« 簡単明快に | Main | テキサスレンジャーズ(TEXAS RANGERS) »

03/14/2004

サイン(SIGNS)

cover
「サイン(SIGNS)」
M・ナイト・シャマラン監督・脚本・製作・出演 2002年 アメリカ

○考え抜かれた戦略を持った作品

〔1〕テーマ(Theme)
―――――――――――――――――――――
信念


〔1〕コンセプト〈ストーリーの中心となるアイデア(着想)やトピック
        (出来事)〉

―――――――――――――――――――――
世界の終わりが訪れたとき、家族はどうなるだろう?


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
ペンシルバニア州バックス郡。妻の事故死をきっかけに牧師を引退したグラハ
ム・ヘスは農業を営んでいる。ある日かれの畑に巨大なミステリーサークルが
出現する。それを境に彼の周りで様々な怪奇現象が頻発する。やがてそれは全
世界的な広がりを見せ、ヘス家に危険が迫っていく……。


〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△グラハム・ヘス
 元牧師。妻の事故死をきっかけに農夫になる

△メリル・ヘス
 グラハムの弟。マイナーリーグホームラン記録保持者で
 三振王の過去を持つ

△モーガン・ヘス
 グラハムの長男。喘息の持病がある。

△ボー・ヘス
 グラハムの長女。感受性が強い。

△レイ・レディ
 獣医。居眠り運転でグラハムの妻を死なせる。


〔4〕・1 テーマを伝える
―――――――――――――――――――――
あるテーマを伝えるためには、どのような状況設定や仕掛けが効果的か。
 
状況設定……農場を営む一家。
仕掛け ……世界の終わりが訪れるかもしれない。

このような状況設定にすることの有利な点は2つ。
〈1〉世界の終わりが訪れるとき、ある一家に焦点を絞る。これにより、物語
   が散漫にならずにすむ。
〈2〉世界の終わりが訪れたとき、1番大事なものはなにか――それは家族であ
   る――というメッセージを表すことができる
 

〔4〕・2 インターナル・コンフリクツ(Internal Conflicts)
    (内的葛藤。矛盾または未解決な問題)

―――――――――――――――――――――
妻の事故死をきっかけに牧師をやめて農夫になったグラハム。彼は、すべては
単なる偶然で、所詮この世は自分次第と考えるようになっている。こうしたグ
ラハムの内面的な考え方が、ミステリーサークルの出現にはじまる怪奇現象に
遭遇することで、、様々に思い、考えをめぐらせていき、やがて変化する(信
じることを学ぶ)。


〔4〕・3 ストーリーにおける偶然と必然
―――――――――――――――――――――
作品のなかに偶然が多く使われると、ご都合主義だ、と言われることがる。
これは、「物事にはきっかけがあるはずだ」という考えによるものだ。ストー
リーとは、ある意味で、きっかけを描くもの、とも言える。

例えば、世界ランキング1位のテニスプレーヤーに「テニスをはじめたきっかけ
はなんですか」と質問したとする。「きっかけはありません、朝起きたら顔を
洗うのと同じように、ぼくは(私は)あたりまえのようにテニスラケットを持
ってボールを打ったんです」と答えたのでは、みな安心できない。
そこで、たとえ嘘でも「ぼく(私)が5歳のとき大きな手術を受けることにな
って、そのとき父が元気になったらなにかスポーツをするとよいと、テニスラ
ケットを買ってきたんです。手術は成功して……」と答えると、人々は大きく
頷くのである。つまり、人は物事にはなにか理由があるという説明を望んでい
る。その説明にもっとも効果的な方法のひとつが、ストーリーなのである。

こういった性質をもったストーリーを作るときに、必然=ペイオフ(payoff初
めに提供されて後に劇的に使われる情報や工夫)を用いながら(妻の最後の言
葉、メリルのホームラン記録、モーガンの喘息、ボーの水)、偶然を用いてい
る。偶然が使われることによって、作品がご都合主義だと言われるどころか、
逆に緊張感を高め、真実を伝えるための「サイン」という意味が浮き彫りにな
っている。


〔5〕Comment(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
考え抜かれた戦略を持った作品である。

戦略の種類
▽ハイコンセプト(High Concept)
(人々を引き付ける強烈な仕掛けを持つストーリー)
 超自然現象が登場する。こういたったものに人々は関心がある。知らないも
 の、未知なもの、制御不能なものに対する興味がある。
 しかし、これはストーリーのテーマやメッセージを伝えるための状況作りの
 要素でしかない。

▽ストーリーの構成とテーマにおける関係
 ストーリー作りにおける偶然と必然が、ストーリーのテーマやメッセージを
 伝える要素の一部となっている。

▽描くテーマ、内容の状況設定
 世界の終わりが訪れたとき、という壮大な設定を、限定した身近な事柄とし
 てじっくり描いている。(「アルマゲドン」と対比するとわかりやすい)
 
▽リアリティ
 世界の終わりが迫っていることを表現する方法。(「アルマゲドン」との比較)
 アルマゲドン……火の球(隕石)が降ってきてビルや建物を破壊する。
 サイン   ……ヘス家のテレビの映像とラジオの声。
  
こんにち、世界の出来事はテレビやラジオを通して知るというのが一般的だろ
う。世界で大事件が起こってることをテレビで知るというのは、ビルが隕石で
破壊される映像を見るよりも、リアリティがある。

〈演出について〉
▽悪のメタファーとしての「敵」が登場する。敵はなかなか姿を現さない。
 背の丈を越えるトウモロコシの葉がザワザワと動いたり、暗闇い足音がした
 りする。ヘス家が絶体絶命の危機に遭遇するときも、見えざる敵の大きな音
 だけがする。
 危機が迫っていることを音で表現し、そんな極限状況のなか、グラハムは子
 供たちに語りかける(大事なメッセージを伝えるための状況設定)。
 
▽ユーモア・笑い
 ユーモアのあるシーンの次に緊張するシーンを入れている。展開にメリハリ
 がある。
  
▽ナレーション
 使っていない。ストーリーの展開によって必要な情報が提示されていく。
------------------------------------
小道具、セリフ、状況設定、シーンすべてに無駄がない。
 
特殊な状況に置かれることで、それまではっきり表に出ていなかった家族の不
満などが噴出する。だが、そのことによって家族の絆がふたたび深まる。そし
て、危機に共に立ち向かうことで、登場人物たちはそれぞれ内面的未解決な問
題を解決する。

ハイコンセプト(超自然現象)で観客を引きつけ、それだけだったら観客は限
定されるだろう。だが、映画を観終わると、「なにか」が深く心に残ることに
なる。この「なにか」が普遍的な要素を持ってるため、観客が限定されない。

大事な2つ――ハイコンセプトとしっかりしたテーマ――があることで、この
作品は多くの観客に受け入れれる可能性が高いといえる。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
∇参考・用語引用図書 
「ストーリーアナリスト」 
1999フィルム アンド メディア研究所 愛育社

「ハリウッド・リライティング・バイブル」 
2000 フィルム アンド メディア研究所 愛育社
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メールマガジン→「ストーリー・アナリシス (Story Analysis)」
 
 

|

« 簡単明快に | Main | テキサスレンジャーズ(TEXAS RANGERS) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21326/298485

Listed below are links to weblogs that reference サイン(SIGNS):

« 簡単明快に | Main | テキサスレンジャーズ(TEXAS RANGERS) »