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04/15/2004

モンスターズ・インク(MONSTERS,INC.)

モンスターズ・インク
大平透 立木文彦 高乃麗 青山穣 ジョン・グッドマン 長島雄一
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
2004-04-23


by G-Tools
ピーター・ドクター 、デビット・シルバーマン監督 2001年 アメリカ ディズニー・ピクサー

●必要な労力を惜しまない、チャレンジ精神と戦略をもつ、全編フルCGアニ
  メーションの成功作品

〔1〕プレミス(Premise)
   ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア

―――――――――――――――――――――
怖がらせ屋のモンスターが、モンスターズシティに入り込んでしまった人間の
女の子を助けようとする。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
モンスターズインク。そこは人間の子供の悲鳴をエネルギーとして採取する会
社である。ある日、人間の子供(女の子)がモンスターシティに入り込んでし
まう。モンスターズインクで業績トップのサリーは女の子を守り、人間の世界
に帰してあげようとする。
 

〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ジェームズ・P・サリバン(サリー)
 全身を毛で被われた巨体モンスター。
 モンスターズインクで業務成績トップを誇る。

△マイク・マゾウスキ(マイク)
 球体形の、ひとつ目モンスター。サリーとは仕事上の相棒関係である。
 サリーと幼馴染でもあるようだ。

△ブー
 人間の女の子。モンスターズシティに入り込む。

△ランドール・ボッグズ
 トカゲ型モンスター。サリーの仕事上のライバル(業務成績第2位)。
 カメレオンのように体の色を変えることができる。

△セリア
 髪の毛に5匹の蛇をもつ、ひとつ目モンスター。
 モンスターズインクの受付嬢でマイクと熱愛中。

△ロズ
 ナメクジ型モンスター。モンスターズインクの書類担当責任者。
 

〔4〕・1 ルール
―――――――――――――――――――――
モンスターの世界には侵してはならなり3つのルールがある。

〈1〉人間界のものを持ち帰ってはいけない
〈2〉モンスターシティには人間の子供を入れてはいけない
〈3〉人間の子供を愛してはいけない


〔4〕・2 感情的気質/感情的反応
―――――――――――――――――――――
(登場人物の感情的気質はその人物を形づくり、感情的反応はその人物の肉づ
 けを行う)

観客が登場人物(サリー)との一体感を得れば、観客はストーリーの世界へス
ムーズに入っていくことができる。一体感を得るためには、サリーの感情的反
応をわかりやすく描くことが必要だ。

サリーはモンスターズインクの業績トップ社員としての誇りを持っている。だ
が傲慢になることがないため、社員みんなに好かれている(ランドールを除く)。
そんなサリーが人間の女の子のお守をすることになる。最初は女の子を恐れて
いたサリーだが、「ブー」と名前をつけて家に帰そうとする。その途中、ブー
がゴミ処理装置に入れられてしまったと思い込んだサリーは、動転して気を失
いそうになる。

仕事をバリバリこなし、同僚たちから好かれているサリーが、人間の女の子の
お守をすることになる。ブーと名前をつけて、家に帰してあげようとしたり、
ブーのことを心配したりする。こういったサリーの感情的反応に観客は感情移
入する。

また、人間の女の子に「ブー」と名前をつけたことは重要だ。作品中でもマイ
クがサリーに「人間の女の子に名前まで付けてはマズいよ」といった意味のセ
リフがある。名前をつけることで対象を認識し、名前を呼びつづけることで
「ブー」の存在が大きくなっていく。これは観客の感情的反応に大きく関係す
る事柄だ。


〔4〕・3 キャラクター・アーク(Character Arc)
―――――――――――――――――――――
(ストーリーの中でのキャラクターの経験を通して起こる、キャラクターの性
 格や価値観の変化)

仕事熱心で悲鳴獲得ポイントNO1のサリーは、その地位を維持するために精
力的に仕事をこなしていく。常に危険(とされている)と隣りあわせの仕事の
ため、トップの成績を誇るサリーはモンスターシティの人々からヒーローとし
てみられている。

そんなサリーがブーを出会うことで、仕事だと割り切って子供を脅かしてきた
ことについて考えるようになり、ストーリーの最後には今までとは違った目的・
内容の仕事をするようになる。

