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モンテ・クリスト伯

「モンテ・クリスト伯」
ケヴィン・レイノルズ監督 2002年 イギリス・アイルランド共同制作
原作:アレクサンドル・デュマ

○波乱万丈。船、島での宝探し、牢獄、パリ社交界、決闘、といった見せ場が
 豊富ななかに、人間の負の部分(妬みや憎しみ)や人間の強い意志と愛の力
 を描いている。

〈時代〉TIME   19世紀前半 
           1814年、ナポレオン・ボナパルトがエルバ島へ流される。

〈場所〉LOCATION フランスのマルセイユ、パリ、イフ島

 〔1〕テーマ(Theme)
―――――――――――――――――――――
愛と憎しみ


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
二等航海士のエドモンと伯爵子息のフェルナンはエルバ島へ上陸。エドモンは
ナポレオン・ボナパルトから密書を託される。マルセイユにもどったエドモン
はこの密書がもとでイフ島に幽閉される。13年の幽閉生活から脱出したエドモ
ンは失われた自分を取り戻し、愛するメルセデスを取り戻すため、復讐心を燃
やしてモンテ・クリスト伯として社交界にのりこむ。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△エドモン(モンテ・クリスト伯)
 二等航海士。反逆罪でイフ島の牢獄へ送られる。13年後脱出。
 モンテ・クリスト伯となる。

△メルセデス
 エドモンの恋人。町娘。

△フェルナン
 エドモンの親友。伯爵の子息。メルセデスに想いをよせる。

△ファリア司祭
 イフ島の牢獄に幽閉されている。元伯爵付書記官。元軍人。
 

〔4〕・1 モチベーション(動機づけ)
―――――――――――――――――――――
フェルナンはなぜエドモンを陥れたのか。
・フェルナンはメルセデスに想いをよせていた。だが、メルセデスはエドモン
 に夢中であった。 
・エルバ島から戻ったエドモンは二等航海士からいきなり船長に昇格した。
 さらにメルセデスと結婚しようとしている。伯爵子息である自分が平民のエ
 ドモンに負けることが許せなかった。
・フェルナンは伯爵子息だが長男ではない。爵位を正式に継ぐことはできない。
 社交界では伯爵にはなれず、愛するメルセデスも手に入れることができない。
 
そんなとき、エドモンの上司だった一等航海士と話す。一等航海士はエドモン
が船長になったことを快く思っていない。二人の利害は一致し、エドモンを陥
れる作戦を練る。

さらに、ナポレオンの密書のことでエドモンを捕らえた役人は自分の身内(父親)
がナポレオンの庇護者であることが公になることを怖れ、エドモンをイフ島へ
送る。

フェルナン  ⇒愛する人(メルセデス)を手に入れたい。
一等航海士 ⇒船長になれない悔しさ。船長になったエドモンが憎い。
役人     ⇒自己保身のため、身内(父親)の活動を隠したい。


〔4〕・2 エクスターナル・コンフリクツ(External Conflicts)外的葛藤
(主人公を危険や不安に陥れようとする敵や第三者によって作り出される困難)

―――――――――――――――――――――
ナポレオンから密書を託されたエドモンは、反逆罪としてイフ島に幽閉される。
そこは、断崖絶壁に囲まれた政治犯専用の牢獄である。無実かどうかは関係な
く、政局がひっくりかえるようなことがなければ、死ぬまでイフ島から出るこ
とはできない。(死んだら袋詰にされて断崖から海へ放り込まれる)


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
波乱万丈のストーリーとは、まさにこの作品のことである。愛と憎しみを壮大
なスケールで描いている。

〈エドモンとフェルナンは共に愛の力で動いている〉
・エドモンは愛する人を取り戻したい(=自分を取り戻すため)。愛を失うと、
 愛を奪った者への憎しみとなる。
 
・フェルナンは愛する人を手に入れたい。かなわぬ愛の悲しみは、エドモンへ
 の憎しみに変わる。

無垢な青年であったエドモンは、誠実(ナポレオンの手紙を預かる)さと真っ
直ぐな愛のために幸福(船長になる。メルセデスと結婚しようとする)をつか
みかける。
           ↓
しかし、フェルナンと一等航海士と役人それぞれの思惑と利害の一致により、
エドモンはイフ島へ幽閉される(障害)
           ↓
幽閉中、ファリア司祭と出会い、知識(教養)と技術(剣術その他)を学ぶ。
(出会い、鍛錬、訓練)
           ↓
イフ島を脱出。海賊になる。(ファリア司祭から学んだ技術が活かされる。
新たな人脈を確保)
           ↓
モンテ・クリスト伯となる(ファリア司祭から学んだ知識が活かされる)
           ↓
周到で綿密な計画を立てて復讐する。
           ↓
愛する者を取り戻し、共に生きていく決心をする。(新たな出発)

無垢な青年であったエドモンが、人間の妬みや憎しみなどのために困難にあう。
困難にあって様々な事を学び、訓練し、綿密で周到な戦略を立てて、復讐をは
たしていく。そんななか、モンテ・クリスト伯の子分になった男が「旦那の愛
する者はもうそばにいるじゃないか、復讐はもう十分だ」というような意味の
ことを言う。モンテ・クリスト伯はそれでも復讐をやめようとはしない。やが
て、愛するメルセデスが危うく死にそうになってしまう。愛のために復讐を誓
った男が、復讐をつづけていくことで、いつのまにか、愛のために親友を陥れ
たフェルナント同じように憎悪にとり込まれそうになる。そのときの子分の、
このセリフが作品の一番の核心だろう。

エドモンの人生は平民 ⇒囚人 ⇒伯爵と波乱万丈である。
船、島での宝探し、牢獄、パリ社交界、決闘、といった見せ場が豊富ななかに、
人間の負の部分(妬みや憎しみ)や人間の強い意志と愛の力を描いている。

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「モンテ・クリスト伯〈1〉」 アレクサンドル デュマ (著) 岩波文庫
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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社

「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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Tracked on 10/04/2004 21:51

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