クリント・イーストウッド監督/アメリカ/2004年/133分
F・X・トゥールの短編集「Rope Burns」におさめられた短編を元にして
いる。
第77回アカデミー主要4部門受賞作品
作品賞(クリント・イーストウッド、アルバート・S・ラディ、
トム・ローゼンバーグ)
監督賞(クリント・イーストウッド)
主演女優賞(ヒラリー・スワンク)
助演男優賞(モーガン・フリーマン)
物語の紹介
―――――――――――――――――――――
実の娘に縁を絶たれた初老のトレーナー(フランキー)が、家族の愛に恵まれない女性ボクサー(マギー)に出会う。
マギーはフランキーをボスと呼んで慕い、信頼する。
フランキーは当初マギーを拒絶するが、やがて彼女のトレーナーとなって数々の試合で勝ち続けていく。
主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△フランキー・ダン
ボクシングトレーナー。ボクシングジム経営者。
△マギー・フィッツジェラルド
女性ボクサー。
△スクラップ
ボクシングジム住み込みの雑用係
△ビッグ・ウィリー
ボクサー
△ミッキー・マック
やり手マネージャー
△サリー
マネージャー
△アーリーン
マギーの母
△“青い熊”ビリー
ドイツ人ボクサー。汚い手を使うことで知られる。
作品案内(ガイド)
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【おおまかに言うとどんな作品?】
家族を失い、深い傷を負って苦しみの中にある男女の、絆と愛の物語。
【見どころ・特徴は?】
‡ 作品を包む「オーラ」と「匂い」 ‡
ストーリーはシンプルです。シンプルすぎるぐらい。でも、作品には「オーラ」と「匂い」があります。
「オーラ」は目に見えないし、「匂い」だって嗅覚が感知するわけではありません。でも、だからこそこの2つを醸し出すことができる作品というのは滅多にありません。
これはクリント・イーストウッド監督の撮影手法によるところも大きいのでしょう。
最近流行りの短いカットを連続して繋げる、という撮り方をしていません。
ボクシングの練習をするシーンでも、言葉少なげに会話するフランキーとスクラップのシーンでも、画面が落ち着いていつつ、重みがあってしっかりしている印象を受けます。
撮影技術に凝るわけでもなく、突拍子もない設定をするわけでもありません。
だからこそかえって、ひとつひとつのシーンが「匂い」を持つようにななるのです。
‡ アイリッシュ―キリスト教カトリック、緑、ゲール語― ‡
フランキーもマギーもアイリッシュです。
フランキーはアイルランドのゲール語の本をいつも読んでいます。ゲール語はアイルランドの公用語ですが、英語しか話せない人が増えてています。ゲール語はいまではあまり使われなくなっています。
またフランキーは教会のミサにも通っています。神父とキリスト教の三位一体論(父と子と聖霊)の解釈について議論したりもします。三位一体を作品に重ね合わせてみると、フランキー(父なる神)とマギー(子なるイエス)とスクラップ(聖霊)という観方もあります。
とにもかくにも、アイルランドの大多数はカトリック教徒なのです。
フランキーは生粋の江戸っ子ならぬ、生粋のアイリッシュなんですね。
キリスト教カトリックは妊娠中絶や尊厳死を認めていません。キリスト教宗派のなかでも命に関して厳格なのです。
フランキーはアイリッシュであることを誇りに思っており、キリスト教カトリックであるのですが、かつてボクサーを助けることができなかったという思いや、実の娘と縁を絶たれていることから、宗教・生き方について苦悩しています。これが後にフランキーがマギーに起こる出来事をどう受けとめ、そしてどのような決断と行動をするのかということにつながるのです。
アイリッシュカラーといえば緑。いくつかのシーンは緑かかった色をしています。
またイギリスチャンピオンとの試合での入場でマギーは「モ・クシュラ」というゲール語の刺繍をほどこした緑のガウンを着て登場します。このときフランキーも緑のジャンパーを着ています。
そんな姿をみたアメリカ在住のアイリッシュ・アメリカンは応援にも熱が入ります。またヨーロッパを転戦したともマギーは大人気です。世界中のアイリッシュに熱狂的に応援されます。
移民としてアメリカ合衆国にやってきたアイリッシュ系の人々はたくさん苦労しました。移民ですから、よそ者扱いされたんですね。
これについて参考になる映画作品はマーティン・スコセッシ監督の「ギャング・オブ・ニューヨーク」です。ネイティブズ(アメリカ生まれの住人たちの組織、イギリス系)とデッド・ラビッツ(アイルランド移民たちの組織)の対立を軸に主人公の生き様が描かれます。
「ギャング・オブ・ニューヨーク(GANGS OF NEWYORK)」作品レビュー