 
〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
全編フルCGアニメーションの成功作品である。

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ある作品が赤字になる可能性が高い要素として、次の3つをあげることができ
る。それは、「水」「未来」「CG」である。

水を狙ったとおりに撮影するのは難しい。ビジュアルエフェクト技術やCG技
術でもまだまだ難しいという。海や川での撮影は天候に左右されやすく、日数
がかかり、俳優やスタッフも危険にさらされる可能性が高い。

SFものは世界観をゼロから構築しなければならない。セットやCGなどの制
作費が膨大になる可能性が高い。

CGアニメはアニメーターやCG技術者の人件費がかかる。制作日数のぶんだ
け人件費がかかるのだ。

----(『映画の達人』日経エンタテインメント!編 日経BPムック参考・参照)----

「モンスターズインク」は全編CGで描かれた作品である。全編をCGで描く
必要があるのか? この問いに対する答えは「必要がある」となる。

ストーリーの舞台はモンスターシティである。モンスターの世界を舞台として
いるのだ。仮にモンスターを人間が演じるとなると、着ぐるみと特殊メイクで
動物等の動きを真似する、という形になるだろう。制作費を安くしようとする
とデパートの屋上の怪獣ショーになる。制作費を沢山費やすには相当の覚悟が
必要だ。膨大な制作費をかけて「コント」作品として十分に楽しめる作品もあ
る(例 「猿の惑星(PLANET OF THE APES)」 ティム・バートン監督)←ここま
でやると逆におもしろいだろうという期待がおおいに持てるのだ。

モンスターをCGで描くことで、どのようなモンスターのどのような動きも表
現することができる。モンスターは最初から有名スターではないので、それぞ
れのモンスターに明確なキャラクターが備わっていなければならない。
モンスターズシティには多くのモンスターがいるが、基本的にサリーとマイク
の二人に焦点を絞っている。この二人を中心に、ライバルのランドールや受付
嬢のセリア等が登場する。これらの登場モンスターひとりひとりには動機や目
的がある。そのため、モンスター達のキャラクターが際立っており、ストーリ
ーの世界観を観客に知らせる手助けをしたり、ストーリーを前へ押し進めたり
している。

作品の初めのほうで、モンスターズインクの新入社員向けの案内テープが流れ
る。これによりモンスターズインクが何をしている会社なのか、何を目的とし
ているのか、会社(モンスターズシティ)のヒーローはだれなのか、といった
ことがわかるようになっている。
また、DVD版には「マンとモンの歴史」といったような題名のショート作品が収
められており、現在に至るまでの人間とモンスターとの関係を短い物語で紹介
している。

このように、ゼロから作り上げた世界観を違和感なく観客に紹介している。そ
して、モンスターシティが舞台であるので、全編CGである意味に納得できる
のである。しかもCGにかなりの気合が入っていることをうかがわせる。それ
はサリーのCGである。サリーはブーに「kitty! kitty!(kitten)=子ネコ」と
呼ばれてわかるように、ネコのように全身が毛におおわれている。髪や毛をを
CGで描くには高度な技術と作業が必要だという。それにもかかわらず敢えて
毛におおわれたモンスターを主人公にしている。ここで重要なことは、登場す
るモンスターすべてを毛のあるモンスターにしなかったということだ。意気込
みを伝えたい気持はあっても、毛のあるモンスターばかりが登場すると、毛を
描くというスゴさが色褪せてしまうし、制作費も制作日数も膨れ上がることに
なる。つまり、すべてのモンスターを毛のある種類にする必要はないのだ。必
要がないところまですべてCGで描いても、それは制作者の自己満足で終わる
可能性が高い。観客が何を望んでいるか考えることが重要だ。

サリーはモンスターズインクでトップの社員である。ブーと出会うまでは自分
の仕事について深く考えることはなかった。子供の悲鳴はモンスターズシティ
のエネルギー源であり、モンスターたちはそれを必要としている。そして、悲
鳴採取量トップを誇るサリーは街のみんなにヒーロー視されている。

