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03/18/2004

VERSUS-ヴァーサス-

cover
「VERSUS-ヴァーサス-」
北村龍平監督 2000年 日本

○気象にたとえると、台風のような作品

〔1〕プレミス(Premise)
   ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア

―――――――――――――――――――――
黄泉返りの森で、500年の歳月をかけた二人の男の因縁の対決がはじまる。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
刑務所を脱走した男が、脱出ルートを案内してくれるはずの5人の男と森の中
で会う。5人の男たちはひとりの女を連れてきていた。ボスが来るまでここで
待機するという5人の男たちとの間で、女をめぐって争いが起こり、ボスの部
下がひとり死ぬ。男は女を連れて森の中を走る。それを追いかける部下たち。
森の中では死人がよみがえって生者を襲う。男は女を守りながら、ゾンビや男
たちと戦う。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△主人公 男
 刑務所を脱獄して森を走る。共に脱獄した男の案内で、ある一味
 と待ち合わせている場所へ向かう。

△女
 五人の男に連れてこられた女

△ボス
 主人公と女を森に連れてくるように部下たちに指示する。

△五人の男
 主人公の男たちを迎えにきた男たち。ボスの手下。


〔4〕・1 セットアップ
    (セットアップの役割はストーリーを理解するのに必要なすべての
     カギとなる情報を観客に与えること)

―――――――――――――――――――――
主人公はだれか      ⇒脱獄した男
どこを舞台としているのか ⇒森

どのような状況でストーリーが展開しようとしているのか。
⇒脱獄した男が、共に脱獄した男の案内で、自分たちをピックアップしてくれ
る人達との合流地点へ向かう。

登場人物は何をしているのか
⇒追っ手が来ない安全な場所までいくこと


〔4〕・2 カタリスト(きっかけ・ストーリーをはじめるための出来事)
―――――――――――――――――――――
ストーリーをはじめる具体的な出来事がなんなのか
⇒5人の男たちは女を連れてきた。主人公の男は女が手荒く扱われことに苛立
 ち、女の扱いを改めるように要求する。5人の男たちは要求をのまず、男はひ
 とりの男を撃ち殺す。


〔4〕・3 キャラクター・ディベロップメント~哲学/態度~
―――――――――――――――――――――
哲学や信念は行動に影響を及ぼす。

主人公の男は終身刑の脱獄囚で、自分の気に入らない事や人に対してはっきり
とそのことを言う。また、敵と認識した相手を殺すことになんの躊躇も示さない。

しかし男は、5人の男たちに車で連れてこられた女を守ろうとする。


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
気象にたとえると、台風のような作品である。
明日が運動会だろうと野外コンサートだろうと、台風はやってくる。窓や扉に
板を打ちつけて家の中でじっと台風が過ぎ去るのを待つか、ビッグウェーブ
(大波)がやってくる!とサーフボードをもって浜にくりだすか。

▽キャラクターについて
主人公の男は冷酷である。しかし女だけは助けようとする。男と女は面識がな
い。女は、どうして自分がこの森に連れてこられたのかわからないと言う。男
も脱獄する前の記憶がない。

男と女のバックグラウンドが語られないことで、謎が提示される。
男 ⇒どんな罪で刑務所にいたのか。
女 ⇒どのような経緯で森に連れてこられたのか。

謎で観客の好奇心を惹きつけ、バックグラウンドが語られないことで、作品の
舞台を「森」に限定している。(もし、回想シーンで巣鴨のせんべい屋の店員
という設定の女が現れたら、作品の雰囲気が変わってしまう)。また、その謎
が男と女とボスの500年にわたる因縁の関係を観客に予見させる要素になっ
ている。

∇戦略
世界の関心を集めるための要素
・輪廻転生
・ブレイドアクション、ガンアクション、ワイヤースタント、カンフー
・劇画的演出
・コント

▽世界観
・作品の舞台のほとんどを「森」に限定している。中世ヨーロッパにおいて森
 はなにか不思議なことや通常では考えられないことが起こる場所と考えられ
 ていた。(魔法・異世界との境界、等)
 
・主人公の男のセリフが独特である。現代日本人が通常使わないセリフである。
 これによって、時代に束縛されずに、どの年代や国の人が観てもわかる独特
 の世界観を構築している。

▽アクション
ブレイドアクション、ガンアクション、ワイヤースタント、カンフー、ありとあらゆる
アクションをとり入れている。その取り入れ方が特徴的だ。拳銃やマシンガン
を撃ちながらもう片方の手で剣を振るったり、お互い剣で戦いながら、いきなり
拳銃で戦ったりする。最初は拳銃、のち剣、ときどきカンフー、といったような分
け方を基本的にしていない。よい意味でルール無視のアクションである。
--------------------------

おもしろくするためにはどんなことでもする、という意欲と情熱を感じる作品
である。物事の新しいやり方や問題の創造的解決方法を常に探しながら、すば 
らしいアイデアをもった人の声には耳を傾ける。そんな態度を感じさせもする。
 
この作品は様々な映画作品の影響を受け、様々なよい要素を取り入れている。
(例「ゾンビ」「クイックアンドテッド」「死霊のはらわた」「レザボアドッ
グス」等)

北村龍平監督は17歳のときにオーストラリアに渡り、短編映画「EXIT」でオー
ストラリアの学生映画界にその名を知られるようになった。帰国後「ダウン・
トゥ・ヘル」で第一回インディーズムービー・フェスティバルでグランプリを
受賞した。

オーストラリアはハリウッドからみると辺境に当たり、オーストラリア出身の
俳優や監督がハリウッドで活躍するのむずかしいとも言われる。だが、オース
トラリア出身の俳優や監督は良質のエンタテイメント作品を作ることでも知ら
れている(例:メル・ギブソン)

新しい風は地方や辺境から吹いてくる。オーストラリアでスタートを切った、
才能と情熱のある監督が日本で映画を作る。この台風に呼応してサーフボード
を持って浜にかけつけた(←比喩)映画クルーたちがいた。撮影は日本ではあ
まり行われない2班体制で行われたという。――こうして「VURSUS」は完成した。

「VERSUS」は監督やスタッフたちがやりたいことをとことんまで実現するよう
行動し、なによりも楽しんで作ったのがよく伝わってくる作品である。

〈短所〉
上映時間が少々長い。後半、多少間延びする。テンポの問題だ。アクションが
メインの作品のため、多くのアクションシーンがある。そのため、せっかくの
斬新なアクションシーンが飽和状態になる。アクションシーン以外のシーンと
のバランスを調整してメリハリのある流れにするとよかっただろう。

〈長所〉
いろいろあるが、ここでは「ユーモア・笑い」について。主人公の男を追う二
人の男が特に「笑い」を担当している。スプラッターものや恐怖ものは、笑い
の要素をもっている。恐怖と笑いは表裏一体のものだからだ。
「笑い」の取り入れ方も様々である。ダイアローグ(会話)、アクション、撮
り方(カメラの動き、演出)。これらを総動員して「笑い」を用いている。そ
して作品の最後のシーンでは、この作品が最高の「コント」であることも証明
している。笑い・ユーモアのセンスをもったおちゃめな作品である。
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