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04/24/2004

アップルシード(APPLESEED)

APPLESEED
士郎正宗 荒牧伸志 小林愛 小杉十郎太
ジェネオン エンタテインメント 2004-11-25


by G-Tools
荒牧伸志監督/2004年/日本/103分 原作:士郎正宗『アップルシード』

○独自の世界観を構築し、斬新な映像をみせ、さらに人間の感情を描いている。
  CG・アニメーションというハードと、テーマ・感情というソフトを融合させ、
  日本でしかできないことを大胆かつ戦略的に実行した作品

〔1〕テーマ(Theme)
―――――――――――――――――――――
ヒトの未来。愛。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
西暦2131年、世界を壊滅させて非核大戦が終結。伝説の女戦士デュナンは麻酔
弾を受け、理想郷オリュンポスに連れてこられる。オリュンポスの人口の半分
はクローン人間・バイオロイドであった。政治を司るバイオロイド。軍部を牛
耳るヒト。軍部がバイオロイドを敵視するなか、ヒトの未来を揺るがす計画が
進行していた。
デュナンはかつての戦友であり恋人であったブリアレオスと再会する。だがサ
イボーグとなった彼は感情を露にすることなく、いまの自分の任務はデュナン
を守ることだと言うのみであった。
やがてデュナンは、ヒトとバイオロイドの未来の鍵となる「アップルシード」
の存在を知る。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△デュナン(ヒト)
 女戦士

△ブリアレオス(ヒト/サイボーグ)
 非核対戦でデュナンと離れる。のち、負傷してサイボーグとなる。

△ヒトミ(バイオロイド)
 オリュンポスに優秀なヒトを入植させる任務を受けている。

△アテナ(バイオロイド)
 オリュンポスの行政総監(大統領)

△クラノス将軍(ヒト)
 オリュンポス正規軍(軍)の司令官。バイオロイドを敵対視する。

△七賢老(ヒト)
 七人の老人。ガイアと共にオリュンポスの最終意思決定機関を構成する。

△ニケ(バイオロイド)
 アテナの部下。ES.W.A.Tを統括する。

△ハデス(ヒト)
 ラウノス将軍の部下。

△義経(バイオロイド)
 メカニック。ヒトミの友人。
-------------------------------
▽オリュンポス
 非核大戦後、地球全土を統合した、巨大人工都市

▽ガイア
 オリュンポスの都市機能を司る巨大コンピュータ。ヒト社会の安定を目的と
 として、七賢老との対話によってオリュンポスの最終意思決定を行う。

▽ランドメイト(LAND MATE)
 搭乗者の動きを正確にトレースする武装機器。ロボットスーツのようなもの。


〔4〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
独自の世界観を構築し、斬新な映像をみせ、さらに人間の感情を描いている。
CG・アニメーションというハードと、テーマ・感情というソフトを融合させ、
日本でしかできないことを大胆かつ戦略的に実行した作品。

いままで観たことない不思議な映像体験ができる。この作品は「モーションキ
ャプチャー」という技術で、実際の人の動きをCG化して、その映像をもとに
「トゥーンシェイダー」と呼ばれる技術を用いて、キャラクターをアニメのセ
ル画のような雰囲気で表現している。

キャラクターの動きは人間の動きのようになめらかで、表情などはアニメのセ
ル画で描かれる。この組み合わせは大胆で戦略的だ。このため、いままで観た
ことない独特の映像となっている。

全編フルCGアニメーションで、ヒットしている作品に特徴的なことは以下↓だ。

◇CGでしか描けない、またはCGで描いたほうが利点があるものをCGで描いている
 (例:ピクサー作品における「モンスター」「おもちゃ」「魚」)

つまり、CGで描くことに意味がある対象だけをCGで描いているのだ。。
かつて、全編フルCGで制作した、ある作品があった。その作品は人物をすべて
CGで描くというとてつもなく壮大なチャレンジに莫大な資金と投入した――が、
その作品はヒットしなかった。

はたして、CGを用いて実際の人間と見間違うほどにそっくりに描く必要がある
のか。本物の人間を起用したほうが早いのでは? と一瞬でも思わなかったは
ずがない……。
CGで人間そっくりに描いたんだぞ、といわれても、「すごいね!」の一言で終
わってしまう。もしかしたら「それで?」と言われてしまうかもしれない。

CGという技術はお金と時間をかければ本物と見間違うリアルな表現ができるの
で、新しい技術ができたばかりのころは、つい「リアル」の表面的な意味だけ
に注目してしまいがちだ。「リアル」の表面的な意味とは、実物にできるだけ
そっくりに描くことを目標・目的にするということだ。

絵画を例えにしてみよう。
歴史上での絵画の役割のひとつは、対象を具体象として示すことだった。王侯
貴族の肖像画などがそうだ(凛々しく描くなど多少の脚色はあっただろう)。
だが、19世紀中頃の写真技術の広まりは、絵画にとっての脅威となった。

そこで近代絵画は、写真技術のリアリティに対抗する表現を模索・実験するよ
うになる。

なぜなら、写真技術が広まったにもかかわらず、絵画が写真よりも客観的で正
確に対象を描写しようとしても、時間と労力を使うだけで、とうてい写真には
かなわない。ならば、絵画の特性を活かした手法を編み出していくために時間
と労力と資金をかけたほうがよいと考えたからだ。
こうした試みが近代絵画の発展の歴史だと言える。

