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05/16/2004

ぼくんち

cover
「ぼくんち」
阪本順治監督/2002年/日本/
原作:西原理恵子(小学館「週刊ビックコミックスピリッツ」)

●日本の「家族」を描いたホームドラマ

〔1〕ログライン(Log line)(ストーリーを述べてある一文)
―――――――――――――――――――――
離れ離れになっていた家族が再会して、またそれぞれの道を歩んでゆく。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
うらぶれた水平島のうらの港に住む一太と二太の幼い兄弟のもとに、母の今日
子が家出から半年ぶりに帰ってきた(父はもとからいない)。離れて暮らして
いたという姉の、かの子を連れてきたのだ。母はまたすぐいなくなり、姉弟の
3人で暮らし始める。やがて家が他人に売られてしまい、かの子はピンサロで
また働きはじめ、アパートを借りて3人で住む。一太はかの子の世話にならず
にひとりで生きたいと、コウイチのもとで働く。二太は親戚のおじさんのもと
へ引き取られることになる。
 

〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△かの子
 20代前半。母の今日子に連れられ、水平島に帰ってくる。
 
△一太
 小学校3~4年ぐらい。
 
△二太
 4~5歳ぐらい。

△コウイチ
 町のチンピラ
 

〔4〕キャラクター・ディベロップメント
―――――――――――――――――――――
「ぼくんち」では個性あるキャラクターが多数登場する。

▽猫ばあ
 野良猫に囲まれて神社の裏に住んでいる。猫のようにたくさん子供を産んだ。

▽鉄じい
 川のほとりの小屋に住んでいる。鉄くず業。

▽末吉まもる
 男やもめ。コウイチの下請け仕事で3人の子供と暮らしている。

▽安藤くん
 刑務所を出たり入ったりしている。二太と友達。

▽さおりちゃん
 二太の幼馴染。

▽飲み屋(スナック)の女
 女はほんとうは外人になりたかった。なぜなら外国にたくさん行けるからだと
 いう。

▽中華屋「新庄」
 町で唯一の中華屋なので繁盛している。

 
〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
日本の「家族」を描いたホームドラマ。

家族の一員それぞれが、新たな決心をして新たな一歩を踏み出す様子を描いて
いる。そのために作品の視点が、かの子、一太、二太、と入れ代わりつつ物語
が進んでいく。その過程で、水平島の個性的な登場人物がたくさん登場する。
 
島の住人はみな個性が強く、普通っぽい人はいない。そのことについて、中華
屋の娘が「変だ変だと思っていたけど、やっぱりこの町の人達はみな変だ」と
いった意味のセリフがあったり、かの子の女友達が「普通っていったいなんだ
ろう」といった意味のセリフがあったりする。

観客からすれば、水辺島の住人はみな変わっていて個性が強い。濃いキャラク
ターがたくさん登場して、ショートコント風に笑いを提供して、ふと格言っぽ
い事を言ったりする。かの子と一太と二太のそれぞれの様子を描きつつ、濃い
キャラクターが多数登場すると、作品の基礎となる一本線が見えなくなってし
まう。

基礎となる一本線とは、たとえば、主人公の「モチベーション」「行動」「ゴ
ール」といったものだ。主人公がどういう人物で、どのような事柄が問題にな
っていて、その問題について主人公はどうしたいのか、といったことがはっき
りしていると、観客はストーリーの方向について迷わずにすむ。

「ぼくんち」の前半ではまだ、かの子がなぜ水平島に帰ってきたのかというこ
とが明らかにされない。前半では作品の視点は一太と二太であるからだ。(二
太がカメラの向こうの観客に向かって状況を説明したりするシーンもある)。
 
観客は最初、一太か二太に焦点を合わせればよいのだと思う。だが、徐々にか
の子にも視点が移ってきて、かの子が島に帰ってきたことにはなにか目的があ
りそうだ、ということがわかってくる。視点が複数あることで、家族の一員そ
れぞれの成長を描くことができるのだが、基礎となる一本線がぼやけているた
めに、観客は落ちつかない。ストーリーの世界感に惹かれつつも、すんなり入
って行きにくいだろう。

たとえば「海辺の家(LIFE AS A HOUSE)」での一本線とは、「新しい家を建
てる」ということだ。ばらばらだった家族が、家を建てることを通してひとつ
になっていくのだ。

また「リロ アンド スティッチ(Lilo&Stitch)」での一本線とは、「新た
な家族を得る」ということだ。友達がいなくてさびしい思いをしていた女の子
が宇宙人を迎えて新しい家族を得るのだ。

作品の舞台は、うらぶれた水平島の貧乏人が住むうらの港の町だ。昭和の匂い
が色濃く残るこの町で貧しいながらもたくましく生きるかの子たち――。お世
辞にも品行方正とは言えない町の個性的な住人たち――。動物の死骸ひとつ落
ちていない現代日本の町にあって、こうした水平島の町の様子は異質(変)に
映るだろう。だが、水平島のような町は一昔前の日本にはあたりまえに存在し
ていたのだ。学校の先生の評価(通信簿)だけで、ある子供の人となりが決ま
ってしまうという世の中ではなく、町のばあちゃんやじいちゃんやチンピラの
兄ちゃんから「よくやった、えらいぞ」といった言葉がかけられる町では、様
々な価値観(考え方)があることを知ることができる。

そういった意味で「ぼくんち」は個性豊かな(変な)人たちを多数登場させる
ことで、ほんとうに「変」なのは、猫ばあや鉄じいや安藤くんたちを変と思う
ほうなのかもしれないよ、というメッセージがあるのかもしれない。

昭和の高度経済成長期前後の町並みを再現したテーマパークが日本各地に
いくつかある。昔を懐かしく思う気持ちはだれにもあるだろう。たとえその当時に
自分がどんなにたいへんな思いをしたとしても、たいへんであればあるほど、
記憶に強く残り、懐かしさと入り混じり、なんとなく「昔はよかったよ」とい
った気持になることもあるだろう(当然、昔に大変な思いをして二度と思い出
したくないという人はたくさんいる)。このように過去を懐かしみたい、過去
を美化したい、という人たちが「ぼくんち」を観ても、期待していたようなも
のは得られないだろう。

観終わると、あっさりした素うどんが食べたくなる作品だ。
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ぼくんち ビッグコミックス 西原 理恵子 (著)
ぼくんち サントラ
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