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04/22/2004

美穂の旅

「美穂の旅」 ********************************************************* 
▼株式会社テグレット技術開発が運営する、
 インターネット・Eメールを利用した仮想旅行サービス。
 (登録料、情報料共に無料)

 「美穂の旅とはあなたの分身が、世界中を旅行して、旅行先からあなたに
 メッセージを送ってくる仮想旅行システムです。ユーザ登録を行うと、あなた
 の分身を旅行に出発させる事が出来ます。 」
 (引用元:「美穂の旅」
***********************************************************************

〔1〕プレミス(Premise)
   ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア

―――――――――――――――――――――
ユーザーの分身が世界各国を旅する仮想旅行サービス。旅の様子をEメールで伝
えてくれる。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
ユーザーの分身それぞれの旅のストーリーが展開する。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ユーザーの分身
 ユーザーが自由に名前をつけることができる。また、分身の大まかな性格を
 指定することもできる。

△旅先で出会う人々

△旅先で出会う旅行者たち
 美穂の旅会員の分身たち。


〔4〕・1 ダイアニサイアック(Dionysiac)
      夢中になる、主人公に共感を得る。

―――――――――――――――――――――
旅行(ストーリー)の主人公はユーザーの分身である。


4〕・2 成功のための3つの要因
―――――――――――――――――――――
〈1〉ストラクチャー
〈2〉独創性
〈3〉マーケティング

ここでは〈2〉と〈3〉を取り上げる。
〈2〉独創性
○新鮮味があるか 
⇒今までなかった世界(インターネットの世界)を利用した仮想旅行システム
 です。

○オリジナリティーに溢れているか
○それはユニークか
⇒ユーザーが他のことををしていても、ユーザーの分身が旅行を続けていく
 (ソフトに係りっきりでいなくても進行するストーリー)。

○フック(観客の興味を惹くものは)はあるか
⇒世界各国各地についての興味。どんな人々がいて、どんな暮らしをしている
 のか。どんな気候風土か。どんな食べ物があるのか。どんな文化や風習があ
 るのか……等。

だれでも自分に興味がある。自分(分身)が旅先でどんな経験をするのかと興
味がわく。

〈3〉マーケティング
○ユーザーが欲していることはなにか?
⇒未知への興味(旅行)
⇒サバイバル(冒険)
⇒知識欲・理解欲(世界各地の歴史、文化を知りたい)
 
○旅行(ストーリー、作品)とユーザー(観客)との間にどのようなコネク
 ションを設定するか。

⇒旅行(ストーリー)を作品と考えると、観客が作品との間にコネクション
(つながり)を見出せるようにするが大切だ。
「美穂の旅」では、作品=旅行をするのは自分の分身だ。作品と観客の間には、
 旅のはじまりの時点で、すでにコネクションが成立している。
   

〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
人生の旅人――だれもが物語の世界の住人といえるでしょう。
 
物語の基本形の1つに、ロードムービー型というのがあります。主人公には動
機があり、目的を持って旅をします。旅の途中でさまざまな出来事に遭遇した
り、さまざまな人々に出会ったりします。最終的には目的地に着いて旅は終わ
りです。

「美穂の旅」で自分の分身を旅に出発させる動機は人それぞれでしょう。忙し
くて実際には旅行にいけないから。自分は子供で、思いたったらすぐに旅立つ
なんてことはできないから。ほんとうに世界各国を旅するのはめんどうだけど、
なにか新しい知識を得たり、冒険気分を味わったりしたい……等。

旅の目的もまた人それぞれです。そのため、「美穂の旅」では分身が「どこで
なにをするのか」をユーザーが指定することはできません。ユーザーは分身を
旅に出発させるだけです。分身は勝手に行き先と旅行期間を決めて出発します。

目的を定めないというのがポイントです。これが、より多くのユーザー(観客)
に受け入れられる理由でしょう(「美穂の旅」の会員数は約100万人)。

これについて映画作品と比較してみます。映画作品の主人公は目的を持ってい
ることがほとんどです。例えばヨットレースに挑戦する青年が主人公だとしま
しょう。青年の目的は恋敵(サブプロットの要素)でもあるライバルにヨット
レースで勝ち、優勝することです。観客が主人公の青年に感情移入できなけれ
ば、青年がヨットレースで優勝しようが予選落ちしようがどうでもいいことに
なります。
 
映画作品では観客が主人公との間にコネクションを見出すことが重要です。
ネクションが確立すれば、主人公と一緒に目的達成への旅に出ることができる
からです。
 
逆の言い方をすれば、主人公の目的とは、観客が主人公との間にコネクション
を見出させるための「仕掛け」ともいえます。
目的があると、観客が主人公に
コネクションを見出しやすくなります。目的にむかって行動する主人公の動機
や、主人公を取り巻く状況を知ることで、主人公に感情移入できるかどうか決
まるからです。

「美穂の旅」が目的を定めないのは、それが「旅」だからです。実際の旅には、
目的がある場合があります。(例:ピサの斜塔に登って記念写真を撮る)。し
かし、特にこれといった目的はないが、気分転換に旅行したい、ということも
あるでしょう。旅することが目的ともいえます。
こうした「旅」の性質をふまえ、さらに人それぞれの「旅」のスタイルを考慮
すると、分身の旅に目的を設定しないほうが、より「旅」らしいといえるでし
ょう。目的を定めないことで、より多くのユーザーを獲得することができるの
です。

