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04/12/2004

リロアンドスティッチ(LILO AND STITCH )

リロ&スティッチ
ティア・カレル ジェイソン・スコット・リー 石塚運昇 ヴィング・レイムズ 谷育子 飯塚昭三
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
2003-08-22


by G-Tools
クリス・サンダース、ディーン・デュボア監督 2002年 アメリカ ウォルトディズニーピクチャーズ

●テーマ・コンセプトを観客に伝える意欲と行動力に溢れている

〔1〕テーマ(Theme)
―――――――――――――――――――――
家族


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
少女リロは姉のナニと暮らしている。リロには友だちがなく、さびしい毎日を
おくっていた。ある日、逃亡中のエイリアン626号がハワイに不時着する。
リロは626号をスティッチと名付け、オハナ=家族として接する。
 

〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△リロ
 両親を事故で亡くし、姉のナニと二人でハワイに住む。
 友だちがいないさびしい日々をおくっている。

△スティッチ(626号)
 逃亡中のエイリアン。博士によって造られた。
 
△ナニ
 リロの姉。
 

〔4〕・1 コネクション
―――――――――――――――――――――
〈愛・帰属意識〉
主人公と観客の間にコネクションを確立するには、観客の共感や関心を
高めるために、人間の基本的な欲求を奪い去り、主人公を危険にさらすのだ。
 
リロは両親を失い、友だちもいない 
⇒h家族を失う。人とのつながりがほしい。
 
262号(スティッチ)は博士によって造られた。
⇒はじめから家族がない。

家族を失った者と、はじめから家族がない(家族を知らない)者が出会うこと
でストーリーがはじまる。


〔4〕・2 フォーシャドゥイングとペイオフ
―――――――――――――――――――――
(フォーシャドゥイングとは、出来事をセットアップするために使われる視覚
 的手がかりやダイアローグ、もしくは後のストーリーでペイオフされる情報
 のこと)

作品の冒頭で626号(スティッチ)が流刑にされそうになるときのことだ。626
号が宇宙連邦の大尉の手を噛むシーンがある。噛まれた大尉は「バイキンが伝
染らないだろうなぁ」といったような意味のことをつぶやく。

その後、ハワイのシーンで、リロがダンス教室の生徒とケンカして相手を噛ん
でしまう。噛まれた女の子は「バイキンが伝染らないかしら」といったような
意味のことをつぶやく。

こららのシーンは2つのことを表現している。
《1》626号は暴れん坊である/
   リロはケンカもするけど、それは、ほんとうは友だちがいなくてさびし
   い心の表れでもある。
《2》噛まれた大尉と女の子のリアクションで、626号とリロがまわりの人
   たち(宇宙人含)にどのようにどのように思われているのかがわかるよ
   うになっている(626号とリロの境遇の共通性を表現する)。


〔4〕・3 神話
―――――――――――――――――――――
癒しの神話(Heeling Myth)
主人公が調和やバランス、愛を獲得するストーリー。
 
家族を失い、友だちもいないリロと、はじめから家族がいないスティッチが出
会うことで、お互いに愛を獲得し、新たな家族を得る(調和、バランスを得る。


〔4〕・4 キャラクター・アーク(Character Arc)
―――――――――――――――――――――
(ストーリーの中でのキャラクターの経験を通して起こる、キャラクターの性
 格や価値観の変化)

626号(スティッチ)は神話のアーキタイプ(あるパターンやタイプを持った人
物)で言うと、「トリック・スター」である。「トリック・スター」は混乱を
ひき起こし、平和や秩序を乱す。機知に富み、狡猾である。
 
スティッチはリロと出会い、ハワイの気候風土のなかでエルビス・プレスリー
の曲を奏で、サーフィンで海に出ることで、苦手だった海(水)に入りたがる
ようになる。また、リロの絵本(アヒルが家族を得るストーリー)をみて、ひ
とりぼっちの自分をいつか家族が迎えにきてくれることを望むようになる。


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
テーマ・コンセプトを観客に伝える意欲と行動力に溢れている。そのために必
要なこと(宣伝方法、作品の世界観、キャラクター等)を確実に行っている、
という印象の作品だ。
 
ハワイ観光局とウォルト・ディズニー・スタジオは「リロ&スティッチ」でグ
ローバル提携している。両者はこの提携を相互のグローバルマーケティング活
動に最大限に活用することができる、としている。

ディズニー社は世界を代表するファミリー・エンタテインメント・ブランドで
あり、ハワイは世界でもっとも人気のある家族旅行先のひとつである。
 
両者に共通するテーマ・コンセプトは「オハナ=家族」である。主人公が調和
やバランス、愛、家族を獲得する過程を描いたこの作品は、ハワイを舞台とし
ている。ハワイは癒しの島、パラダイスとして観光に力を入れている。

なぜリロはスティッチを家族として受け入れたのか。
リロがはじめて626号と会ったとき、626号は「ハロー」と挨拶する。それは、
626号は追っ手から逃れるためにリロを利用しようとしたからでだ。。そんなこ
とは知らないリロは、この子が「ハロー」と挨拶したのよ、私の天使だわ、と
626号を家で飼うことにする。リロはいつも星にお願いしていたのだ。「お星さ
ま、お願いです。お友達をください。いちばんステキな天使をください」――と。

