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03/03/2004

ドッグヴィル(DOGVILLE)


cover

↑書籍リンクです

ドッグヴィル

ラース・フォン・トリアー監督/2003年/デンマーク/177分


〔1〕ログライン(Log Line)ストーリーを述べてある一文
―――――――――――――――――――――
ギャングに追われてやって来た女によって、村の人々の態度や行動が変化し
ていく。


〔2〕ストーリー(Story) 簡略に
―――――――――――――――――――――
アメリカ大恐慌時代。ロッキー山脈の麓のちいさな村――ドッグヴィルに、
ある晩ひとりの若い女がやってきた。ギャングに追われてるらしい。ドッグ
ヴィルの人々は彼女を村にかくまうが、やがて村人たちの隠れていた面が露
となっていく。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△グレース
 ドッグヴィルにやって来た女

△トム・エディソン・ジュニア
 医者の息子

△リズ・ヘンソン
 ガラス工房の娘。村を出ることを夢見ている。
 トムに想いを寄せられている

△ジンジャー夫人
 雑貨店の経営者

△ヴェラ 
 林檎農園主の妻

△ジャック・マッケイ
 盲目の老人

△ビル
 リズの兄

△チャック
 林檎農園主

△マーサ
 教会の管理人


〔4〕目次
―――――――――――――――――――――
プロローグ 村とそこに住む人々の紹介
第1章   ドムが銃声を聞き、グレースと会う
第2章   グレースはトムの計画に従い、肉体労働を始める
第3章   グレースが挑発的な試みに喜びを見出す
第4章   ドッグヴィルの幸せな日々
第5章   とにかく独立記念日
第6章   ドッグヴィルが牙をむく
第7章   ついに嫌気がさしたグレースはドッグヴィルを去り再び新たな日を迎える
第8章   集会で真実が語られトムが退席する(だが後で戻る)
第9章   ドッグヴィルに待ち望んだ来訪者たちが現れ、映画は終わる


〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
シンプルな空間でストーリーが繰り広げられることで、際立って浮かび上がっ
てくる人間の姿。

ストーリーのタイプは「ある人物がある空間にやってくる」というものだ。そ
れまで平穏に暮らしていたドッグヴィルの人々は、グレースの出現によって動
揺し、悩み、決断し、そしていままで隠れていた感情や欲望が露になっていく。

貧しいながらも生活に必要なものはある。だがそれだけはなく、もっと村や国
をよくするためになにかするべきではないのか。なにかすべきことはきっとあ
るにちがいない。そう考えるトムはこれを村人に説くだけでは物足りずに、変
化のきっかけとなる実例がないものかと考えていた。そこに、ギャングに追わ
れたグレースがやってくる。

よりよくするためになにかすべきじゃないのか。そこへ困っている人が現れた
のだ。ドッグヴィルの人々は彼女(グレース)を助けて、自分たちの正義や、
善意の行動を誇りに思う。だが自分たちが危険が及びそうになると、より大き
な見返りを求めるようになる。こうして村人の欲望と嫉妬と怒りが呼び起こさ
れて、次第に堕落していく。

こうした状況をなんとかしたいと望むトムは、村の集会でグレースに話をさせ
る。だが村人たちの反応は冷たく、考えや行動を改める様子はみられない。

また、グレースはことあるごとに「傲慢(arrogance)は罪」だと言う。だがグ
レースの父は「私が知るなかで最も傲慢なのはグレースおまえだ」といった意
味のことをグレースに言う。

誰かをゆるしたり、受け入れようとしたりするのは、自分が正義で善良だとい
う考えがあるからであり、それこそが傲慢であるというのだ。

グレースは自分が傲慢だったがために、ドッグヴィルの人々が変わってしまっ
た現実をみつめ、自分の信じた正義が崩れ去って行くのを身をもって感じる。

ハリウッド映画には、絶望のなかにあっての希望や「前向き」な姿を描く作品
が数多いが、アメリカ合衆国の外からの視点で描かれた作品である「ドッグヴ
ィル」は、「小さく素朴な村に善良な人々が暮らす理想郷」という希望に満ち
た夢をもっていたグレースが失望と落胆と自らの甘さと愚かさと、結局は父の
と同じ道を歩まなければならないというなんともやりきれない思いでドッグヴ
ィルを去るという「後向き」な姿を描いた作品だ。

こうしたことは、アメリカ合衆国の現状を映す鏡となっている。これは監督の
狙いなのだろう。

この作品の特に斬新なところは世界観だ。床に白い線で通りや家や公園や炭坑
の位置を書き、最小限の家具だけを置いた空間で撮られた、この独特な世界に
慣れてくると、ドッグヴィルの村がまさにそこに存在しているかのように浮か
び上がってくる。登場人物たちのキャラクターがしっかりしており、ストーリ
ーの展開が巧なので、想像力が刺激されてそうなるのだ。

また、映画という映像作品でありがらナレーションを多用している。これは成
功している。床に書かれた白い線とシンプルな家具だけという世界だからこそ、
ナレーションが活きるのだ。

おもしろい小説を読んだときのことを思いだしてみよう。本の中の世界が頭の
中に広がっていたことだろう。「ドッグヴィル」ではそれと似た感覚が味わえ
るだろう。

どんなに複雑で大きい事柄も、シンプルで小さいまとまりにしてみると、すっ
きりとわかりやすくなることがある。それまで見えなかった面が見えてくるこ
とがあるのだ。(※1)

映画をドキュメンタリーとすると、どんな映画作品も、複雑な事柄をシンプル
なまとまり(映画作品)にすることで、つくり手は観客になにかを伝えようと
する。観客はそれを受けて、さまざまな視点を手に入れることができる。

ちょっとスゴいの観たよ。と友人に話してみたくなる作品だ。おすすめである。

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∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社

「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
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※1 参考図書
  「世界がもし100人の村だったら」
  池田 香代子 (その他), C.ダグラス・ラミス (その他) マガジンハウス
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