ここで、「美穂の旅」が現代にマッチしている要素を2つ挙げます。ひとつは、
分身が勝手に旅行する、というものです。ユーザーは分身を旅に出発させると、
ほかにすることはありません。あとは分身からの報告(Eメール)を待つだけで
す。Eメールが着たら、旅の様子を写真などで知ることができます。旅先で出会
った分身のお友達(ほんとうの人間)とメールをやりとりすることもあるかも
しれません。分身が教えてくれたお店(WEBサイト)などを見たりすることもで
きます。ですが、旅は基本的に分身任せです。
 
なにかおもしろそうな事をしたい、おもしろそうな事を知りたい、という意欲
はあっても、いそがしくてどこかに行くためのまとまった時間はとれない、そ
れどころか家でTVゲームをする時間さえない、といういそがしい人でもだいじ
ょうぶです。分身を旅に出せば、あとは自分がどこでなにをしていても、分身
が勝手に旅行してくれます。そして、1日に1~3通ほどのEメールで旅の様子
を伝えてくれるのです。

家族や恋人や友人からのEメールはうれしいものです。自分がよく知っている人
からのメールだからです。ならば自分の分身からのEメールだったら? 自分の
ことを一番よく知ってるのは自分ともいいます。自分が旅に出発させた分身から
のメールに違和感や嫌悪感は抱かないでしょう。

このように、忙しい人でも旅行ができて、一番の知り合いからEメールが届くの
です。

もうひとつは、マーケティングです。「美穂の旅」は広告収入で運営されていま
す。旅に出た分身が訪れた世界各地に関係するイベントや物の広告などが、「分
身からのお知らせ」という形のEメールによってユーザーのもとに届きます。

分身がストーリーという名の旅をしながら、その状況に合わせて広告が入るので
す。
これはコンテクストマーケティングのひとつです。コンテクストマーケティ
ングとは、人それぞれの状況(時間・場所・行動)に合わせてサービス(情報・
商品)を提供するマーケティング手法です。

商品が安いからというだけではモノは売れなくなっています。モノの背景にある
物語を体験することで商品に興味や愛着がわいて商品を購入することがあります。

(例:ディズニー関連グッズ。クレヨン社の婦人服[※1])

人それぞれの状況(時間・場所・行動)をリサーチするには、たいへんな時間と
労力が必要です。そこで、用意したストーリーというフィールドで旅をしてもら
い、旅の過程に合わせてユーザーにサービスを提供するという、コンテクストマ
ーケティングにストーリーを組み合わせた手法を用いています。細かく言うと、
コンテクストマーケティングのひとつの手法としてのストーリーマーケティング、
もしくは物語マーケティングというものです。

こうした手法のわかりやすい例はディズニーや機動戦士ガンダム(※2)に見る
ことができます。どちらの作品も世界観がしっかり確立していて、数々の有名な
シーンやセリフがあり、個性的で有名な登場人物がいます。
長く愛される作品にコネクションを見出した(感情移入した)観客は、作品のコ
ンテクスト(文脈)に沿ったタイミングや状況で提供されたサービスに大きな関
心を向けやすいようです。

ディズニーや機動戦士ガンダムの例で見るように、コンテクストマーケティング
に、しっかりと構築したストーリーを組み合わせる手法は、現代に最も適応した
効果的なマーケティング手法のひとつといえるでしょう。

以上2つが時代にマッチした要素です。

また、分身は訪れた先で、ほかのユーザーの分身と出会うこもあります。そして、
分身のお友達(という設定)のほかのユーザー(本物の人間)にEメールを出す
こともできます。訪れた先でまれにおみやげを手に入れることもあります。これ
は広告主が提供する賞品であったりします(「美穂の旅」は広告収入で運営され
ています」)。
 
このように、仮想旅行でありながら現実世界とも接点があります。「美穂の旅」
は男性会員に比べて女性会員の比率が高いそうです。男性は自分の趣味の世界に
どっぷり浸かる傾向が強いとも言われます。サラリーマンの夫が趣味で古いおも
ちゃを集めはじめ、借金までして集めているという話もあるみたいです。その点、
女性はもちろん趣味を楽しみますが、それはあくまで現実の範囲内であることが
ほとんどのようです(なかには家計費をブランド物を買うために使ってしまう主
婦もいるとか……)。
 
仮想世界に深く入り込んで旅するのではなく、現実世界とも繋がっているという
のが、女性に受け入れられやすい点なのかもしれません。(そもそも分身は勝手
に旅するので、ユーザーが仮想旅行にどっぷり浸かりっきりになりようがありま
せんネ)

ストーリーは小説や演劇や映画作品にだけあるのではなく、あらゆるところに存
在します。
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「美穂の旅」は株式会社テグレット技術開発が運営する仮想旅行サービスです。
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※1 クレヨン社の婦人服
   株式会社クレヨン。婦人服専門店。架空の女性音楽家「ロイス・クレヨ
   ン」を中心としてストーリーを構築。

※2 機動戦士ガンダム
   TVアニメ作品。劇場アニメ作品。1979年にTV放送開始。1981~1982年
   に劇場公開。モビルスーツという人型(ヒトガタ)ロボットのパイロット
   になった少年の物語。その後、ガンダムシリーズが多数放映される。
   (創通エージェンシー・サンライズ BANDAI)
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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メールマガジン→「ストーリー・アナリシス (Story Analysis)」

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