移民であるアイリッシュの人々は、肉体労働系の仕事に就くことが多かったのです(警官や消防士)。
そしてアメリカ合衆国の主流というか、いわゆるマジョリティはアングロサクソン・白人・キリスト教プロテスタントです。
こういった宗教・宗派という面から、マギーが英国チャンピオンと対戦するシーンを次のような図で表してみましょう。
マギー(アイルランド・カトリック)
↓
×
↑
英国チャンピオン(イギリス・プロテスタント)
アイルランドとイギリスって歴史的にみても、いろいろあるんです。そのあたりの背景を基にした作品にブラッドピットがIRAの闘士役、ハリソン・フォードがアイルランド系の警官役のアラン・J・パクラ監督「デビル(THE DEVIL'S OWN)」があります。
そんなこんなで、マギーの試合は超盛り上がるんですネ。
【その他】
監督のクリント・イーストウッドはいわゆるマカロニウェスタンという西部劇で活躍して名を売りました。その後「ダーティーハリー」シリーズで人気を不動のものとします。監督業にも進出して「許されざる者」「パーフェクト・ワールド」
「目撃」「ミスティック・リバー」など多数撮りました。
マギー役のヒラリー・スワンクはアメリカンドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」でシングルマザー役もしていました。映画「ボーイズ・ドント・クライ」主演でオスカー女優になりました。
スポーツ・根性・サクセス・アクションを期待すると、はずします。
これはボクシング映画ではありません。絆と愛の物語です。
実の娘に絶縁された男と、父を失って母の愛がほしくてもそれが叶わない娘が出会い、お互いにかけがえのない存在になっていく愛の物語なのです。
こちらアイリッシュについて詳しくわかりやすく解説していらっしゃいます。参考にさせていただいています。↓
シカゴ発 映画の精神医学 「ミリオンダラー・ベイビー」
基本レビューはここまで↑
これより下はネタバレもアリです↓
【アイリッシュ関連】
∇アイルランド共和国
首都タブリン。立憲共和制。北アイルランドはイギリス領。
19世紀の大飢饉で世界中へ続々と移民する。
∇北アイルランド
北アイルランド紛争。アイルランドへの帰属を求めるカトリック系住民と、イギリス領にとどまるとするプロテスタント系住民の対立から発展。
カトリック系の反英武装組織アイルランド共和軍(IRA)の闘士役をブラッド・ピッドが演じたのがアラン・J・パクラ監督「デビル(THE DEVIL'S OWN)」です。
「デビル」では北アイルランドのベルファーストでイギリス軍(おそらく特殊空挺部隊SAS)とIRA闘士との銃撃戦のシーンがあります。
∇聖パトリック祭
アイルランド系の祭です。アイルランドにキリスト教カトリックを伝えた聖パトリックを祝う祭りです。
アメリカのシカゴではアイリッシュ系が多いので盛大に行われています。この日
ばかりはアイリッシュ系でなくても、緑色のものを身につけるのが習慣になっています。
映画「逃亡者」では外科医キンブル役のハリソン・フォードが聖パトリック祭のパレードに紛れて危機を脱します。
∇映画「アンジェラの灰」
大恐慌時代の1930年代のアイルランドの街リムリックで極貧のなか逞しく生きる少年の物語。少年はやがてアメリカへ渡る。
∇食事
フィッシュアンドチップスにギネスビール(ハープ)。
(マギーの試合入場シーンではアイリッシュハープを演奏している)
【関連ニュース記事】
≪アイルランド≫
∇和平達成を確信 アイルランド大統領会見
2005年03月09日(水) gooニュース
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2005年02月03日(木) gooニュース
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2005年04月01日(金) gooニュース
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2005年3月31日/HealthDayNews Yahoo!ヘルスケア コラム
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2005年03月29日(火) gooニュース
∇新ローマ法王にラツィンガー枢機卿
2005年04月20日(水) gooニュース
【参考・関連WEBサイト】
∇北アイルランド和平
ニュース漂流 News Drift
∇アイルランド系移民
CHEEKY'S GREEN EIRE
∇日本ケルト協会
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