「アップルシード」は、比較的新しい技術である「CG」と日本で独自の発展を
とげてきた「アニメーション」を融合させることで、実写作品にもアニメーショ
ン作品にもなかった「新しい表現」を実現させた。

まさに日本でしかできなかった偉業といっていいだろう。さらにである。さら
に「アップルシード」には今日的な深いテーマを持ち、人間の感情を描いてい
るのだ。

今日的な深いテーマとは「ヒトの未来」である。ヒトという種は妬みや怒りの
感情を強く持つと互いに傷つけ合って争いをはじめる。様々な人種がお互いに
傷つけ合うことなく生きていくにはどうしたらよいか。

かつては国家対国家の対立であったが、現代は民族・人種対民族・人種の対立
の時代だと言われる。国家、民族、人種、これらの根本である「ヒト」の未来
はどうなるのか、どうすればよいのか。

ユートピアといわれるオリュンポスでは、都市機能を司る巨大コンピュータで
あるガイアと、七人の老人から成る七賢老とが対話を続けている。たとえ結論
が出ているように思えても、対話を続けることが必要であり、重要だという。

現実の国際社会においても、国連という対話の場がある。しかし、国連の維持
費負担金が多い国の発言力が強かったり、一部の力ある国は自国の都合のいい
ように行動したりする。

こうした今日的な現実の縮図のようなものがしっかりと作品に組み込まれてい
るのだ。

また、SF作品でよく扱われる題材に「ロボットの反乱」がある。人間を助ける
目的で開発・製造されたロボットが、やがて意思を持ち、人間に反旗を翻えす、
といったものだ。そこには、人間にきわめて近い「感情」を持つようになった
ロボット(アンドロイド)の苦悩と哀愁が漂っていたりもする。

ヒトの未来、生きる意味、愛――。こうした題材を語るのに、ヒトでないもの
(アンドロイド)の視点で描く。すると、題材との距離を保つことができる。
距離ができたことで、対象を客観的に見ることができるのだ。こういった意味
で、ヒトとは? 生きるとは? 我々は、自分はどこへ向かっているのか?
といった哲学的なテーマにとってSFは格好の「場」なのだ。

SFの世界観を描くのに有利な国はどこか。それは日本だ。SF作品として有名な
「ブレードランナー」を観たSFファンの欧米人が日本の秋葉原にやってきて写
真を撮りまくり、「まさにブレードランナーの世界だ!」と目を輝かせたとい
う話も聞く。

「アップルシード」はSFの世界観を構築しただけでなく、そこにわかりやすさ
の工夫と、今日的テーマを加えている。
「アップルシード」は、
〈1〉独自の世界観を持つという「強み」を活かし
〈2〉あまり哲学的になりすぎずに、
〈3〉今日的テーマをもっている。

キャラクターについては、デュナンとブリアレオスの関係について簡潔に説明
しているのがよい(二人はかつて恋人であった。ブリアリオスは北アフリカ戦
線で身体を失い、サイボーグになった)。たとえ簡潔な説明であっても、かつ
て恋人同士であり、戦友であった二人の関係を想像することはできるからだ。

またデュナンが新しく出会うヒトミについても、クローン人間(バイオロイド)
であるが故の興味や感情(恋や愛について情報ではわかっているが、どんなも
のか実感したい)といったものが描かれている。これは妬みや怒りの感情が小
さく抑えられている優良種バイオロイドのプラスな面と対比して、ヒト=人類
の妬みや怒りの感情が大きいマイナスな面を強調しつつも、だれかに恋をした
り愛したりするいった「感情」のすばらしさを強調しているのだ。

独自の世界観を構築することや、斬新な映像をみせることだけでなく、人間の
感情を描いているというのが、それまでの日本のCGやアニメーション作品との
大きな違いだろう。
(因みに「千と千尋の神隠し」も世界観を持ち、感情を描いている傑作だ)

「アップルシード」はCG・アニメーションというハードと、テーマ・感情とい
うソフトの融合させ、日本でしかできないことを大胆に、戦略的に実行して完
成した作品だ。

日本公開前から世界配給が決定しているが、世界で公開されたら、センセーシ
ョナルを巻き起こすことは間違いない。
「アップルシード」を早く観るために日本に来日している世界各国の方々も少
なくないだろう。

作品の最後がまた良い。(詳しいことは書かないが)七賢老たちが「無理心中」
のようなことをしようとするが、最後の最後に思い直して「希望」を残すのだ。

不良債権問題等、バブル後の失われた10年と言われ、そのときからいまに至る
まで、そしていまも、根本的な問題解決に着手することなく後回しにして、な
んとか逃げ切ろうとしてきた人たちは、はたして次の世代に「希望」を残すつ
もりはあるのだろうか。

オリュンポスの七賢老はヒト社会の安定を目的としてガイアと対話を続けてき
たのだ。その七賢老さえも「無理心中」を図ろうとするのだから、対話するこ
とさえ避けて逃げ切りにやっきになってきた人たちは……。

今日的な深いテーマ・問題を、圧倒的な映像で描く。とにかく映像だけでも観
る価値は充分だ。とにかくスゴイ! という「オーラ」のようなものが確実に
存在する。なにがそんなにスゴイのか、是非とも作品を観てあなたが感じても
らいたい。

もしここに、年に1、2本しか映画を観ない方がいたら――「アップルシード」
をおススメする。 
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∇ 「ブレードランナー(サントラ)」バンゲリス
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