恋愛適齢期(SOMETHING'S GOTTA GIVE)
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「恋愛適齢期(SOMETHING'S GOTTA GIVE)」
ナンシー・メイヤーズ監督/2003年/アメリカ/128分
○恋はいつも突然やってくる!☆
〔1〕テーマ(Theme)
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恋愛
〔2〕ストーリー(Story)簡略に
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ハリーが付き合う女性はみな30歳以下の美女たち。新恋人のマリンと彼女の別
荘へロマンチックな週末を二人きりで過ごそうとしますが、別荘には予定を変
更したマリンの母エリカとその妹がやってきます。こうして週末を一緒に過ご
すことになった4人ですが、ハリーが心臓発作で倒れてしまいます。
しばらく別荘で静養することになったハリーとエリカはお互いの意外な面を知
り合って次第に親密になっていきます。
〔3〕Main Character(主な登場人物)
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△ハリー・サンボーン
63歳独身男性。レコード会社経営の富豪。
△エリカ・バリー
54歳女性。劇作家。
△ジュリアン・マーサー
36歳独身。心臓専門内科医。劇作家エリカ・バリーの大ファン。
△マリン
エリカの娘。オークション会社に勤めている。
△ゾーイ
エリカの妹。大学教授。フェミニズムを研究している。
〔4〕Comments(論評、批評、意見)
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恋はいつも突然やってくる!☆
エリカは50代バツイチ女性劇作家。海辺に高級別荘を持つ成功した女性です。
でも、異性にモテるかというとそうでもないんです。なぜって、大学でフェミ
ニズムを研究しているエリカの妹さんのゾーイの説明によれはこうです。男性
は社会で成功して歳をとっても異性に人気があり、たとえ派手に遊んだとして
も「独身貴族を謳歌する永遠に手に入らないプレイボーイ」と雑誌に特集され
てもてはやされもするけど、女性の場合はそうはいかない。歳をとって社会的
に成功すればするほど、男性には扱いにくい女と思われて、疎まれ、避けられ
る……。
これって、若くて綺麗でかわいくて男のいいなりになる女が「いい女」ってこ
と?
自分の考えをしっかりもってがんばって仕事して社会的に成功する女は「いや
な女」ってこと?
たしかにそう。ゾーイの説明には説得力がありますネ。
よく「毎週水曜日はレディーディで映画が千円だなんて女は得だよな」な~ん
て言うお方がいらっしゃいますが、そんなちっちゃな(映画千円は嬉しいし助
かるけど☆)ことより、がんばって成功した女性、しかも結婚も子育ても立派
にこなしたエリカのような人が異性に疎まれるなんて、これをあえて映画千円
に例えるならば、10年間映画フリーパスポートを発行しても足りないくらいで
すよ!
女性は30歳以下の若くて綺麗な娘にかぎるのぉ。うぉほほ☆←(-_-;)の代表選
手、それがハリーです。エリカとハリーはお互いに第1印象は悪いんです。
こうしてマイナスなイメージで出会った二人が、ハリーの心臓発作によってし
ばらく別荘で静養するうちに、お互いにいままで見えなかった意外な部分が見
えてきて、徐々に心引かれ合っていきます。
マイナスからまずはゼロへ。ゼロからプラスへ。このあたりの描き方はほんと
うに上手です。
特に、ふたりがコミュニケーションを取っていく様子は、今となってはありが
ちな方法だけど、63歳と54歳の二人のやりとりの方法としてはなかなか新鮮で
した。
それは、二人が同じ別荘に居ながら、それぞれの部屋でノートパソコンでEメー
ルを送り合ってチャットのような使い方をしているシーンのことです。
仲良しの友達や恋人とけんかしちゃった……というときに、電話や手紙やEメー
ルでちょっと探りを入れて、仲直りのキッカケをつかみたいってことはよくあ
るでしょ? エリカとハリーのEメールでのやり取りはまさにそんなかんじなん
です☆
でもちょっと思ったことがあります。。エリカもハリーもパソコンを使いこな
してEメールを送ることができるし、なんといっても二人は成功したお金持ち。
自分のためにお金を動かす方法(エリカは脚本を書く)とシステム(ハリーは
レコード会社を経営する)を既に持っているので、自分のために自由になる時
間がそこそこあるんです。そう考えると「お金と時間と最低限の電子機器を使
いこなせることが恋愛の条件」なの?って。
いえいえ、そんなことはありませんよね。どんな状況だろうと、誰にでも恋は
突然やってくるんです☆
でも、映画作品にしようと思ったら、いろいろ都合よい設定や状況を作らなく
ちゃならないんです。だから、エリカもハリーもお金持ちなんですね。映画、
とくにアメリカ映画は夢を提供することが大きな目的のひとつなので。それに
「恋愛適齢期」はジャンルでいうとコメディなので、「貧しいなかにあっての
恋」というようにシリアスに描くより、お金持ちではあるけれど、そのために
異性に疎まれ避けられるエリカ(女性の心情を代表)というキャラクター設定
はとてもいいと思います。
また、エリカの娘マリンも重要なキャラクターです。マリンはそもそもハリー
の新恋人でした。でも、ハリーと母エリカがいい雰囲気のなのを察して、ハリ
ーと別れて母に譲ります。
マリンは自分が傷つくのを恐れて、気楽で楽しい付き合いを繰り返していまし
た。それは、マリンの父が再婚することなったときのシーンでわかります。
マリンの父は、マリンと2つしか歳が違わない娘と結婚するというのです。マ
リンはそれを聞いてひどく傷つきます。そして、父と父の再婚相手との食事
会にママ(エリカ)に一緒に来てほしいとお願いします。ママは強いから、私
にはママの強さがないの、だから一緒にきてほしい、というのです。
エリカはその食事会で偶然にハリーに遭います。そこでのエリカの行動は真剣
に恋する女性の姿そのものです。
やがてマリンは母エリカの言葉で、傷つくことをおそれずに恋愛をするように
なります。
母と娘がひとりの男性(ハリー)に出会ったことで、それぞれに自分をみつめ、
悩み、迷い、うろたえ、感情を露にしながら変化と成長を繰り返していくので
す。
メインキャラクターの年齢設定は、もしかすると作品の雰囲気が暗くなりがち
に思えますが、「恋愛適齢期」は世代を超えて多くの人が楽しめる作品になっ
ています。
こういうタイプの作品はハリウッドの最も得意とするところなのでしょう。
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∇参考・用語引用図書
「ストーリーアナリスト」
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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