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05/10/2004

ブラック・ダイヤモンド(Cradle 2 The Grave)

cover
「ブラック・ダイヤモンド(Cradle 2 The Grave)」
アンジェイ・バートコウィアク監督/2003年/アメリカ/101分/
ワーナー・ブラザーズ映画/

●複数のアクションシーンを交互につなげる派手な演出をしている

〔1〕ログライン(Log line)(ストーリーを述べてある一文)
―――――――――――――――――――――
ブラックダイヤモンドを巡って格闘技の達人である諜報員と強盗グループと組
織のボスが戦いを繰り広げる。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
強盗グループのリーダーであるトニー・フェイトは金庫を破り、ブラックダイ
ヤモンドを手に入れる。ブラックダイヤモンドを追う台湾諜報局員ダンカン・
スーと、ブラックダイヤモンドを手に入れようとする組織のボスであるリンが
トニーたちを追う。愛娘をリンに誘拐されたトニーは、スーと組んでブラック
ダイヤモンドを探し出そうとする。
 

〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ダンカン・スー
 台湾諜報局員(捜査官)

△トニー・フェイト
 強盗グループのリーダー

△リン
 ブラックダイヤモンドを狙う組織のボス
 

〔4〕・1 セット・アップ
―――――――――――――――――――――
場所(Place)……トニーたちが地下鉄の駅に姿を現す。
        ……トニーの仲間が金庫のあるビルの受付に姿を現す。
        ……スーが高層ビルの屋上に姿を現す。

トニーたちが金庫を破ろうとしており、スーがそれを阻止しようとしている。
セットアップでトニーたちの強盗グループメンバーの各キャラクターが紹介さ
れ、その仕事ぶりとともに、トニーたちがブラックダイヤモンドを奪うことで
ストーリーがはじまる。
 
スーは高層ビルの屋上から両腕だけを使って飛び降りるように階下に移動する。
これは、スーが並外れた身体能力を持っていることを知らせている。

オープニングシーンに派手で強烈な映像を流している。これによって、観客は
これからもっとすごいシーンが出てくるのではないかと期待する。いわゆる
「つかみ」をかなり意識している。

 
〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
複数のアクションシーンを交互につなげる派手な演出をしている。

「ブラックダイヤモンド」のアクションシーンは主に、カットバック技法(交
互モンタージュ)=〔別の場所で同時に行われているそれぞれのカットを、交
互に並べること〕を使って構成している。

2~3の場所と登場人物で行われているアクションシーンを交互につなげて、
スピード感と緊張感を出すことを狙ったものだろう。

11歳で中国武術大会で総合優勝したジェット・リーのカンフーは目にもとま
らぬ早さで相手を倒すスピードと迫力がある。だがどんなにすごいカンフーシ
ーンでも、それだけを延々と見せられた観客は「スゴさ」に慣れてきて、やが
ては飽きてしまう。そこで「ブラックダイヤモンド」では、カンフー以外のア
クションを豊富に取り入れている。それは、地下鉄車両の疾走やバギーのカー
チェイスである。ほかにヘリコプターや戦車も登場する。同時刻に違う場所で
それぞれに進行するアクションシーンを次々に切り替えていくことで、アクシ
ョンが単調に感じる間をなくそうと一生懸命になっている、という印象を受け
た。
 
寿司の次は蕎麦、蕎麦の次はパスタ、パスタの次はカレー、最後はラーメン。
といったように一晩のうちに次から次に食べさせられたのでは、翌朝には、昨
晩はいったいなにを食べたのか正確に思い出せないかもしれない。三日もする
と「とにかくあの晩はいろんなものをたくさん食べさせられたなぁ」というぐ
らいにしか思い出せないだろう。

いろいろあってスゴイのだが、観終わってしばらくすると、似たようなほかの
作品とごっちゃになってしまいそうだ(例「ロミオ・マスト・ダイ」)。

ここでジェットリー主演映画作品「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(以下「キス
~」)と比較する。比較の対象は「動機」である。

