« わかりやすくするための参考書籍 | Main | VERSUS-ヴァーサス- »

トリプルX(TRIPLE X)

cover
「トリプルX(TRIPLE X)」
ロブ・コーエン監督 2002年 アメリカ

○パワフルなプレミスを持ち、得意な分野で勝負している

〔1〕プレミス(Premise)
   ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア

―――――――――――――――――――――
新種のシークレット・エージェントが活躍する。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
エクストリームスポーツのカリスマであるザンダー・ケイジは、国家安全保障
局の眼にとまり、テロ組織を壊滅させるためのエージェントに任命される。
ザンダーはテロ組織に侵入し、めざましい活躍をする。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ザンダー・ケイジ
 がっちりタイプ。エクストリームスポーツのカリスマ。危険なゲームに命を
 賭ける男

△エレーナ
 細身のヒロイン。武装テログループ「アナーキー99」のボスの恋人

△アウグスト・ギボンズ
 細身の男。国家安全保障局(NSA)のベテランエージェント
 
△ヨーギ
 アナーキー99のボス。元ロシア軍将校


〔4〕・1 作品に必要なもの
―――――――――――――――――――――
▽優れたキャラクター ⇒ ザンダー・ケイジ
▽力強いストーリー  ⇒新種のシークレットエージェントが世界を救う
▽ユーモア       ⇒ザンダー・ケイジの人柄
▽新しい視点      ⇒アンチヒーローもの


〔4〕・2 プレミスの証明
―――――――――――――――――――――
新種のシークレットエージェントとは?
アンチヒーローである。法を犯しスリルを味わうことを楽しみとして、世界を
救う考えは持っていない。

こういったアンチヒーローとしてのザンダー・ケイジはエクストリームスポー
ツのカリスマで、体には刺青があり、体力、精神力、度胸、明晰な頭脳を持っ
ている。 
 

〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
パワフルなプレミスを持った作品。
エリート・エージェントのスパイアクションに対抗して、アンチヒーローを主
人公とする、思い切りのよい作品である。

ザンダーは世界がどうなろうと知ったこっちゃない。スリルを感じることがで
できるエクストリームスポーツを楽しんでいる。そんなザンダーがエージェン
トに任命される。最初はいやがっていたザンダーだが、テロ組織のボスの恋人
であるエレーナが組織を抜けたがっていることを知り、彼女の力になりたいと
思うようになる。
今までスリルを楽しむことだけをしてきたザンダーは、ひとりの人を救おうと
することで、やがて世界を救うことになる。

世界のことは知ったこっちゃないが、頼まれてやっているうちに世界を救って
しまう。
 
このようなクールなスパイアクションはいままで無かった。スパイアクション
というジャンルに新たな形を提示している。

プロット(筋)はとてもシンプルだ。スパイアクションという設定上、プロッ
トはある程度お決まりのパターンになるのはしかたない。これはOKであろう。

ユーモアもある。ザンダーとエレーナは、特殊装備をいくつも備えた車に乗る。
その車は火炎放射器やミサイル等ありとあらゆる武器を備えているが、ザンダ
ーは、もっとほかに使えそうなものはないのか、とエレーナに車のマニュアル
をもっと調べるように言う。そして選んだのが緊急脱出装置と水中で使う銛銃
である。この二つを利用してザンダーは自らの体と行動力で世界を救うために
行動を起こす。結局、車に装備した小型ミサイルが活躍したのは、道路を塞ぐ
幌貨車のようなものを壊しただけである。(従来のスパイアクションだったら
敵の乗物などを壊すため使われたるだろう)道具に頼るのではなく、基本は自
分の体と体力と精神力と頭脳と行動力であり、それを補佐する必要がある場合
にのみ、武器などの装備が使われるのである。
 
▽特徴的な事
・スパイアクションにアンチヒーローを主人公としたこと
・エクストリームスポーツ(BMX、スノーボード、スカイダイビング等)を
  取り入れたこと。

これらは、スパイアクションというジャンルの作品に新しい設定とアクション
を提供している。

思い切ったヒーロー像と派手なアクション。これを映像にするためには多大な
予算が必要だろう。

多大な資金で派手な映画を作るといえばアメリカ映画である。この作品のプレ
ミスを映像化するのに最も適した場所(アメリカ)で、最も適した男(ヴァン・
ディーゼル)を起用している。

だれもやらなかったアイデアを思い切って打ち出し、エクストリームスポーツ
を取り入れ、映像的にも迫力のある作品になっている。

得意な分野で勝負する、という良い見本の作品である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「トリプルX」 角川文庫
メル オドム (著), Mel Odom (原著), Rich Wilkes (原著), 富永 和子 (翻訳),
リッチ ウィルクス

「トリプルX~オリジナル・サウンドトラック」
 ユニバーサルインターナショナル
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社

「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メールマガジン→「ストーリー・アナリシス (Story Analysis)」


« わかりやすくするための参考書籍 | Main | VERSUS-ヴァーサス- »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference トリプルX(TRIPLE X):

» トリプルX [Rohi-ta_site.com]
DVDでヴィン・ディーゼル、サミュエル・L・ジャクソン、アーシア・アルジェント出演、ロブ・コーエン監督作品「トリプルX」を観ました。 ●ストーリー ザンダー(ヴィン・ディーゼル)はエクストリーム・スポーツ“Xゲーム”でカリスマ的な存在の命知らずなワルだった。 今日も気にくわない上院議員の車を奪い取り、パラシュートを付け、橋の上から車ごとダイブする自分のパフォーマンスをビデオに収めるのに成功し、彼を支持する大勢の仲間達から祝福を受けていた。 その時、突然、窓から完全武装した謎の..... [Read More]

Tracked on 09/03/2005 23:49

« わかりやすくするための参考書籍 | Main | VERSUS-ヴァーサス- »