日本国内の固定ファン狙い。
「あずみ」    ……日本国外狙い。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
(※1)真田
 真田昌幸
 武将。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に属す。関ヶ原の戦いでは、
 はじめ徳川方につく。途中で家康にそむく。
 
 真田幸村
 武将。真田昌幸の次男。関ヶ原の戦いでは豊臣方(石田光成)につく。
 
(※2) 上戸彩
 女優、歌手、CMタレント。1985年東京生まれ。
 「あずみ」で映画初出演・初主演。
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