「キス~」では主人公の動機の主なものは、自らにかけられた濡れ衣をはらす
ために闘う。
「ブラックダイヤモンド」での主人公の動機の主なものは、命令が下ってそれ
に従うというものである(主人公は役人)。厳密には、組織のボスであるリン
は主人公の元同僚で裏切り者であるという設定がある。だがこのことは作品の
前半では明かにされないため、主人公がブラックダイヤモンドを追う動機が弱
く感じる。そこで、トニーの愛娘が誘拐されたので助けるという「動機」が設
定される。

「ブラックダイヤモンド」はバディ(相棒)ムービーなので、立場の違う二人
(スーとトニー)が相棒になるためには目的が同じことと、きっかけが必要だ。
目的はブラックダイヤモンドを追うことで、きっかけはトニーの愛娘が誘拐さ
れることだ。
 
このように、ブラックダイヤモンドを追う動機を確かなものにするために、ト
ニーの愛娘の誘拐という出来事を設定している。
登場人物の数を増やすことで、動機を確かなものにすると同時に、交互モンタ
ージュを用いてアクションシーンにスピード感と緊張感を出している。

バディものにする利点はほかにもある。それは、二人のキャラクターを、片方
は陽気、片方は冷静沈着、といった具合に色分けすることができることである。
トニーは強盗グループのリーダーだが娘を愛する情にあふれるキャラクターだ。
スーは寡黙で冷静沈着な男というキャラクターだ。

「キス・オブ・ザ・ドラゴン」でも「ブラックダイヤモンド」でもそうだが、
ジェット・リーは冷静沈着で寡黙なカッコイイとされる役ばかりだ。これはジ
ェット・リー本人の希望なのだろうか。
「ブラックダイヤモンド」のスーも、前半の格闘シーンではポケットに片手を
入れたまま相手を叩きのめす。けっしてポケットから片手を出さないのだ。そ
れだけスーが並外れて強いのはわかるのだが、かなり長くこの「片手ポケット」
が続くのだ。こうなってくると、よくあるお決まりの動機(愛する家族を誘拐
された等)ではあるが、愛娘を救うためにがむしゃらにがんばって闘うトニー
のほうがカッコ良く見えるのだ。

ジェット・リーはハリウッドデビューする以前の「少林寺」等の作品では、女
装して登場して、その格好のままカンフーで闘うなど、おちゃめな役もこなし
ていた。だがハリウッドデビューしてからは冷静沈着で寡黙な役ばかりのよう
である。
「ザ・ワン」では、最強のジェット・リーの相手は最強のジェット・リーしか
いない、ということで、自分自身と戦っていた。ここまでくると、ジェット・
リーのカンフーアクションがどんなにすごくても、それだけで観客を集めるこ
とに限界を感じたのかもしれない。そこでいろいろなものを組み合わせ、交互
モンタージュ技法で映画を撮ることにしたのだろう。

アクション映画「トランスポーター」も様々な格闘シ
ーンやアクションシーンに溢れている。「ブラックダイヤモンド」と比較する
と「トランスポーター」に特徴的なことは、コンセプト(ストーリーの中心と
なるアイデア(着想)やトピック〈出来事〉を意味する)がしっかりしている
ことだ。それは「3つのルールを厳守するプロの運び屋がひとつのルールを破
ることによって様々な危険や困難に直面する」というものだ。プロの運び屋で
あるフランクは3つのルールを守ることにしている。
(1)契約厳守、(2)名前は聞かない、(3)依頼品は開けない。

こういった明確なコンセプトを持ち、わかりやすいルールを設定しておくこと
で、宣伝しやすくなる。観客もルールを破ったときにどうなるのか、と興味が
わく。

ヒップホップ界のカリスマDMXとジェット・リー出演という宣伝文句は、こ
の両者を知らない人(興味ない人)には届きにくいだろう。
より広く、より多くの人々に宣伝する場合には、「トランスポーター」のコン
セプトのほうが有利だ。

クライマックスの、スーとリンの決闘シーンは、炎の円と降り注ぐ水のなかで
行われる。ありがちな演出である。
ほかに、バギーでビルの屋上から屋上へジャンプするシーンは迫力がある。
 
それにしても、ジェット・リーはカッコつけすぎではないだろうか。ジェッキ
ー・チェンとキャラクターがかぶらないようにと、寡黙な正義のヒーロー路線
を狙っているのかもしれない。
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ブラック・ダイヤモンド<サウンドトラック>
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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Tracked on 04/08/2007 at 00:27

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