だが、ブーと出会うことでサリーは仕事の輝かしいキャリアを失う危険にさら
される。それは相棒のマイクのキャリアにも関係することで、それまで良き相
棒関係を続けてきた二人の友情に変化が起こる。友情を大事にしたいサリーだ
が、自分の良心に従ってブーを守って、人間の世界に帰してあげたい気持もあ
る。友情、愛情、良心の狭間で悩みながらもブーを守るために行動しつづける
サリーには感情豊かで深いキャラクター性がみられる。

ディズニーアニメのキャラクターは動きが早い。展開も早い。このように感じ
るのは大人だけで、子供にとっては程よいスピードなのだろう。ゆっくりした
展開の、お決まりのパターンの作品に慣れ親しんだ大人には、展開の早さにつ
いていけないと感じるかもしれない。。キャラクターの細かい表情やしぐさな
ど、会話を聞き取る(読み取る)ことに一生懸命で見逃してしまうかもしれな
いシーンがある(例:マイクがコンタクトレンズを装着するシーン)。
なにげないシーンにもユーモアが効いていたりするので、2度、3度とじっく
り観ると新たな発見がありそうである。

子供部屋のクローゼットはモンスターの世界につながっている、というのはイ
マジネーションをかきたてられる。日本でいうと「押し入れ」を開くとそこに
トンネルがあり……(例:松本零士『千年女王』)といった具合だ。
ところで子供部屋にクローゼットがある家は世界にどのくらいあるのだろう。
クリスマスに、ウチには煙突がないからサンタクロースが来てくれないよぉ、
と泣く子供を想像していただきたい。同じように、ウチの子供部屋にはクロー
ゼットなどという気のきいたものはない。押し入れは引き戸だから扉じゃない。
だからサリーは来てくれない、と思う子供がいるかもしれない。対策として
(かどうかはわからないが)「モンスターズインク」ではサリーたちは日本の
部屋らしき場所に出入りするシーンがある(富士山らしきものが映っていたか
ら日本だろう)。またエッフェル塔が窓から見える部屋にも出入りするシーン
がある。ほかには、マイクが受付嬢のセリアとデートするために予約したとこ
ろは、ニューヨークでは高級レストランとされている(日本でも高級店という
位置付けだが)寿司バーである。こうしてアメリカ人以外の観客も意識して制
作していることがわかる。 
 
世界の子供部屋のクローゼットがドアになるという設定は、ドラえもんの「ど
こでもドア」を連想することができる。「押し入れの中のトンネル」や「どこ
でもドア」は子供ならだれでも一度は思い描く事柄だ。こういった思いつきを、
ひとつの物語に作り上げることは簡単ではない。多くの人に観てもらえるよう
にするには、物語の設計図が必要だ。設計図を書くためにはなにが必要かをつ
きつめて考え抜かなくてはならない。こういった作業はとてもたいへんでつら
いだろう。それでも、伝えたいメッセージや事柄があれば、より多くの人に観
てもらうためには労力を惜しまないだろう。逆にいえば、より多くの人に観て
もらわなくても内輪だけでそこそこでよい、というのであればいくらでも手抜
きはできる。
また、たいへんで辛い作業をすれば必ずよい作品ができるということではない。
そうではなく、多くの人々に観てもらえるよい作品をつくるためには、たいへ
んで辛い作業になることが多いということだ。どんなにたいへんで辛い作業を
しても、それが自己満足のための作業ならば、時間と労力と資金の無駄である。

「モンスターズインク」は必要な労力を惜しまない、チャレンジ精神と戦略を
もつ作品である。

〔全編CGの必要性については「ファイナルファンタジー」(スクウェア)と
 観比べると参考になる〕
――――――――――――――――――――――――――――――――――

モンスターズ・インク
森 はるな
講談社
2002-03


by G-Tools

モンスターズ・インク ― オリジナル・サウンドトラック
サントラ ビリー・クリスタル ジョン・グッドマン
エイベックス・ディストリビューション
2002-03-06


by G-Tools


モンスターズ・インク ブー救出大作戦

by G-Tools

テレビゲーム(ビデオゲーム)機種:ゲームボーイアドバンス


モンスターズ・インク モンスター・アカデミー

by G-Tools

テレビゲーム(ビデオゲーム)機種:プレイステーション

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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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ネットでかりてポストでかえす「オンラインDVDレンタル」ぽすれん
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Comments

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Tracked on 10/21/2005 at 00:44

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