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03/26/2004

千と千尋の神隠し

B00005S8LI千と千尋の神隠し (通常版)
柊瑠美 入野自由 内藤剛志 沢口靖子
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2002-07-19

by G-Tools
宮崎駿監督 2001年 日本

○独自の世界観が構築された舞台で少女が成長していく姿を描いた物語
  
〔1〕コンセプト(Concept)
  ストーリーの中心となるアイデア(着想)やトピック(出来事)

―――――――――――――――――――――
不思議な世界(霊々の世界)に迷い込んだ少女が様々な人(お化け)に助けら
れ、成長していく。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
霊々の世界に迷い込んだ千尋は、両親を豚にされ、危ないところを少年(ハク)
に助けられる。ハクの助言で湯婆婆のもとで働くことになり、周囲の霊たちに
助けられて仕事をおぼえていく。ある日、傷ついたハクを救う。やがて霊たち
の信頼を得るようになり、両親を助けて元の世界にもどる。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△荻野千尋(千)
 女の子(10歳)

△ハク
 少年(10~12歳ぐらい)。魔法の修行中。

△湯婆婆
 魔法使いの婆さん。油屋(湯屋)の当主。町の支配者。

△リン
 少女(14歳ぐらい)。千となった千尋に油屋の仕事を教える。

△釜爺
 油屋のボイラー室をとり仕切る爺さん


〔4〕・1 セントラルクエスチョン 
―――――――――――――――――――――
・千となった千尋は自分の名前を取り戻すことができるのか
・千尋は豚となった両親を元の姿に戻すことができるのか
・千尋は元の世界に戻ることができるのか。


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
独自の世界観が構築された舞台で少女が成長していく姿を描いた物語である。

物語には舞台が必要だ。観客がはじめに知りたいと思うことは主に以下の2つ。
1、物語の時間(TIME)と場所(LOCATION)はどこなのか。
2、主人公はだれなのか。どんな人物なのか。

湯婆婆がとりしきる霊々の世界は、観客のイマジネーションをかきたてる。
少年や少女は不思議なものやことに興味があり、それを楽しむことができる。
かつて少年や少女だった人達も、この作品を観ることで、かつての少年少女
時代の感覚を思い出し、様々なイマジネーションをはたらかせて作品を楽しむ
ことができる。

「千と千尋の神隠し」以前の宮崎駿監督作品やスタジオジブリ作品においては、
作品の最初と最後では主人公たち(少年・少女)に大きな変化はみられない。
たいていは清らかな優等生といった印象の主人公が、クセはあるが根はいい人
たちに出会って物語がすすんでいく、というものだった。こういった「清らかさ」
が売りであったとも言える。

「千と千尋の神隠し」の最初では、主人公の千尋は、けして悪い子ではないの
だけど、かといって「清らかな優等生」ではない。こういった、観客に受け入
れられる「弱さ」を持った主人公を設定することで、霊々の世界にまぎれこん
でしまった千尋の変化(成長)が描きやすくなる。もちろん観客の心をしっか
り掴むこともできる。

油屋で働く霊たちは金に踊らされて大騒ぎになったりする。だが霊ひとりひと
りはけして悪い霊ではなく、懸命に働く千(千尋)を助けてくれたりもする。

この作品では対比が効果的に用いられている。
対比の対象は「千尋」と「霊たち」である。千尋は人間である。霊たちは霊で
ある。この大前提があると話がわかりやすくなる。カオナシが出す金に踊らさ
れて大騒ぎになる油屋の霊たちのなかで、千(千尋)ははっきりと「金はいら
ない」と言う。このシーンでわかることは、名前さえ奪われて油屋で働く身と
なった千尋だが、自分の考え方や生き方をしっかりもった人になっている、と
いうことである。

霊たちと人間である千尋という対比関係を設定することで、千尋の成長(自分
の価値観をもって生きることを学ぶ)がわかりやすく描かれている。

誰に向けて作った作品か(ターゲットとする層はどこか)。少年・少女に向け
て作った作品である。そして、少年・少女に伝えたい、しっかりしたメッセー
ジをもっている。
また、少年・少女に観てもらうために、不思議な世界(霊々の世界)を舞台に
している。

物語のテーマ、メッセージを伝えるための舞台設定を考え抜いた作品である。

少年・少女だけでなく、かつて少年・少女だった人達もたのしめる作品――親子
で楽しめる作品――は、ヒットする可能性が最も高いといえる。

ヒットに必要なものの1例
〔完成度の高い世界観+弱さをもった主人公の成長+親子でたのしめる〕

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Comments

すごく深く掘り下げて書いてありますね・・・
なんだか自分が表面的にみていたんじゃないかと、反省しきり。恥
これまでは清らかな優等生と・・・のくだりでは激しくうなずいてしまいました。(笑)
確かに今までの主人公とはちょっと違いますね。
まあ、クセのある人(霊?)達との関わりの中で成長という点は一緒なんでしょうが・・・
読み応えのある記事に感服いたしました。

TB&リンクさせていただきます。

Posted by: chibisaru | 12/11/2004 at 02:26

はじめまして。
わかりやすさと奥の深さがとても楽しく
楽しみに拝読させて頂いてます。
特に
>名前さえ奪われて油屋で働く身と
なった千尋だが、自分の考え方や生き方をしっかりもった人になっている
にはジーンと来ました。

私のは凄く狭い感想にすぎないのですが
よろしかったらTBさせて下さい。

Posted by: あれこれ | 12/11/2004 at 11:22

はじめまして。

TBさせていただきました。
趣旨とそぐわない場合は削除ください。

Posted by: trichoptera | 11/18/2005 at 14:01

>trichopteraさん
こんにちは。TBありがとうございます。
とても深く興味深い記事からTBいただいて嬉しいです☆宮崎さんは、作品ごとにいろいろな面をみせてくれますよね。「千と千尋~」はそのなかでもかなり好きな作品です。よかったらまたTBしてくださいね。

Posted by: わかスト@管理人 | 11/18/2005 at 18:07

TBありがとうございました。

メール機能に気づいてなかったです。
申し訳ありませんでした!

またTB機会があればさせていただきます。

Posted by: trichoptera | 11/20/2005 at 14:02

安本美典氏の「出雲神話と邪馬台国」と言う本によると中海沿岸の島根県安来市が文献学的に根の国に比定されるとしています。そこには伊邪那美神のお墓が古事記の記述どうり比婆山にあり、イザナミの子、スサノオが「安来」という地名を名付けたと出雲神話にあります。また、出雲とは出鉄のことで、この地でさかんだった、たたら製鉄のことだという。げんに、スサノオの詠んだ日本最古の和歌「八雲立つ出雲〜」は「焼雲立つ出鉄〜」という意味でたたら製鉄の操業情景を歌ったものという解釈もある。
さらに考古学的にも重要な地域らしく籔田絃一郎氏や関裕二氏などはこの地の鉄が弥生後期に大和にながれ日本建国が成ったとしています。このように古代日本に重要な地域なのにひた隠しにされていた。これを暗喩的に批評したのが有名ジブリ映画「千と千尋の神隠し」らしいです。

Posted by: 須賀鹿男 | 11/02/2009 at 14:07

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