リロは626号にスティッチという名前を付ける。名前は変わっても中身は暴れん
坊のエイリアンなので行く先々でトラブルを引き起こす。それでもリロはステ
ィッチが愛を知らないためにさびしくて暴れるのだろうと思い、オハナ=家族
として受け入れる。
名前を付けたというのには大きな意味がある。新たな名前(スティッチ)を得た
ことで、徐々にではあるが、暴れん坊の626号からオハナ(家族)としてのス
ティッチに変化していくのである。

「リロ&スティッチ」は、結末が決まっている作品の、結末に至るまでの様々な
要素(時代設定、舞台設定、キャラクター等)について、なにか思い切ったこと
をしようと知恵を絞ったということが伝わってくる作品だ。
たいていのディズニー作品はしっかりとしたテーマ・コンセプトをもっている。
それは「愛・家族」といったものだ。このことは、ディズニー作品にはお決まり
のパターンがあることの基になっている。あるパターンとは、ストーリーはいつ
もハッピーエンドになる、ということである。つまり、なにかが欠落し、恵まれ
ないと感じる主人公が、出会いや冒険を経て大切なもの「愛・家族」をみつけて
ハッピーエンドとなる、というストーリーである。
ストーリーの結末が決まっているので、ハッピーエンドまでどのように話をもっ
ていくかが勝負である。ディズニーはこういった作り方をずっとしてきたのだ。
ディズニーというブランドイメージがあるためか、奇抜で斬新なことをするのを
ためらう部分がいままではあったのかもしれない。だが最近のディズニーは、さ
まざまな試みをしているようだ。(アニメ作品だけでなく実写作品も手がけてい
る『キッド』『救命士』等)。
 
「リロ&スティッチ」はテーマ・コンセプトをディズニーの基本である「家族」
にしっかりと焦点を定めている。作品の舞台をハワイにすることでハワイ観光局
と提携している。
さらに、宇宙のエイリアンという「SF」を組み合わせ、主要キャラクターに暴
れん坊の宇宙のおたずね者を据えることで「斬新さ」をもたせている。
宇宙船同士の飛行戦闘シーンもスピード感に溢れ、ハワイのゆっくりとした癒し
の島のイメージとのコントラストを強調している。これが意外とマッチしている
のだ。一見、異質に思える要素の組み合わせとして成功している。
キャラクター、アクション、情報の提示方法、演出など、ディズニーが長年培っ
てきた技術がしっかりと盛り込まれており、作品のペースも程良く、職人芸のう
まさが光っている。

〈キャラクター~~スティッチについて~~〉
スティッチはほとんどしゃべらない。設定上ではスティッチはスーパーコンピュ
ータ以上の知能を持ち、話すことができる。だが追っ手から逃れるために犬のフ
リをすることにしたスティッチはしゃべらないようにする。そのかわりよく動く
のだ。暴れん坊なので家の中の物はなんでも壊し、飛び回って動きまわる。こう
いった大きな動きはディズニーアニメーションの得意とするところである。コミ
カルで大きな動きで笑いを誘ったり、愛くるしいキャラクターを表現する。

もし、飼っている犬がある日とつぜんしゃべりはじめたらどうだろう。「もっと
エサをくれ」「ウザい近寄るな」「散歩行くぞ!ほら仕度しろ」等々。いままで
感じていた「愛くるしいわんこ」という印象は崩れ去るかもしれない(最近は犬
語翻訳機があるらしいが……)。
スティッチはほとんどしゃべらない。そのため、暴れん坊からやがて愛を知るよ
うになる過程を観るうちに、観客はスティッチが愛くるしい存在と思えるように
なる。それは、ぐずって泣く赤ん坊が、ふと笑顔を見せるのに似ているかもしれ
ない。
 
積み木遊びで、小さな子どもが、せっかく作った家や街並を壊すのをみたことが
ある人も多いだろう。また、かつて自分が幼い子どもだった頃に、積み木を崩し
て遊んだ経験がある人もいるだろう。
スティッチもリロに「たまにはなにかを作ったらどう」といった意味のことを言
われ、部屋の中にある本や小物などをいろいろ使ってせっせと街並を作る。完成
するとすぐにスティッチは「ゴジラ」(野球選手ではなく怪獣)のように街を破
壊するのだ。
子どもの積み木遊びにみるように、破壊は人間のコミュニケーションのひとつで
ある。スティッチは手に触れるものをすべて壊してしまうのだが、街並みを作っ
てから壊したことには重要な意味がある。つまり、スティッチはただ破壊するだ
けではなく、なにかを作りあげることができる、ということである。
このシーンは、やがてスティッチがなにかをつくりはじめるだろうということを
観客に予感させるものとなっている。実際、ストーリーが進んでいくうちに「愛」
を知ったスティッチは、リロやナニたちとオハナ=家族としての関係をつくりあ
げていくようになるのである。

家族がテーマの作品の描き方については「海辺の家(LIFE AS A HOUSE)」でも、
古い家を壊す⇒新しい家を建てる(つくる)というストーリーをみることができる。
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テレビゲーム(ビデオゲーム)機種:PlayStation2

リロ&スティッチ ~スティッチの大冒険~
エレクトロニック・アーツ
2003-03-27


by G-Tools

「リロアンドスティッチ―たっぷりよめる!」
DLデラックス―ディズニーおはなしえほん (250) 森 はるな
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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ネットでかりてポストでかえす「オンラインDVDレンタル」ぽすれん
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Comments

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Posted by: DISH vs DIRECTV | 02/06/2015 at 14:10

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