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03/27/2004

K-19:THE WIDOWMAKER

K-19
ハリソン・フォード キャスリン・ビグロー リーアム・ニーソン ピーター・サースガード
ポニーキャニオン 2003-07-02


by G-Tools
キャスリン・ビグロー監督 2002年 イギリス・アメリカ

○圧倒的な緊張感をもって全世界に語りかける作品
  
〔1〕プレミス(Premise)
   ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア

―――――――――――――――――――――
ソ連原子力潜水艦内の原子炉に故障が発生する。乗組員は放射能洩れを防ごう
とする。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
冷戦下の1961年、ソ連原子力潜水艦K-19が出航する。きびしい訓練の後、
テストミサイルの発射に成功する。そして、任務のためK-19がNATOの偵察基地
近くにきたとき、原子炉の冷却装置にひび割れが生じる。K-19の乗組員たちは
放射能洩れを食い止めようとする。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△アレクセイ・ポストリコフ艦長

△ミハイル・ポレーニン副長

△ヴァディム
 原子炉担当官


〔4〕・1 シチュエーショナルコンフリクト(状況的葛藤) 
―――――――――――――――――――――
極限状況でどうするのか意見が対立する。
 
ポストリコフ艦長 × ポレーニン副長

国家と仲間を守るという点で意見は一致している。だが、守り方の方法に意見
の相違がある。


〔4〕・2 成功のための3つの要因
―――――――――――――――――――――
〈1〉ストラクチャー(脚本の構成)
 ○グランドホテル型(空間・場所を限定する)
  潜水艦という場所・世界に、新しい艦長が赴任する。新しい艦長(ピスト
  リコフ艦長)が赴任したことによって、K-19内の乗組員たちに不満など
  が広がる。

〈2〉独創性
 ○新鮮味があるのか 
 ○今まで作られてきた作品となにか違いがあるのか
 ○それはユニークか
 ○フック(観客の興味を惹くもの)はあるか
 ○説得力があり、プレミス(コンセプト)に惹きつけられるか

 これらの問いに対する答えは、「この物語は実話である」ということ。米ソ
 冷戦下に28年間秘密にされていた放射能洩事故の映画化は、観客の注目を
 集めるのに十分な話題性をもっている。
   
〈3〉マーケティング
 ○観客が欲してるものはなにか 
  ⇒K-19で何があったのか知りたい
  ⇒極限状況のなかでの人間の勇気に感動したい

 ○映画作品と観客との間にどのようなコネクションを設定するか
  ⇒大切なものや人(国家=家族。乗組員仲間)を救いたいという気持


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
圧倒的な緊張感をもって全世界に語りかける作品である。

実話は話題性がある。しかし実話が観客の共感をかならず得るとはかぎらない。
なぜなら、実話の出来事が自分の出来事として感じるかどうかは、その実話の
内容によって人それぞれだからだ。実話の当事者にとっては劇的な出来事あっ
ても、似たような経験がない観客にとっては、はるか遠くのしらない土地の他
人の出来事としか感じないからである。

その点、「K-19」は他人事では済まされない実話の力をもっている。他人事で
は済まされない事とは「核が関連する事故」であった、ということである。

キャスリン・ビグロー監督の言葉
「もしあの時、K-19で原子炉融解が本当に起こっていたら、私たちは今日ここ
に存在していなかった。彼らの物語を風化させてはいけない」

全世界の人たちに関係がある事故であったという実話は、米ソ冷戦時代という
時代背景を際立たせ、全世界に語りかける力を持っている。

○対比
きびしい訓練を乗り越えてテストミサイルの発射に成功した乗組員たちは、氷
上でサッカーや記念撮影をする。記念撮影では、任務をやりとげた達成感で乗
組員たちの顔に笑顔がみえる。だが、この後の任務でNATOの偵察基地に向かっ
たK-19は放射能洩事故を起こす。
 
○対立
ポストリコフ艦長 × ポレーニン副長
ポストリコフ艦長 × K-19下士官、乗組員 

このように対比や対立があることで、それぞれの状況や考え方がわかりすく劇
的になっている。

K-19 はハリウッド映画であるがロシア側を描いている。本来ならば一番の当
事国であるロシアがこういった映画を作るとよいだろう。だが制作資金などの
問題でそれは難しいことは想像がつく。ハリウッド映画がロシア側の事情を描
くというのは稀なことだろう。作品の内容は、米ソ冷戦下にありながらも、K-
19の乗組員は家族のいる国や仲間を助けたいという思いから行動を起こした、
というものである。

もし監督が作品のテーマを国家間の善対悪の対決にしたならばどうだろう。豊
富な資金を背景に物語の力で他国の事情さえも思いどうりに描いてしまうこと
になったろう。
豊富な資金力に支えられたハリウッドは物語の力を用い、その気になれば他国
の事情さえ、どのようにも描くことができるだろう。
 
〔資金+物語+映像〕がもつパワーの大きさがうかがえる。
そういった意味で、この作品は現代を描いているともいえる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「K‐19」角川文庫 ピーター ハクソーゼン (著), Peter Huchthausen (原著),
     楠木 成文 (翻訳), 秋山 信雄
「K-19: The Widowmaker (Original Motion Picture Score)」
    [FROM US] [IMPORT] [SOUNDTRACK]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社
「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社

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Comments

私は作者ピーター・ハクソーゼン大佐(退役)がユーゴーで海軍武官を勤めていた時に、幾度か合ったことがあります。しばらく連絡が途切れていましたが、最近復活し、Eメールの交換を始めました。彼自身の評価によれば、これまでの潜水艦映画で一番良いのは、何といっても「ダス・ボート」だが、”K19”は実話であるので、”レッドオクトーバー”よりも優れているとのことでした。私はまだ日本語版を見ていないので、邦訳の良否については論評できませんが、技術的には極めて優れた出来で、文句のつけようもありません。モスクワの試写会で、犠牲者の未亡人の一人がジャーナリストのマイクを取り上げ、このような映画をなぜロシアが作らなかったのか、なぜ外国が作ったのか、と詰問する場面があったそうで、非常に感動的であったと、同大佐は述べていました。

Posted by: 川村庸也 | 03/21/2005 at 15:37

>川村庸也さま
こんにちは。コメントありがとうございます。
とても貴重な情報をお寄せいただきほんとうに感謝
です。
たしかに「レッドオクトーバー」もよい作品ですが
作品は推測に基づいたフィクションだったと記憶し
ています。
一方「K‐19」の実話の力というのは圧倒的です。
まるで映画館がK‐19の艦内のように緊迫して感
じられたのは作品の持つ緊迫感の表れでしょう。
この作品はやはりロシアでこそ作られるべきであ
ったと思います。
モスクワでの試写会での様子をお聞きするだけで
も心に訴えかけてくるものを感じます。
私は潜水艦などの艦船の技術的なことに関しては
くわしくはわかりませんが、素人の目からみても、
潜水艦の存在感やリアリティがひしひしと伝わって
きたのを覚えています。
また貴重な解説やコメントをしていただけたらう
れしいです。よろしくお願いします。


Posted by: わかスト@管理人 | 03/22/2005 at 17:18

I read this paragraph fully concerning the difference of hottest and earlier technologies, it's amazing article.

Posted by: free music downloads | 02/27/2015 at 19:21

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